「Virtua Fighter esports」の迫力あるバトル画面

なぜ無料配信? 注目点は? 「バーチャファイター」最新作チーフプロデューサーに聞いた

スサキリョウタ
公開: 2021-05-29

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かつて一世を風靡した格闘ゲーム「バーチャファイターシリーズ」の最新作「Virtua Fighter esports」が6月1日からPS4で無料配信が始まります。「セガからのプレゼントです」。そう語るのが、チーフプロデューサーを務めた青木盛治さんです。新作にかける思いやバーチャ愛を聞きました。
2021年5月29日付、GAMEクロスに掲載された記事を転載しています

無料配信はセガからの設立60周年記念プレゼント

バーチャファイターの展望を説明する青木盛治さん

バーチャファイターの展望を説明する青木盛治さん

――2010年に「バーチャファイター5 ファイナルショーダウン」がリリースされて以降、新作が出ない状況が続いていました。今回、新作が開発されることになった経緯を教えて下さい。

バーチャファイターはセガにとっても非常に大切なタイトルで、実は定期的に新作の話は持ち上がっていたんです。でも、なかなか実現には至っていませんでした。そんな中、2020年はセガ設立60周年のアニバーサリーイヤーであり、記念プロジェクトとしての後押しがあって開発が始まりました。

――本作は無料で配信されるということですが、どういう意図があるのでしょうか?

本作は、設立60周年を記念して「セガから皆さんへのプレゼント」というコンセプトでプロジェクトがスタートしています。幅広い世代のユーザーに楽しんでいただくために、配信から2カ月間(8月2日まで)は「PS Plus」で無料配信しています。

ゲーム本編の無料配信と同時に、キャラクターコスチュームや初代バーチャファイターのキャラクターモデル、歴代シリーズのBGM、観戦時のスタンプなどをセットにしたDLCを有料配信する予定ですが、ゲーム本編だけなら無料で遊んでいただけます。

「Virtua Fighter esports」のキャラクターセレクト画面

「Virtua Fighter esports」のキャラクターセレクト画面

――青木さんはシリーズのファンということですが、社内にもファンは多いのでしょうか?

社内にもファンはたくさんいますね。私は「バーチャファイター4」でデザイナーとして制作に携わりました。皆、バーチャの新作を「遊びたい」という気持ちが強く、開発中は他部署から見にくる人もいましたね。本作の開発チームは前作のチームが基盤となっているので、本当にバーチャに思い入れの強いメンバーが揃っています。

エフェクト演出で親しみ安く

「Virtua Fighter esports」はグラフィックの良さも魅力

「Virtua Fighter esports」はグラフィックの良さも魅力

――「Virtua Fighter esports」のゲーム性は前作までを踏襲したものになるのでしょうか?

前作の「バーチャファイター5 ファイナルショーダウン」をベースにして、グラフィックを刷新しています。バトルシステムはもちろんのこと、キャラクターの種類や技の性能も完全再現しています。

というのも、「5」は非常に完成度が高い作品で、少しでもいじってしまうと全体のバランスが崩れてしまうのです。ゲームのリリースに際して、当時のトッププレイヤーたちを20名ほど招いて本作をプレイしていただきましたが、皆さんから「当時の感覚のままプレイできる」というフィードバックを頂いています。

――新規プレイヤーには、どんなところに注目してほしいですか?

ゲームのコア部分は変えていませんが、グラフィックを現代向けに刷新したり、エフェクト演出を強化することで前作までと比べてより親しみやすく、また観戦する側にとっても見やすいゲームに仕上がっていると思います。

今作はメニュー画面にランキング上位プレイヤーのリプレイが表示されるようになっているので、バーチャファイターを初めて遊ぶ方には、まずは上手い人のプレイを観戦するところから始めるとよいと思います。

上級者のプレイを見ながら「このキャラかっこいいな」とか「こんな技が出せるんだ」と興味を持ってもらって、そこからゲームにハマってもらえればと思っています。

eスポーツを意識、オンライン対戦機能を充実

「Virtua Fighter esports」の「ランクマッチ」

「Virtua Fighter esports」の「ランクマッチ」

――「eスポーツ」がタイトルにも含まれていますが、セガとしてはeスポーツのどんな側面に魅力を感じているのでしょうか?

セガはここ3年ほど「ぷよぷよ eスポーツ」を運営してきたのですが、我々はeスポーツを取り巻くコミュニティーの形成に非常に魅力を感じています。競技性が高いものなので、もちろん勝ち負けが大事になってくる分野ではありますが、同時に、eスポーツはユーザーとメーカーがゲームの魅力を共有できる場所だと感じています。

――トレーニングモードの画面に、フレームデータを表示できるようにする機能などは、eスポーツを意識して導入されたのでしょうか?

長く遊んでくれるプレイヤーほどトレーニングモードで過ごす時間は多くなると思うので、かゆいところに手が届くような機能を多く入れるようにしています。

加えて、今作はeスポーツを意識し、ランクマッチ、トーナメント戦、リーグ戦などオンライン対戦モードを充実させています。自分で大会を開催することもできますし、ルーム内の対戦をリアルタイムで観戦できる機能もあり、観戦者はスタンプを使ってコミュニケーションすることもできます。

「Virtua Fighter esports」の「トレーニング」モード

「Virtua Fighter esports」の「トレーニング」モード

――オンラインでの大会などを考えると、ネットコードが気になります。本作はどのような方式を採用していますか?

最近の格闘ゲームはネットコードにロールバック方式を採用することもありますが、今作ではロールバック以外の方法で遅延を吸収する仕組みを作っています。ヨーロッパやアメリカなど海外とのテストプレイも行っていて、遅延することなくプレイできています。

――今後、セガ主催の大会なども開催されていくのでしょうか?

8月にeスポーツ大会として「VIRTUA FIGHTER esports SEASON_0」が開幕します。7月にはそのプレ大会もオンラインで開催します。すでにエントリーが始まっているので、興味がある方は是非参加してください。

ほかにも、バーチャファイターコミュニティーで「鉄人」と呼ばれているレジェンドプレイヤーたちを巻き込んで大会イベントを開催する予定もあります。積極的に大会を開催し続けて、ゆくゆくは「ぷよぷよeスポーツ」のようにJeSU公認タイトルになれればいいなと思っています。

そして、プロプレイヤー化が実現すると嬉しいですね。特に若い世代からプロが出てきてくれたら、バーチャファイターがさらに盛り上がると思います。

リモートワークでの開発に苦労した日々

バーチャファイターの魅力を語る青木盛治さん

バーチャファイターの魅力を語る青木盛治さん

――今作のプロデューサーに任命された経緯は?

僕はもともとアーケード向けのゲームを主に担当していて、その中で「ぷよぷよeスポーツ アーケード」にも携わっていたんです。また、家庭用ゲーム開発の経験もあったし、以前「バーチャファイター4」の開発に携わっていたこともあって、今作の開発に手を挙げてみたことがきっかけとなりました。

――プロデューサーとして携わった感想はいかがでしたか?

大好きなシリーズの最新作を担当させていただけたことを光栄に思いつつ、その反面で困難も多かったですね(笑)。かなりのプレッシャーもありました。

今作はセガの設立60周年記念プロジェクトとして立ち上がっているので、60周年期間である2020年6月3日から2021年6月2日までの間にリリースすることが最大のミッションでした。本作の配信日が6月1日になっていることからも、いかに開発スケジュールが大変だったかが分かっていただけるかと思います(笑)。

――ギリギリで完成した、というところなんでしょうか。

そうですね。今作は在宅ワークでの開発だったのですが、リモートでの作業に慣れる大変で、特にスタッフ間の連携を取るのに苦労しましたね。今までは皆が一カ所にいるのが当たり前だったのが、今作のチームには今でも直接会ったことのないスタッフが大勢いるくらいです。

「Virtua Fighter esports」には様々なステージが用意されている

「Virtua Fighter esports」には様々なステージが用意されている

――最後に、今後も「バーチャファイター」シリーズの新作を作っていきたいですか?

ファンの皆さんが期待しているのは恐らく完全新作、「バーチャファイター6」だと思います。現状「6」の構想はありません。まずは今作をしっかりと盛り上げていきたいと思っています。

歴史のあるタイトルの年齢層はどうしても高齢化しやすいので、今作がどれだけ若いプレイヤーにも遊んでもらえるのかが重要だと思っています。そのためにも、まずはひとりでも多くの人に「バーチャファイター」の存在を知っていただきたいです。

『Virtua Fighter esports』オープニングムービー

(C)SEGA

【この記事を書いた人】
スサキリョウタ(ライター)

格闘ゲーム・カードゲームをはじめ、どんなゲームもプレイする雑食ゲーマー。eスポーツライターとして、2018年から格闘ゲームシーンを中心に取材を続けている。中でも最も感銘を受けた大会は「EVO」。日英バイリンガル。「国内外のシーンから、eスポーツのアツさを伝えていきたいです!」

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