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〈プロ解説〉相続税計算シミュレーションツール5選 活用方法や注意点

小林 義崇、相続会議
公開: 2024-01-16

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相続が発生したら、相続税がいくらかかるのか気になる人も多いでしょう。ただし、その計算方法は非常に複雑で、面倒です。そんなときに参考になるのが、インターネットで無料で利用できる相続税計算シミュレーションツールです。それぞれの特徴や、注意点について元国税専門官のライターが解説します。

フリーライター・元国税専門官
小林 義崇
1981年、福岡県生まれ。2004年に東京国税局の国税専門官として採用され、相続税の調査や所得税の確定申告対応、不服審査業務等に従事。17年7月、フリーライターに転身。書籍や雑誌、ウェブメディアを中心とする精力的な執筆活動に加え、自身のYouTubeチャンネルでお金に関する発信を行っている。著書に「元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者」「すみません、金利ってなんですか?」などがある。
この記事は、「相続会議」から提供を受けています。2024年1月1日時点の情報に基づいています

税理士法人チェスター

SBI新生銀行

相続会議

三井住友信託銀行

国税庁

相続税総額

相続人別の税額

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二次相続

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税理士報酬

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死亡保険金への対応

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×

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配偶者控除への対応

小規模宅地等の特例への対応

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1.相続税計算シミュレーションとは

相続税の金額は、被相続人(亡くなった人)の遺産額だけで決まるものではありません。法定相続人の人数や法定相続割合、実際にどのように遺産分割するかなど、さまざまな要素が影響します。そのため、「遺産がこれくらいだから、相続税はこれくらい」と単純に言えず、相続税額を把握するには複雑な計算を行う必要があります。

なお、相続税は亡くなった人すべてにかかるわけではありません。課税対象となる財産から債務などを差し引いた正味の遺産額が、基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)を超えた部分にかかるルールになっています。このような計算を行い、相続税がかかるかどうかを把握するだけでも一筋縄ではいきません。

そのような場面で活用したいのが、インターネットで利用できる相続税計算シミュレーションです。税理士事務所や金融機関、相続専門メディアなどがサービスを展開しており、無料で利用することができます。

以下で紹介する5つのサービスは、いずれもインターネット上で必要な情報を入力すると、相続税の金額を試算してくれます。ソフトをインストールする必要もなく、パソコンはもちろんスマホでも手軽に計算ができて便利です。

2.相続税計算シミュレーション5選

ここからは、筆者がおすすめする相続税計算シミュレーションを5つピックアップし、その特徴や使用感を解説します。

2-1.税理士法人チェスター|全体がざっくりわかる

相続税に特化した税理士法人チェスターが提供している相続税計算シミュレーションは、シンプルな操作画面が特徴です。以下の5項目の情報を入力するだけで結果を確認できます。

  • おおよその遺産総額
  • 配偶者の有無
  • 配偶者の遺産取得割合
  • 配偶者以外の法定相続人
  • 法定相続人の数

このように最低限の入力項目となっているので、「トータルでどれくらいの相続税がかかるか、ざっくり知りたい」という人にマッチします。逆に言えば、細かい情報を加味したシミュレーションはできないので、相続人一人ひとりの税額を知りたい人は別のサービスを利用したほうがいいでしょう。

なお、チェスターの相続税計算シミュレーションのページの下部には、税理士報酬のシミュレーションができるようになっています。遺産総額や相続人の数、土地の数、非上場株式の数を入力すると、およその報酬額を把握できるので、こちらも利用してみるといいでしょう。

2-2. SBI新生銀行|相続人別まで計算

SBI新生銀行のサイトに掲載されている相続税シミュレーションは、相続税の総額だけでなく、相続人別の相続税額まで計算してくれます。被相続人が残した遺産のほか、各相続人ごとの遺産の取得割合を入力することで、「自分はどれくらいの相続税がかかるのか」を調べることが可能です。

また、財産額を総額で入力するのではなく、「現金・預貯金」「有価証券(株・債券・投資信託等」「死亡保険金」「不動産(土地・家屋)」「その他の財産」「債務等」をそれぞれ入力するスタイルになっているのも特徴的です。

相続税の計算を行う際、財産の種類によっては特殊な計算が必要になります。たとえば死亡保険金には法定相続人1人あたり500万円の非課税枠が設けられており、このようなルールを加味する必要があるのです。

SBI新生銀行の相続税シミュレーションは、死亡保険金の非課税枠も反映される形になっているので、より現実に近い相続税額を把握できます。その一方で、相続放棄があった場合の試算ができないなど、いくつかの注意点があるので考慮しておく必要があります。

2-3. 相続会議|二次相続までシミュレーション

朝日新聞社が運営するポータルサイト「相続会議」が提供している相続税計算シミュレーションは、「一次相続」と「二次相続」の両方をシミュレーションできます。両親のどちらかが最初に亡くなるのが一次相続、続いてもう一人の親が亡くなるのが二次相続に当たります。

一次相続は二次相続に影響するため、できれば両方のシミュレーションを行って遺産分割協議を進めたいところです。他のサイトは一次相続のみのシミュレーションとなっているので、二次相続まで踏まえた対策を考えるのであれば、相続会議のサービスが役立つでしょう。

また、こちらのサイトでは、シミュレーションのページの下部に相続関係の情報がまとまっています。一次相続と二次相続の違いや、相続税を計算するときの手順やポイントなどが書かれているので、シミュレーションと合わせて活用するといいでしょう。

なお、相続会議のシミュレーションで算出されるのは全相続人の相続税額の合計であり、相続人ごとの税額は表示されません。したがって、一次相続については他のシミュレーションサイトで詳しく試算し、そのうえで二次相続を考えるときに相続会議のシミュレーションを利用するといいと思います。

2-4. 三井住友信託銀行|ステップに沿って試算

三井住友信託銀行が公開しているシミュレーションは、以下の5つのステップに沿って相続税の試算を行います。

1 相続人と財産額の入力
2 基礎控除額と課税遺産総額の試算
3 相続税の総額の試算
4 各人の納付税額の試算
5 相続対策のチェックポイント

このうち1〜4は、相続税を実際に計算するステップに沿っているので、計算の流れを理解するのに役立ちます。最終ステップでは、相続対策とともに、三井住友信託銀行が提供する相続関連のサービスの案内が一覧となっています。

気になる点は、他のサービスと比較して若干見づらいところです。税制改正に合わせて、「2014年12月31日以前に相続があった場合」と、「2015年1月1日以降に相続があった場合」の両方で計算する仕様になっているのですが、今は基本的に2015年以後の相続のシミュレーションだけで足りるため、かえって邪魔に感じてしまいます。

2-5. 国税庁|より現実に近い税額がわかる

国税庁のサイトにある「相続税の申告要否判定コーナー」も、相続税のシミュレーションに活用できます。こちらの特徴は、かなり細かい情報を入力することで、より現実に近い税額を試算できることにあります。

また、配偶者の税額軽減(配偶者控除)や小規模宅地等の特例を加味した税額を算出してくれる点も強みです。これまでに挙げた他のシミュレーションの場合、配偶者控除の試算は行えるものの、小規模宅地等の特例には対応していません。

ただし、入力する項目が多い分、最終結果にたどり着くまでに手間がかかります。遺産の金額だけでなく、土地の面積なども入力する必要があり、複数の画面に遷移しながら進める形になるので、使い勝手としては決して良くはありません。ある程度相続税のルールを知っている人向けのツールと言えるでしょう。

3. 相続税計算シミュレーションのメリット

ご紹介した相続税計算シミュレーションのメリットは、相続税の計算方法をすべて理解していない人でも、ある程度の税額を把握できる点にあります。

前述のとおり、相続税額を計算するには、遺産総額を計算してから基礎控除額や課税遺産総額などを計算するといった、さまざまなステップを踏む必要があり非常に複雑です。そんな複雑な相続税の計算方法を理解していなくても、相続税計算シミュレーションを使うことでざっくりとした目安を知ることができます。

相続税は必ずかかるわけではなく、正味の遺産額が基礎控除額以内であれば申告は必要ありません。そのため、まずは申告すべきかどうかを把握するだけならシミュレーションだけでも十分です。もしも基礎控除額を超える可能性があるのであれば、必要に応じて税理士に依頼するというような使い方が良いでしょう。

4. 相続税計算シミュレーションの注意点

相続税計算シミュレーションは便利なものですが、注意点もあります。使い方を間違えると後で困ることになるので、あらかじめ注意点を把握して利用しましょう。

4-1. 実際の相続税額を保証するものではない

当然ですが、相続税計算シミュレーションで算出される税額は、入力した情報に基づいています。そのため、そもそも入力が誤っていれば試算結果も実際と大きくずれてしまいます。

とくに、相続財産に不動産や非上場株式が含まれている場合、これらの相続税評価額を算出する必要がありますが、この計算はプロでなければ困難です。また、配偶者控除や小規模宅地等の特例を使うのか、生前贈与の有無、保険契約の内容など、さまざまな個別事情も影響しますので、シミュレーションはあくまでも参考程度にしておくべきでしょう。

4-2. 相続税の負担が少なくなる遺産の分け方までわからない

相続税の負担を減らしたいのであれば、個別の事情にあわせ、一次相続だけでなく二次相続まで考えたうえで、最適な形で遺産分割を行う必要があります。しかし、相続税計算シミュレーションは、最適な遺産分割の方法まで提案してくれるものではありません。

5. 贈与税計算シミュレーション

贈与税計算シミュレーションツールについても、補足しておきます。

相続税対策として、生前贈与が有効ですが、この場合は贈与税に注意する必要があります。相続税を減らせても、それ以上に贈与税がかかってしまえば本末転倒です。

したがって、生前贈与を行う場合は、相続税のシミュレーションだけでなく贈与税のシミュレーションも行っておきましょう。贈与税の計算は相続税よりもシンプルで、シミュレーションできるサイトも多数存在します。どれくらいの財産を贈与するのかを判断するときに利用するといいでしょう。

6. まとめ シミュレーションは参考程度に。個別のケースは専門家に相談を

相続税は心配の種ですが、まずはざっくりとでも税額を知ることが安心につながります。ただしシミュレーションはあくまで参考程度にすべきであり、実際に相続の問題にあたるときは、税理士や弁護士といった専門家に相談することが大切です。

この記事は、「相続会議」から提供を受けています。2024年1月1日時点の情報に基づいています

この記事を書いた人

フリーライター・元国税専門官
小林 義崇
1981年、福岡県生まれ。2004年に東京国税局の国税専門官として採用され、相続税の調査や所得税の確定申告対応、不服審査業務等に従事。17年7月、フリーライターに転身。書籍や雑誌、ウェブメディアを中心とする精力的な執筆活動に加え、自身のYouTubeチャンネルでお金に関する発信を行っている。著書に「元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者」「すみません、金利ってなんですか?」などがある。

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