〈プロ解説〉日本酒の飲み方や夏酒の楽しみ方を紹介 おすすめ商品にも注目

入江 亮子(日本料理家・日本酒利き酒師)
最終更新日: 2024-10-07

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料理と相性がよく、まろやかで豊かな香りが特徴の日本酒。刺身、天ぷらなどの和食だけでなく、イタリアンやフレンチ、エスニックとペアリングするお店もどんどん出てきており、海外でも人気が高まっています。

種類が豊富にある日本酒の中で、これからの暑い季節にぴったりな「夏酒」の飲み方について、日本酒利き酒師として、日本酒の魅力を発信し続けている筆者が解説します。ぜひ参考にしてください。

※入江さんには2023年5月に執筆と筆者おすすめ商品の選定をしていただきました。
日本料理家・日本酒利き酒師
入江 亮子
日本料理、國酒といった我が国の伝統食文化伝承がライフワークです。日本酒利き酒師・日本酒学講師・酒匠として、日本酒と料理のペアリングを数多く提案しています。カルチャースクールなどでの日本酒講座も多数。2019年 グルマン世界料理本大賞MATCHING FOOD&DRINK部門で「八寸・強肴に困らない本」がグランプリ受賞。

まずはプロおすすめ、夏にぴったりな日本酒5選

入江さんおすすめ①
  • 山梨銘醸(株)
  • 純米吟醸生酒 夏純吟 七賢 720ml

  • 税込み1,650円(楽天市場)
  • 生酒らしい清涼感を楽しめる1本

入江 亮子

おすすめポイント

1750年創業の歴史ある蔵。日本名水百選に選ばれた白州の清らかな水と、山田錦を親に持つ酒米、夢山水で仕込んだ夏向きの純米吟醸酒です。

生酒ならではのフレッシュ感もあり、バランスが見事で、後味のキレが美しいです。きりりと冷やして生酒らしい清涼感を味わってください。

フルーツトマトを使ったカプレーゼなどに好相性。夏酒ではありませんが、シャンパンと同じ瓶内二次発酵で造られた七賢のスパークリング酒も夏にぴったりです。
特定名称:純米吟醸酒
アルコール度数:15度
精米歩合:57%
原料米:夢山水
産地:山梨県
入江さんおすすめ②
  • 株式会社林本店
  • 百十郎 純米吟醸 青波 BLUE Wave 720ml

  • 税込み1,705円(楽天市場)
  • 特許取得の製造方法で、米本来の旨みを楽しむ

入江 亮子

おすすめポイント

ブランド名「百十郎」は、明治から昭和にかけて活躍した地元各務原市出身の歌舞伎役者 市川百十郎が由来で、隈取のラベルが特徴的です。

こちらの蔵は製造方法にも特徴があります。酒造りでは、一般的に速醸酛(そくじょうもと)と呼ばれる、酒母に乳酸を加える製造方法ですが、糖化とアルコール発酵の並行複発酵に加え、乳酸発酵も同時に行うという「トリプル発酵製法」を編み出し、特許を取得しています。

オリジナル製法により、米本来の旨味がさらに乗った仕上がりになっています。さらりとした飲み心地でありながらも、米の旨味の余韻も残す、このブランドならではの味わいがユニークです。

冷えた状態から徐々に温度が上がるにつれて旨味が現れます。味の変化を楽しんでみてください。
特定名称:純米吟醸酒
アルコール度数:15度
精米歩合:60%
原料米:五百万石
産地:‎岐阜県
入江さんおすすめ③
  • (株)武勇
  • 夏酒 特別純米 720ml

  • 料理とも合わせやすい1本

入江 亮子

おすすめポイント

結城紬(ゆうきつむぎ)で知られる茨城県結城市のお酒で、割水をしていない「原酒」です。原酒のアルコール度数は通常18〜20度ですが、飲みやすい15度で止めた原酒で、米の旨味もしっかり感じます。

また、酛(もと)すりと呼ばれる蒸米(むしまい)と米麹、水を半切り桶ですりつぶす手間のかかる作業を行い、速醸酛(そくじょうもと)の倍ほども時間がかかる「生もと仕込み」で作られています。

比較的味わいはしっかりとしていますが、軟水仕込みによりテクスチャーは穏やか。いろいろな料理とも合いやすい万能タイプです。原料米は地元茨城産のひたち錦。
特定名称:特別純米酒
アルコール度数:15度(原酒)
精米歩合:65%
原料米:ひたち錦
産地:茨城県結城市
入江さんおすすめ④
熱燗専用 熟成辛口 猫場山(熱燗熟辛猫)
  • 苗場酒造
  • 熱燗専用 熟成辛口 猫場山(熱燗熟辛猫)

  • 税込み1,100円(楽天市場)
  • 夏バテ気味の体にも優しく、飲みやすいお酒

入江 亮子

おすすめポイント

燗酒(かんざけ)は夏酒のジャンルには含まれませんが、夏バテ気味の体にも優しく、飲みやすいお酒です。

コリアンダーやクミンなどを少し混ぜてみると、暑い日にカレーを食べるような夏らしい体験ができます。

熟成されたこちらのお酒は、テクスチャーが柔らかでそのままでもスイスイ飲みやすいですが、さらにおいしく飲む方法としては、お鍋で沸かしたお湯の中にお銚子を入れ、湯燗してください。

なお、お湯は沸騰する温度よりも「70〜80度」がベスト。時間をかけてゆっくりつけてあげると、出来上がりが柔らかです。

出来上がりの温度はお好みですが、私は50度くらいでつけて、おちょこに入れたときに45度くらいで飲むのがおすすめです。
特定名称:ー
アルコール度数:15度
精米歩合:ー
原料米:国産米
産地:新潟県
入江さんおすすめ④
  • 八海醸造
  • 八海山 麹だけでつくったあまさけ 825g

  • 税込み853円(楽天市場)
入江 亮子

おすすめポイント

お酒を飲めるけどあえて飲まないようにしているソバキュリアンや、アルコールが苦手な方、または夏バテしやすい方には、麹で作られたノンアルコールの甘酒をおすすめします。

米麹の甘さを活かした甘酒には、アミノ酸が豊富で疲労回復にも適しています。「飲む点滴」ともいわれる所以です。

こちらの甘酒はデパートやスーパー、通販でも買えて、初めての方にも飲みやすく、優しい味わいです。

ほかにも玄米や乳酸発酵の甘酒など、種類豊富なのも魅力的です。
特定名称:ー
アルコール度数:ノンアルコール
精米歩合:ー
原料米:国産米
産地:新潟県

夏酒とは、暑い季節にさらっと飲みやすい日本酒

夏酒のイメージ

Photo by iStock

日本酒は季節によって旬のお酒があり、冬から春にかけては「しぼりたて新酒」、春には「花見酒」、夏には「夏酒」、秋には「ひやおろし」があります。夏酒の時期は6〜8月です。

入江 亮子

入江 亮子さんの解説

日本酒の魅力は、高度な醸造技術や飲用温度の幅広さに加え、お料理との合わせやすさなど実にたくさん。また、季節ごとのお酒があるのも魅力です。

中でもサマーシーズンといえば「夏酒」です。冷蔵輸送や店舗での冷蔵保管が可能になった2007年頃から、「夏酒」と呼ばれる夏向けの日本酒が出回るようになりました。

夏酒について明確な定義はないものの、以下の特徴があります。

【夏酒の特徴】
① 低アルコール
② 酸が高め
③ ボトルは透明なものやブルー系が多く、ラベルは団扇や金魚、ひまわりなどのイラストが多い
④ フレッシュ感のある生貯蔵酒や生酒が多い
⑤ 冷やして飲むのに向いている


いずれも暑い季節にさらっと飲みやすい工夫といえます。名称的には「夏吟」「夏生」「夏吟醸」などと銘打っているものが多いです。

また、夏酒とは銘打っていないものの、「スパークリング酒」や「どぶろく」は、発泡感がのど越しよく、「低アルコール酒」はアルコール度が低い分、飲みやすいですし、最近注目の「クラフトサケ」は、果汁やハーブを加えたものも多く、さわやかな飲み口のものが多いです。

さらに通な方は、夏こそ燗酒! という方も多いですね。冷房で冷えた体を優しく温める「燗酒」も夏にぴったりの日本酒と言えるでしょう。

お酒が得意でない方には、「甘酒」をおすすめします。夏の季語にもなっているくらい、昔から夏バテ防止によく飲まれてきました。

日本酒をどこで買う? どこで飲む?

日本酒をお店で飲むイメージ

Photo by iStock

日本酒はコンビニやスーパー、酒屋さんだけでなく、ECサイトや酒蔵が運営するオンラインショップなどでも購入できます。

入江 亮子

入江 亮子さんの解説

初めての日本酒を購入する場合、試飲販売などの機会がない限り、ほとんど勘を頼りに選ぶしかありません。そのため、まずは日本酒専門のバーや、日本酒が数多く置かれている居酒屋などに行き、3種くらいを少量ずつ試せる「飲み比べセット」などを利用して好みを知るのがよいと思います。

日本酒の香味は実にさまざまで、「大吟醸」とラベルにあるものでもすべて香りが高いわけではありません。

酒税法では、「大吟醸」と呼べる主な条件は玄米の表層部を削った残りのお米の割合(精米歩合)が50%以下であることです。大吟醸の中には精米歩合が0%に近いものや、50%ぎりぎりのものもあります。
精米する前のお米は「玄米」と呼ばれ、100gの玄米が精米されて40gになると、精米歩合は40%となります。
清酒の特定名称に関する表示基準(国税庁)

特定名称

香味等の要件

精米歩合

使用原料

吟醸酒(ぎんじょうしゅ)

吟醸造り、固有の香味、色沢が良好

60%以下

米、米こうじ、 醸造アルコール

大吟醸酒(だいぎんじょうしゅ)

吟醸造り、固有の香味、色沢がとくに良好

50%以下

米、米こうじ、 醸造アルコール

純米酒(じゅんまいしゅ)

香味、色沢が良好

米、米こうじ

純米吟醸酒(じゅんまいぎんじょうしゅ)

吟醸造り、固有の香味、色沢が良好

60%以下

米、米こうじ

純米大吟醸酒(じゅんまいだいぎんじょうしゅ)

吟醸造り、固有の香味、色沢がとくに良好

50%以下

米、米こうじ

特別純米酒(とくべつじゅんまいしゅ)

香味、色沢がとくに良好

60%以下、または特別な製造方法

米、米こうじ

本醸造酒(ほんじょうぞうしゅ)

香味、色沢が良好

70%以下

米、米こうじ、 醸造アルコール

特別本醸造酒(とくべつほんじょうぞうしゅ)

香味、色沢がとくに良好

60%以下、または特別な製造方法

米、米こうじ、 醸造アルコール

参考:国税庁ホームページ

入江 亮子

入江 亮子さんの解説

自分好みの日本酒探しで失敗しないためには、お酒が飲めるお店で実際に飲んでみることです。酒類の豊富なお店は、アテ(酒の肴)もよいものをそろえていることが多いので、一緒に注文してペアリングを楽しんでみてください。

「外食が苦手」な方は、日本酒に強い酒屋さんで相談してみるのがおすすめ。中には「角打ち」といって、立ち飲みスペースを店内に設けているところもあり、お手頃な料金でいろいろなお酒を試せます。

また、デパートによってはAI搭載の端末を設置しており、利用者が自分にぴったりの日本酒を選べるサービスを提供しているところもあります。

買ってから「これは違った…」と悲しい思いをしないように、まずはぜひ専門店でお試し飲みや相談をしてくださいね。

夏酒の保存方法とは?

日本酒のイメージ
入江 亮子

入江 亮子さんの解説

夏酒は必ず冷蔵庫で保管してください。開けたらなるべく早く飲み切ってしまいましょう。

お酒の大敵は「光」「温度」、さらに「揺れ」です。ところが夏酒は、茶色い瓶に比べて光を通しやすいブルーボトルや透明ボトルを採用しているケースが多くあります。

一般的な日本酒は、品質や味を安定させるため「火入れ」と呼ばれる加熱処理を出荷までに2回施しますが、夏酒に多い「生酒」は火入れが行われず、「生貯蔵酒」でも1回で、いずれもフレッシュさを生かすために火入れを行っていません。

そのため、購入したら必ず冷蔵庫に入れて保管するようにしましょう。

できれば、冷蔵庫内でも揺れにくく温度変化の少ない場所だと、保存場所として理想的です。開栓後はフレッシュさが失われないうちに飲み切るようにしましょう。

なお、2回火入れをしてある常温で売っている日本酒は、開封までは常温の冷暗所でおいても大丈夫ですが、口を開けたら夏酒同様、できるだけ冷蔵庫に保管し、早めに飲んでください。
【夏酒を保存する際の注意点】
保存場所について|冷蔵庫で保存
保存容器|空気に触れると変化しやすいため、1升瓶で残ってしまったものは他の小さめな瓶に移し替え、しっかり栓をして冷蔵庫へ入れてなるべく早く飲んでください
開封後の保存について|開封後は早めに飲み切るようにする

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