2月17日にbouncyの無料オンラインイベント「Game Changer Catapult × bouncy 『未来のカデン』を生み出そう」が開催された。
日本を代表する家電メーカーであるパナソニックの方々を登壇者に迎えた本イベントは、共創型という特徴を持つ。登壇者は、これから事業化を目指す「未来のカデン」をプレゼンし、参加者の中から選ばれたパネリストが、プレゼンに対する意見や質問を登壇者と交わす形だ。
開発中のプロダクトをいち早く知ることができ、自分の意見が開発に反映される可能性もある珍しい機会であるイベントは、大いに沸いた。この記事では、当日披露された未来のカデンや、参加者から出た意見や感想などを紹介する。
記事を読んで気になった未来のカデンがあった場合は、SNSで意見を書くことでイベントに参加できなかった人も共創できる。ぜひ鋭い意見を出してほしい。
未来の当たり前をつくるGame Changer Catapult
イベントは、Game Changer Catapult 事務局の向奥 裕基氏による「Game Changer Catapult(ゲームチェンジャー・カタパルト)」の紹介から始まった。
「Game Changer Catapultは、社会課題を解決する事業アイデアをパナソニック社内から募り、「未来のカデン」としてカタチにしていく新規事業創出プラットフォームのこと。従来の家電の延長線上で家電を考えるのではなく、社会課題や、多様化する人々の困りごとを解決するカデンなど、未来の当たり前をつくる発想でカデンが生まれているのが特徴です」と説明。
これまでに220テーマを超える未来のカデンの種が生まれ、既に事業化しているカデンがあることを明かした。
この日、披露されたカデンは「コデカケ」「Ipsum(イプソマ)」「FLOWUS(フローアス)」「kagaMe(カガミー)」の4つ。
「コデカケ」のプロジェクトリーダー・松田 淳一氏にバトンが渡り、未来の当たり前になる可能性を秘めたプロダクトの説明が始まった。
聴覚障がい者向け外出支援デバイス/サービス「コデカケ」
コデカケは聴覚障がい者向けのデバイス&サービスだ。首掛け用のデバイス、手首につけるデバイスをセットで使用する。首のデバイスで後方から接近する自転車や車などを検知し、手首のデバイスが振動をして伝える仕様だ。
歩道のありなしや、自転車の交通量が少ないなどの条件を入れて好みのルートを探せるサービスも予定している。
コデカケは、デバイスとサービスを組み合わせて、聴覚障がい者の方々の「移動中に後方からの接近物が分からず危険を感じていること」「慣れない道の場合はGoogleストリートビューなどで調べないと不安を感じてしまうこと」などの困りごとを解決するという。松田氏は「外出時の心理的ハードルを下げることで、ココロおどるおでかけができるようになる未来の実現を目指す」と意気込みを語った。
コデカケのプレゼンの後は松田氏と、パネリストによる「共創シンポジウム」が始まった。
共創シンポジウムではパネリストから「振動で伝えるのではなく、後ろを見られるようにするのがいいのではないか。振動で不安を取り除けるのかが疑問だ」という意見が挙がった。
この意見に対し松田氏は「聴覚障がい者の方々は、耳が聞こえない、あるいは耳が聞こえにくい分、目で情報を確認しています。日頃から目を酷使しているのでこれ以上目に負担がかからないように考慮した。とはいえ、振動で不安を取り除くために振動情報を多くすると、振動を不快に思ったり、疲れてしまったりする方もいると思うのでさじ加減は難しい。この点を意識して開発を進めていく」と回答した。
また、パネリストから「不安を取り除いただけではミッションにあった『イキイキした生活』にはならないと思う。おでかけしたくなるような、近くにあるカフェの情報や、ライブやイベント情報など使用者の趣味嗜好にあった情報案内もサービスで提供してはどうか」というアイデアも出てきた。
ほかにも、Zoomのチャットを通じて多くの意見や感想が寄せられた。その一部を紹介する。
「道にばかり集中しないでちょっとした気になるお店を見つけるなどの余裕もできそうですね」
「画面を見ないでも良いのは歩きスマホの危険を回避できるのは良いですね」
「興味深いアイデアですね!私は以前、視覚障がい者の方向け商品開発を行った事があります。経路の事前検索は工夫が必要ですが、デバイスについてはGUIでなく振動や音で伝えるようにすればなどすれば、視覚障がい者の方にも有益なサービスになるような気がしました」
「もし実現できたら、安全性という意味で、私は小学生の子供(聴覚障がい者)に持たせたいなと思っています」
発達に特性があるお子様の「強み」を見つけて伸ばす教育サービス「Ipsum」
続いてプレゼンをしたのは、「Ipsum」リーダーを務める山崎 智史氏。Ipsumは、発達に特性があるお子様の「強み」を見つけて伸ばす教育サービスだ。Ipsumは、①見つける、②伸ばす、③確認する、④相談するという4つの機能が提供される。
「元々、『伸ばす』と『確認する』はパナソニックの強い分野。スマートトイやSTEAM教育を提供する施設の知見、AIやセンシング技術などを活用していきたい」と既存の強みを活かした展開であることを説明した。
サービス当初支援を予定しているのは、自我をつくる段階にいて、子どもの成長に大切な時期である就学前〜小学生の子どもだという。
山崎氏は、「発達に特性があるお子様の親御さんは、お子様の将来や自立に長く不安を抱えられます。お子様が得意とすること、好きなこと、個性を活かして自立してほしい、その応援をしたい、と思っていても、どのように伸ばせば良いのかが分からないのが現状です。我々はお子様の強みを見つけ伸ばす教育を提供することで親御さんのご支援をしたい」とサービスに込めた思いを明かした。
Ipsumのプレゼンの後は山崎氏と、パネリストによる「共創シンポジウム」が始まった。
共創シンポジウムでは、元塾講師で発達に特性がある子どもを受け持ったこともある参加者がパネリストとして登壇した。パネリストは「良いサービスだと思うしプロセスも素晴らしい」と共感を示し、「パナソニック1社で教育を完結するのは難しいと思うので、行政や大学などと連携をとったり、臨床心理士など専門家とも関係をつくったりするのが良いのではないか」とアイデアを出した。
ほかにも、Zoomのチャットを通じて多くの意見や感想が寄せられた。その一部を紹介する。
「こどもがアスペルガー症候群なのですが、親が子供をサポートする際に出てくる障
害やストレス(感情の起伏を落ち着かせる、じっとしていられないのを注意する) の緩和の方がありがたいです。その結果、子供の得意分野を伸ばすことにつながるかと思います。
発達障がいと認定されないグレーゾーンの方は行政サービスなど受けられず困っている方も多いと思います」
「他人と比較してネガティブになりがちな親御さんを一人にしない、という意味でも大きな意義がある事業だと思いますし、グレーゾーンに悩む人の人数も含めると、ビジネスとして成り立つ可能性を感じています」
自宅浴室で蒸気浴を可能にする置き型カデン「FLOWUS」
続いてプレゼンをしたのは、「FLOWUS」のリーダーを務める大庭 めぐみ氏。FLOWUSは、「自宅浴室で蒸気浴をする」という新習慣を提案する置き型カデンだ。FLOWUSは大庭氏の辛かった体験が起案に繋がっている。
「ある日突然、机に戻れなくなり、気がついたらスーパーにいて何をしていいのか分からなくなってしまいました。何にも興味が持てなくて、世界が灰色に見えて、私は価値がない、と自分を責めていました。せっかくパナソニックにいるのでこの出来事を活かして、二度とこの状態にはなりたくない、誰にもこんな思いをさせたくない。と思ったのがFLOWUSの起案のきっかけです」(大庭氏)
働くなかで心身のバランス不調を経験した人にヒアリングを繰り返した結果、課題は「不眠」と「毎日イヤなコトを考え込む」ことだと分かったそうだ。その課題に対して、自分の経験から「サウナで解決できるのではないか」と思い、ここに手軽さという価値を加えて「自宅浴室で蒸気浴」という自分を前向きにさせる新習慣の提案に繋がった。
FLOWUSはシャワーホースに接続し、浴室の壁に貼り付けたり、平らな場所に置いたりして使用する。起動して約3分でサウナ環境にすることを目指している。賃貸の住まいでも工事をしないで使用できる予定だ。
FLOWUSのプレゼンの後は大庭氏と、パネリストによる「共創シンポジウム」が始まった。
共創シンポジウムでは、まだ世に出ていないプロダクトだからこそ疑問となる「実現性」についての質問が出た。
「シャワーヘッドから出るミストは非常に小さな粒だと思うが、水の熱伝導を考えると温まりやすいが冷えやすいという特性があると思う。熱がこもりやすいお風呂もあれば、逆にお風呂場に窓があって窓を通じて外気温が入ってくるような環境もある。そこはどう考えられているのか?」(パネリスト)
この質問に対し大庭氏は「ミストに関してはおっしゃるとおり、粒が細かすぎると寒くなります。我々のチームメンバーにミストのプロがおり、ペルソナに近い方の賃貸環境、工事なしで賃貸の方でも使える点をおさえながら、最適なミスト粒径や勢い、水圧をシミュレーションしながら今まさに検討をしている最中です。ここにパナソニックとして貢献する意義があると思っているので、ぜひご期待ください」と力強く回答をした。
ほかにも、Zoomのチャットを通じて多くの意見や感想が寄せられた。その一部を紹介する。
「とても辛い体験をされたのですね。私も昔心身不調になった時期があります。対処方法は人によって十人十色とは思いますが、家庭で手軽にサウナが実現するのはとても魅力的だと思います。しかもマンションなどの既築の住宅に後付けで実現できる商品は良いと思います。価格帯、取り付け方法、衛生面での不安、お手入れなどのメンテナンス性なども考慮されれば魅力的な商品になると思いました」
「自宅でサウナができるのはとても面白いですし、自分も体験したいです。ただ、このソリューションが、不眠を解消するための課題解決になるのか?は気になります。精神的な疲労に関係なく、自宅でサウナを楽しみたい!という方に刺さるソリューションなのではないかと思いました」
「IoT製品として、スマホでON/OFF、温度設定、時間設定などができると、帰宅前の移動中に予約して、帰ったらすぐに浴室直行できるといいなと思いました。利用もしやすいですし、マーケティング的にも魅力ある製品になるかと思いました」
マインドフルな思考の醸成をサポートするサービス「kagaMe」
最後にプレゼンをするのは、「kagaMe」リーダーを務める加藤 亮平氏。kagaMeはマインドレス思考であることから理想の自分に近づけていない人に、「マインドフル思考」の醸成をサポートするデバイス(鏡)を提案するサービスだ。
加藤氏はプレゼン冒頭で参加者をアッと驚かした。「何も考えず今から1分間、目を閉じてください」という提案をしてきたのだ。結果として、多くの参加者が「何も考えないようにしていても、様々なことが思い浮かんできた」と感想を述べた。
加藤氏は瞑想やマインドフル思考が難しいことを体験してもらったうえでkagaMeの説明を始めた。
「kagaMeは、悩みや思考のクセをオンライン診断してもらうことで、思考法により悩みが解決することをまずは説明します。その後、実践方法のインプットとフィードバックでマインドフル思考の理解促進へと繋げ、鏡と一緒に瞑想することで正しい瞑想の仕方を学び、かつ、瞑想時の状態分析も行なう予定です。また、日常的に向き合っている鏡を使うことで習慣化を促進します」(加藤氏)
最後に、「kagaMeは心の豊かさを提供できる未来のカデンになると信じています」とプレゼンを締めた。
kagaMeのプレゼンの後は加藤氏と、パネリストによる「共創シンポジウム」が始まった。
共創シンポジウムでは、パネリストから「体験者の満足度や、向上を感じたなどの分析はどうやって行なうのか?」という質問が出た。
この質問に対し加藤氏は「パナソニックには、お客さまの脈拍、生体データを取ることによって、自律神経の乱れなどを計測する技術があります。心拍の揺らぎでお客さまがストレスを感じていることなどが分かるので、そういった技術を活用して分析を行い、また、フィードバックも行ないたいと思っています」と回答した。
ほかにも、Zoomのチャットを通じて多くの意見や感想が寄せられた。その一部を紹介する。
「プレゼンテーションの中で1分間の沈黙を参加者と共有する経験自体が初めてでし
た。これくらい突発的にやらないと、なかなか瞑想のハードルって高いですよね」
「ネットにつながる鏡になったら嬉しいです」
「やる気のある人には良いかも。気づかない ニーズが本来ある方にリーチするのが課
題かもしれませんね」
「マインドフルネスをやる人と、人間が一番難易度の高い「継続」という行為をできる両方の人ってマーケ視点で渋い気がします」
Game Changer Catapult 事務局の向奥 裕基氏より:
今回のイベントに参加させて頂き感じたのは、本当に多くの皆様からご期待を頂いているということです。これからも皆様からのご期待を胸に、顧客課題と真摯に向き合い、課題解決に挑戦していきます。
また、今回ご紹介させて頂いた4つの「未来のカデン」は、下記のWEBページにて紹介しています。ぜひご覧頂き、コンタクトページから率直なご意見・ご感想お寄せください。
「コデカケ」 https://gccatapult.panasonic.com/ideas/kodekake.php
「Ipsum」 https://gccatapult.panasonic.com/ideas/ipsum.php
「FLOWUS」 https://gccatapult.panasonic.com/ideas/flowus.php
「kagaMe」 https://gccatapult.panasonic.com/ideas/kagame.php
未来の当たり前を共創したイベント
未来の当たり前を共創したイベントを紹介した。この日披露された未来のカデン「コデカケ」「Ipsum」「FLOWUS」「kagaMe」はまだスタートしたばかりのプロジェクトだ。本イベントは、意見や感想を伝えることで「未来のカデン」の実現が近づいたのではないだろうか。
本イベントはbouncyのYouTubeチャンネルで、ダイジェスト版と本編の両方から振り返ることができる。当日参加できなかった人も、ぜひ意見や思いをSNS上でぶつけてほしい。それが、製品化や実業化に繋がり、新しい共創となるはずだ。