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日本一の「モグラ駅」散歩 谷川岳最寄りのトンネル内の土合駅【動画ライター】


上越線の土合駅は、谷川岳や上州の山々の登山口への最寄りで、谷川連峰を貫く新清水トンネルの中にある地下駅。地上にある駅舎までは長い階段で結ばれており、山岳の駅らしい立地と構造が特徴だ。登山者の利用はもちろん、鉄道が好きな方も多く訪れる、個性的な山合いの駅なのである。

「国境の長いトンネル」のモデル


土合駅への起点は、上越線の水上駅。高崎駅から所要1時間10分ほどで、ここで長岡方面行きの列車に乗り換え。水上駅を出た列車は群馬県と新潟県の県境、通称「上越国境」に向けて、湯檜曽川(ゆびそがわ)に沿って進んでいく。

長岡方面への各駅停車の起点の水上駅

湯檜曽駅の手前で、下り線は新清水トンネルへ。上越国境には清水トンネルと新清水トンネルの、二本の鉄道トンネルが通っている。清水トンネルは全長9702mの単線トンネルで、1931年(昭和6年)の開通当時は東洋一の長大トンネル。川端康成の小説『雪国』の冒頭に「国境の長いトンネル」として登場している。

新清水トンネルの入口。右は湯檜曽駅の下りホーム

戦後になり上越線の輸送力増強が必要となり、1967年(昭和42年)に新清水トンネルが完成。全長は1万3490mで、単線トンネルとしては現在も日本一の長さだ。以降、清水トンネルは上り線用、新清水トンネルは下り線用に使われている。

地上へと続く462段の階段を登る


水上駅から所要およそ10分、車窓がやや明るくなると、新清水トンネルの中の土合駅へと到着する。駅は清水トンネルが開通した後の、1936年(昭和11年)に開業。

土合駅は新清水トンネルの湯檜曽駅側の入口から3kmほど

後の1967年(昭和42年)に新清水トンネルが完成した際、国鉄初となるトンネル内のホームが新たに設置され、以降は上り列車は地上、下り列車は新清水トンネル内に発着している。

かつて特急列車の通過待ちをした待避線の跡が残る
土樽駅側には待合室が設置されている

ホームから地上の駅舎までは、長さ338mの連絡通路が結ぶ。462段の階段が一直線にのび、70.7mある高低差を10分ほどかけて登る。

土合駅舎まで続く階段。頂上にかすかに明かりが
各種数値を記載した案内板も設置

この通路、もとは新清水トンネルの工事の際、掘削で生じた土砂の搬出や資材の供給に使用した斜坑で、トンネルの完成後に駅の施設に転用されている。
階段には段数が記され、1段目からゆっくりと斜坑を登り始める。左側のスペースには、エスカレーターを設置する予定だったとされ、現在はトンネル内から湧出する水の流路に。新清水トンネルも、湧水に悩まされた難工事だったという。

階段に並行して湧水が流れ付近は涼しい

ホームから駅舎まで登山の準備運動


段の高さは低めで、勾配も比較的ゆるやか。ところどころにベンチが設置され、休みながら登れる。300段目を過ぎると頂上がかなり近くなり、地上の明かりが次第に広がってくる。

休憩用のベンチは数ヶ所に設置

462段目を踏み締めて、斜坑の上部へと到着。はるか下に下りホームのそばの、登り口を見下ろしてひと休み。

462段の表示のところが階段の頂上
登り口がはるか下に見下ろせる

駅舎へは、湯檜曽川を渡るドーム型の通路が続き、先にはトンネルからの風圧を避ける衝立が設置。国道291号を渡ってさらに通路が続き、2ヶ所の階段を合わせてあと24段登る。

湯檜曽川の上を通る通路
衝立の向こうの扉の先にも通路が続く

462段プラス24段の最後の1段、486段目を登り終えて、通路を右へ進むと、ようやく駅舎の中へ到着。改札口を抜けると、右手にかつての待合室と、左手には現在はカフェとして使われている、かつての駅事務室がある。

ガラス張りで明るい雰囲気の土合駅舎
駅事務室は喫茶スペースに。列車待ちに利用できる

トンネル内の駅から別天地の高原へ


現在は各駅停車のみが停まる無人駅で、有人駅だった頃は、下り列車の改札は出発の10分前で打ち切りだった。ちなみに上りホームは駅舎のすぐそばの地上にあり、下り線ホームとの高低差は日本一の、約81m。

駅舎内にある土合駅の構内図
谷川岳登山の注意喚起の看板も

土合駅の駅舎は赤い三角屋根の、山小屋のようなデザインで、外壁はトンネル掘削時に出た、石英閃緑岩で装飾されている。

モダンなデザインの土合駅舎
木の看板で地下駅をPR

駅からは徒歩15分ほどで、谷川岳ロープウェイの土合口駅へアクセスでき、花畑が広がる高原の天神平と谷川岳を臨む天神峠へは、ロープウェイとリフトで手軽に訪れられる。

ニッコウキスゲが咲き乱れる天神平
天神峠には天満宮と弁財天をめぐる散策路が

上越国境の山々への最寄りらしいトンネル内の地下駅を起点に、山岳景勝を楽しむ散策へ、足をのばしてみるのもおすすめだ。

CREDIT
Videographer :カミムラカズマ
Support :のだ ゆうた
Support :モゲ

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