Culture

おさんぽ案内人が行く児島散歩 国産ジーンズのルーツを訪ねて

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瀬戸内海に面し、瀬戸大橋の岡山県側のたもとに位置する児島(こじま)。江戸期はその立地を生かして、塩田(えんでん)開発による塩の製造で栄え、近代以降は紡績工場が集積して、繊維産業が隆盛を極めた。現在は国産ジーンズのメーカーが集まる、ジーンズの町としても知られている。

街にはそれぞれの産業ゆかりの見どころがあり、岡山駅から瀬戸大橋線で約20分の最寄駅、児島から市街を歩いてみた。駅舎のあちこちに、デニムやジーンズの絵柄の装飾が施され、階段を下りて改札口の手前で振り返ると、巨大なジーンズのプリントが圧巻だ。

階段のほか窓や壁面もジーンズの装飾だらけ
ご当地キャラクターのジーパンダがお出迎え

塩田王によって開発された塩の産地


児島駅前西口広場から続く児島民話通りを進むと、かつて塩田があった場所に広がる児島公園へ。江戸期の瀬戸内地方には数多くの塩田があり、現在の倉敷市児島の沿岸にも、広大な塩田が広がっていた。児島の塩田開発には、製塩業で財を成し「塩田王」と呼ばれた、野﨑武左衛門が大きく関わっている。

野﨑武左衛門は、19世紀初めに児島で活躍した実業家で、氏が主導した塩作りの方法が「入浜式塩田法」。潮の干満を利用して海水を塩田に引き入れ、海水を砂ごと釜で煮詰めて塩を得る製法だ。園内にそびえる彫刻《めぐる時間》は、塩田での塩作りをイメージした作品である。

現在は芝生の緑地が広がる児島公園
《めぐる時間》は倉敷まちかどの彫刻展の作品

繊維産業を支えたローカル鉄道


塩田王の名がゆかりの武左衛門通りを経て、かつて下津井(しもつい)電鉄の起点だった、旧児島駅舎へ。下津井電鉄は、国鉄宇野線の茶屋町から児島を経て、下津井までの21㎞を結んだ鉄道。全通は大正3年で、沿線で繊維産業が発達したことから輸送量が増大。最盛期の昭和30年代には、年間300万人近い利用客があったという。

旧児島駅舎。二度移転して現在の場所へ
昭和63年の移転時に行き止まり式の終着駅に

以降は道路網が整備され利用客数は急減し、1972年(昭和47年)に茶屋町〜児島、1991年(平成3年)には児島〜下津井も廃止に。アーチ型の屋根を有するこの駅舎は、1988年(昭和63年)の移転時に整備され、駅舎内には踏切やタブレット閉塞機、腕木式信号機などの機器や施設も保存されている。

ホームにはレトロな文字の駅名標が残る
廃線跡を整備した全長6.3㎞の遊歩道「風の道」

職人の技術を継承して生まれた国産ジーンズ


児島ジーンズストリートは、かつて児島の中心街だった味野(あじの)商店街に、地元のメーカーのショップが集まって形成されたストリート。職人の伝統的な技術を継承し、生地や縫製、デザインにこだわる「ジャパンデニム」の国産ジーンズを扱う店舗が、30軒ほど軒を連ねている。

ジーンズストリートの入口は立体看板が目印
ノースエリアとサウスエリアの二つのゾーンからなる

瀬戸内海に近い児島は塩田が発展した一方、土壌に塩分を含む土地柄、稲作には不向きで、塩分に強い綿花の栽培が盛んだった。そのため江戸後期には木綿織業で栄え、1882年(明治15年)には民営初の紡績所の下村紡績所が創設されるなど、古くから繊維産業や縫製業が定着していた。

明治期は足袋、大正期からは学生服など、時流に合わせて製造品が変遷し、戦後になると流通していた米軍の古着から、ジーンズに着目。BIG JOHNの前身であるマルオ被服が、1965年(昭和40年)に日本初の国産ジーンズを製造販売したのを機に、児島はジーンズの発祥の街としてその名が知られていくこととなる。

BIG JOHN児島本店。最新のアイテムが揃う
併設の工房ではオリジナルジーンズもオーダー可能

ジーンズストリートに構える塩田王の屋敷


沿道に歴史的建造物や、擬洋風建築の商店を活用した店舗が続く中を進んでいくと、旧野﨑家住宅の広大な敷地が広がる。野﨑武左衛門が建築した大庄屋屋敷で、約3000坪の敷地には主屋と表書院をはじめ、6棟の土蔵群、枯山水庭園、茶室などが配されている。

BLUXEは築100年以上の洋館を改装したファクトリーストア
写真館だった洋館を店舗にしたDANIA JAPAN
桃太郎ジーンズの店舗は古民家と昭和初期築の郵便局舎

野﨑武左衛門は足袋商で得た資本をもとに、児島の沿岸に塩田を開発し、大塩田地主に成長。岡山藩の命による新田の干拓事業も成功させ、これらの功績により大庄屋に取り立てられた。桁行24mに及ぶ長屋門、九つの座敷を備えた主屋、貴賓の応接に使用した表書院など、豪壮な邸宅に氏の栄華が感じられる。

旧野﨑家住宅には塩作りの体験施設も併設
堅牢な石垣の上に建つ長屋門は壮麗な姿

製塩業と繊維産業、国産ジーンズの聖地。児島の街を歩いてみると、各々の産業への理解が深まるとともに、それぞれどこか繋がりがあることも、実感できるはずだ。

より詳しい動画はこちらから視聴できます。

CREDIT
Videograp :カミムラカズマ
Support :モゲ

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