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〈プロ解説〉相続税申告書作成ソフト5選 メリット、選び方、注意点まで

小林 義崇、相続会議
公開: 2023-09-06

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自分で相続税の申告をするときに頼りになるのが、申告書作成ソフトです。有料のものから無料のものまでさまざまなソフトがありますが、それぞれの特徴から選び方のポイント、注意点まで、元国税専門官のライターが解説します。

フリーライター・元国税専門官
小林 義崇
1981年、福岡県生まれ。2004年に東京国税局の国税専門官として採用され、相続税の調査や所得税の確定申告対応、不服審査業務等に従事。17年7月、フリーライターに転身。書籍や雑誌、ウェブメディアを中心とする精力的な執筆活動に加え、自身のYouTubeチャンネルでお金に関する発信を行っている。著書に「元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者」「すみません、金利ってなんですか?」などがある。
この記事は、「相続会議」から提供を受けています。2023年9月1日時点の情報に基づいています

1. 相続税申告書の作成ソフトとは

相続税の申告書を作るときは、作成ソフトを使うと便利です。国税庁ホームページで公開している「確定申告書等作成コーナー」は所得税と消費税、贈与税に対応していますが、相続税は未対応です。相続税の申告をするときは、民間企業が開発した作成ソフトを使う必要があります。

各社が開発した相続税申告書の作成ソフトは、それぞれ機能や料金体系が異なるため、ご自身のニーズに合うものを選ぶようにしましょう。一般向けのものか税理士事務所向けのものか無料なのか有料なのかといった点を比較検討してください。

2. 個人向け相続税申告書ソフト5選

相続税申告書の作成ソフトには、個人向けのものと会計事務所向けのものがあります。今回は個人が使いやすいソフトとして以下の5つをピックアップしました。

筆者が選ぶ個人向け相続税申告書の作成ソフト5選

機能・サービス

相続税の達人

2in1相続管理システム【パーソナル版】

AI相続

ひとりで申告できるもん

TASKI
相続税申告システム

相続税申告書

遺産分割協議書

×

×

×

財産評価

×(別ソフトに「財産評価の達人」あり)

×

○(有料プランのみ)

有料オプション

×

税理士のサポート

×

パートナー事務所の紹介が可能

有料オプション

有料オプション

価格(税込

年間21,900円〜(90日間の無料体験可)

年間5,390円(期間限定で無料体験キャンペーンあり)

無料

無料

77,000円(申告書出力時に費用発生)

2-1. 相続税の達人

NTTデータが開発した申告書作成ソフト「達人シリーズ」のなかに、「相続税の達人」があります。こちらは税理士事務所で多く導入されていますが、個人でも利用可能です。90日間は無料で体験版を利用できますが、体験版で出力をした場合「SAMPLE」という文字が印字されます。利用料金はグレードなどに応じて21,900円〜42,700円です。

相続税の達人を使えば、相続税の申告書作成はもちろん、申告をやりなおす際の修正申告書や更正の請求(相続税を払いすぎてしまった場合に戻してもらう手続き)などの書面も作成できます。また、関連ソフトの財産評価の達人を購入すれば、不動産・株式などの評価計算も可能です。

2-2. 2in1 相続管理システム

税理士・司法書士などの専門家向けの相続業務ソフトを開発してきた株式会社ビービーシーが、個人向けに開発したのが「2in1相続管理システム【パーソナル版】」です。このソフトは相続人や財産の情報を入力すると、遺産分割協議書(案)が自動的に作成され、さらに相続税申告書まで作られます。

このソフトではシミュレーションをした結果をPDFやExcelに出力できるので、家族で遺産分割の話し合いをするときに役立つでしょう。期間限定の無料お試しキャンペーンがあり、その後は5,390円(税込)で1年間使用可能な年間ライセンスが付与されます。

2-3. AI相続

みなと相続コンシェルが運営する相続税申告ソフト「AI相続」は、遺産分割協議書をはじめ、相続税申告書作成・印刷・印刷まで無料で完結できます。対応ソフトが少ないMacでも利用でき、画面にしたがって入力すると各種書面を作成できます。

なお、申告書作成にあたって専門家のサポートが必要な場合は、有料オプションで依頼できます。まずは無料で相続税のシミュレーションや申告書作成にトライし、必要に応じて有料オプションを検討すると良いでしょう。

2-4. ひとりで申告できるもん

ひとりで申告できるもん」は岡野相続税理士法人が監修しているソフトで、ホームページ上で利用登録をするだけで利用できます。画面の案内に従って入力すると、税務署に提出する申告書を印刷できます。

このソフトはパソコンにインストールする必要がなく、作成途中のデータをホームページ上に保存しておけます。相続税の申告書作成から印刷まで無料で利用できますが、専門家への相談や財産評価などは有料オプションとなっています。

2-5. TASKI相続税申告システム

TASKI株式会社の「TASKI相続税申告システム」は、相続税申告書のデータ作成まで無料で行えるソフトで、相続専門税理士が監修しています。ガイダンスに沿ってデータを入力すると、申告書の作成ができます。

無料で使用開始して相続税申告の要否まで判定できますが、相続税申告書を出力する際は、財産規模にかかわらず77,000円(税込)の定額料金となっています。手続きなどで迷ったときは、相続税専門税理士による申告書チェックや無料相談を受けられます。

3. 相続税申告書作成ソフトを使うメリット

相続税申告書の作成ソフトを使うことのメリットは複数あります。主に次のようなメリットを期待できます。

3-1. 税理士費用が削減できる

作成ソフトを使う第一のメリットは、相続税申告にともなうコストを削減できる点です。自分でできる部分は作成ソフトで済ませ、サポートが必要な部分だけを税理士に依頼することで、税理士費用を削減できます。相続税申告を税理士に依頼したときの報酬の相場は、遺産の規模の0.5%~1%です。

3-2. 正確性と効率性を高められる

相続税のルールは複雑で、自分で計算しようとすると計算誤りが起きる可能性が高いです。そこであらかじめ計算式が組み込まれた申告ソフトを使えば、正確かつ効率的に申告書を作成できます。

3-3. 気軽にシミュレーションができる

相続税は、遺産分割の結果や特例の有無によって税額が変わります。そのため、遺産分割を終える前にいくつかのパターンを想定して相続税のシミュレーションを行うことが大切です。作成ソフトを使えば気軽にシミュレーションができるので、相続税を踏まえた最適な遺産分割を検討できるでしょう。

3-4. 相続人同士での共有が容易

遺産分割協議を行う際は、相続人同士で情報共有を行うことになります。作成ソフトを使えば、遺産分割の内容や相続税などの情報が見やすい形でアウトプットできるので、話し合いのときに役立ちます。

4. 相続税申告書作成ソフト選び方のポイント

作成ソフトにはさまざまな特徴があるため、ご自身のニーズに合ったものを選別しなくてはいけません。なかでも以下のポイントに注目しましょう。

4-1. 無料か有料か

作成ソフトの多くは、無料サービスと有料サービスに分かれています。たとえば相続税申告書の作成までは無料でできても、提出できる形で出力するには料金がかかるソフトもあります。まずは無料のものを使って、機能が不足すると感じた場合には有料ソフトに切り替える、もしくは税理士によるサポートを受けると良いでしょう。

4-2. 入力画面がシンプルでわかりやすいか

ソフトはそれぞれインターフェースが異なり、使い勝手が異なります。できる限り、相続税について詳しくない人でも無理なく入力できるソフトを選びましょう。いきなり有料版を使うのではなく、まずは無料体験版で操作方法などを確認して、使いやすいソフトを見極めてください。困ったときに質問できるサポートが充実しているかもチェックが必要です。

4-3. 自分でわからなくなったときに税理士のサポートを受けられるか

相続税の申告には細かいルールが多く、相続する財産や利用する特例によっては、特殊な計算を行わなくてはいけません。そうした計算を行うべき場面を自分だけで判断するのは難しいため、税理士のサポートを受ける必要があります。申告ソフトによっては相続税に強い税理士などと提携しているので、そうしたサポートがあると安心です。

5. 相続税申告書作成ソフトを使う上での注意点

相続税申告書の作成ソフトは便利ですが、ソフトを使うだけで申告がすべて完結できるとは限りません。

5-1. 相続財産は自ら把握する必要がある

相続税ソフトはあくまでも相続税の計算機能をもつものですから、その前提となる相続人や相続財産、債務などの情報は相続人自らで把握しなくてはなりません。たとえば、相続人の情報を入力するには、戸籍から親子関係や年齢などを調べる必要がありますし、土地家屋などの固定資産については、相続開始時点の価格(評価額)を算定する必要があります。

とくに土地の評価額計算については、土地の形状などによっては調整計算が必要となり、簡単に算出できないことも考えられます。誤った情報を入力すると、作成される申告書が間違えたものになってしまいます。

5-2. 控除や特例が適用できるのか、また適用したほうがよいのかソフトは判断できない

相続税には、夫婦間の相続は少なくとも1億6000万円まで無税になる「配偶者の税額軽減(配偶者控除)」や、亡くなった人の自宅が最大8割引の評価額となる「小規模宅地等の特例」をはじめ、複数の控除や特例がありますが、一定の条件を満たさないと使えません。そのため、そもそも条件を満たしているかは相続人自身が判断する必要があります。

さらに、節税の観点から控除や特例の使い方を検証することも大事です。たとえば配偶者が多くの財産を相続すれば配偶者控除で節税できますが、その配偶者も亡くなって生じる2回目の相続(二次相続)を考えると、あえて配偶者の相続財産を減らすことが相続税対策になるケースがあります。そのような細かい判断は作成ソフトだけでは難しく、税理士のアドバイスが必要です。

5-3. 最新法令に対応しているか

税制は頻繁に改正されているため、最新の法令に対応したソフトを使用する必要があります。昨今は相続税のルール改正が相次いでおり、最新のルールに則したソフトを使わないと申告誤りが起きてしまいます。

6. まとめ

相続税申告書の作成ソフトはとても便利ですが、正しく利用するにはある程度の知識がもどめられます。基本的な相続税のしくみを知った上で、どのソフトを利用するか検討し、さらに不安な方は税理士に相談するとよいでしょう。

また、税金以外にも相続に関する悩みがあれば、やはり専門家のサポートを受けることをおすすめします。遺産分割協議がうまくいかないときは弁護士、相続登記については司法書士に相談してください。相続登記は2024年から義務化されるので、忘れずに手続きをしておきましょう。

この記事は、「相続会議」から提供を受けています。2023年9月1日時点の情報に基づいています

この記事を書いた人

フリーライター・元国税専門官
小林 義崇
1981年、福岡県生まれ。2004年に東京国税局の国税専門官として採用され、相続税の調査や所得税の確定申告対応、不服審査業務等に従事。17年7月、フリーライターに転身。書籍や雑誌、ウェブメディアを中心とする精力的な執筆活動に加え、自身のYouTubeチャンネルでお金に関する発信を行っている。著書に「元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者」「すみません、金利ってなんですか?」などがある。

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