食料捕獲に愛犬の埋葬まで…洞窟オジさんが生涯愛用する「スコップ」

この度はお電話での取材、よろしくお願いします！

よろしくお願いします。

ご両親に、一晩中墓石に縛り付けられていたとか…

雪の降る日にやるんだもんね（笑）

兄貴も結局家が嫌んなっちゃって出ていったんだよね。ひどいなんてもんじゃないよ、鬼だったよね。竹の棒で毎日叩かれてた。体叩くんだよね、バリバリと。

家を出る時に、なぜスコップを手に取られたのでしょう？

小さい時から、川をせき止めて魚採りやってたんだよね。最初は穴掘る気はなかったの。でも魚とるより役立っちゃったね（笑）ほとんど穴掘りだったね。

山柿は、渋いんだよねみんな。だからそれ全部取っちゃって、穴ん中置いておくの。そうすっと甘くなるんだよね。あとカタツムリも焼いて食った。食わないもんないよ。最初は抵抗あったけどね。

スコップはうさぎとりに使えたんだよね。うさぎって穴の中潜ってて、穴が二つあるんだよね。片方の穴を石で抑えて、反対側からスコップで掘ってくわけ。そうするとうさぎつかまんの。

イノシシを捕まえるための穴を掘るって、相当大変だったのではないでしょうか？

大変なんてもんじゃないよね。木の根っこなんかあるでしょう。固いから鉈で切ってさ。掘るのに2〜3時間はかかったよ。

俺を見つけるとイノシシが追ってくるのよ。そんで俺が穴のとこ飛び上がると、イノシシは飛び上がれないから、頭から落とし穴に突っ込んじゃうのよね。

イノシシを見つけた時は、怖くなかったんですか…？捕まえて食べなきゃという思いの方が強かったのでしょうか？

もう食うのに夢中（笑）。おっかないなんて意識がないよね。もうね、噛み付くよ。イノシシ一頭とると、だいたい1ヶ月くらい食っていられる。全部干し肉にしちゃうの。でも何回も襲われたことあるね。その時俺がイノシシの皮とか全部しょってて、パンツもイノシシの皮だったから（笑）足も靴なんかないから、全部イノシシの皮で作ったよ。イノシシって臭いでしょ。だからイノシシが臭いを嗅いで仲間だと思って寄って来るんだよね（笑）面白いよ、くっついてくんの。

この時は、スコップあってよかったな〜と感じた瞬間はいつですか？

やっぱりイノシシの罠の穴掘った時だよね。でっかいスコップ持ってっ
たんだけど、それが半分になっちゃったよね。すり減って小さくなっちゃった。

シロが追いかけて来た時はどんなお気持ちでしたか？

そりゃあ嬉しかった。あの犬は雑種だったけどものすごい利口な犬だった…。犬の話すると涙出てくるね。

食いもんがなくて、あ、これでもう死ぬんだなと思ったの。そしたらシロが、うさぎくわえてきてくれたんだよね。本当に利口な犬で。

熱ものすごく出したのよ俺が。汗はすごく出てくるし、これはもうダメだなぁと思って。三途の川渡る夢見たのよ。渡り始めた時、シロがうんっと耳引っ張るのよ。それで目が覚めたよ。

洞窟のすぐそばにさ、池みたいな、水が貯まるところがあったから、そこで頭冷やしたの。そしたらそれをシロが見て、着るもんの布があったからさ、布を加えてわざわざ川の方まで行って濡らしてきて、その布を頭の上にかけてくれるんだよね。泥だらけになってたけどね。すごい利口だった。俺が自分でそれやってたから、それ見てやってくれたんだろうね。

足尾銅山、何年くらいいたのかなぁ…。よくわかんねぇけど、3、4年くらいはいたのかね。そんでシロが銅山で死んだの。信じられなくて、死んだシロを3.4日くらい抱いて寝てたよ。山へ抱いて行って、蘭の花があったから蘭の花を置いてやったの。

今の施設へきたばかりの頃は、また山へ行ってスコップで穴を掘って隠れ家を作られていたと本で読みましたが…（笑）

やったよ。嫌になっちゃって（笑）イライラしてしょうがねぇから。裏山に掘った穴に行くと、落ち着くのよね。

長年住んだお家みたいなものですものね。当時ここへきた時の最初の仕事は、ご自身の著書のある通り、工事現場のお仕事だったのでしょうか？

そうそう。でもバカにされちゃって。一日2,000円だよ。それでしかも文句も言われるからやめちゃって。

大変だったのですね…。今はどのようなお仕事をされているんですか？

今は施設のあっちこっち壊れたところの修理とか、掃除したり。あとブルーベリー任されて、ブルーベリーやってんのよ今。

加村さんが育てたブルーベリー、圏外からも注文が届いて大人気だとか。詳しく聞きたいと思っていました！

そう？今でもブルーベリー畑でスコップ大事に使ってるよ。このスコップはもう10年くらい使ってる。

長いですね…！最初は施設の理事長が育てられているとのことでしたが、中々うまくいかないので加村さんにお任せされた、と伺いました。ブルーベリーは育てるのが難しいのでしょうか？

はじめは専門の先生に育て方を教わったんだよね。最初は苗木が4、50本だったのよ、それを今の327本までに増やしたの。鹿とか入れないように全部柵しちゃって。だって今すごいよ、ブルーベリー。木がでかくなっちゃって。東京の方から（注文が）くるんだもの。でかくて柔らかいのよね。ジャムとかも作ってる。

少年だった頃から大人になるまで、加村さんはずっと色んな場面でスコップを使われているんですね。

スコップはね〜。結構使うよ。

今でも、裏山の穴に行かれることってありますか？

たま〜にあるよ。イライラしてると、すぐ裏山で穴掘っちゃうのよ。そこへ行って1時間くらい休んでくんの。落ち着くんだよね。本当に。

山から降りたでしょ、そん時はもう他の国きたのかと思ったよね（笑）変わっちゃって。テレビに色はついてるし。はっはっは。まるっきり何もわかんなかった。

まだ加村さんが小さかった頃はテレビは白黒でした？

白黒も黒もなく、街頭テレビっていうのがあったけど…。今の人じゃわかんないだろうね。街頭テレビなんて言っても今の人誰もわかんないと思うよ（笑）

今の携帯電話あるでしょう。川で小ちゃいもん耳につけてなんか喋ってるからさぁ。携帯電話、俺知らないじゃない。頭狂っちゃったのかなこの人と思ったよ。見るもん全部変わっちゃってたからね。地獄にきちゃったのかと思ったよ（笑）

お金なんて使ったことなかったからね。パンなんか買う時、一万円札出すと、お金いっぱいくれんのよね。こりゃすごいなぁと思って。また一万円札出すでしょう。そうしてくと金がどんどん貯まっちゃって。ポケットに入りきらなくなっちゃって。逆に増えちゃってんのよ（笑）