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函館、横浜、長崎などの港町に漂う異国情緒は、それぞれの街に設けられた外国人居留地によるところが大きい。いずれの街の居留地も幕末期に開港した際、諸外国からの貿易商や役人が多数集まり、住宅が不足したために形成された経緯がある。
神戸市街北寄りの高台に広がる、北野町異人館街。日米修好通商条約に伴う、1868(慶応3)年の神戸港開港時に、外国人向けに整えられた住宅街である。このエリアは神戸港が見下ろせる山手の高台で、眺望の良さと静かな環境から、外国人に人気を博したという。
最盛期は北野町界隈を中心に、200棟近くの異人館が建ち並んでいたが、現存する建物は30棟ほど。現在は見学施設をはじめ飲食物販店、結婚式場などに活用されながら、往時の姿をとどめている。
豪邸のほか安価に暮らせる住宅も
展示には、住宅として使われた当時の名残をはじめ、母国の文化の紹介などもあり、文字通り異国の暮らしや文化にふれられる洋館めぐりが楽しめる。
貿易商の住宅の中で最も有名な建物は、ドイツ人貿易商トーマスの邸宅だった「風見鶏の館」だろう。ドイツ人建築家のラランデによる、伝統様式を取り入れた建築が特徴。ハーフティンバー様式や煉瓦壁を用いた外装、中世城館風の食堂が北野異人館の中でも独特な造りだ。
シンボルの風見鶏は雄鶏で風向を示すほか、警戒心が強いことから魔除けの意味もあったという。
賃貸に使われた異人館もあり「うろこの家」は外国人向けの高級借家。外壁に用いられた、魚のうろこに似た天然石のスレートが特徴の建物だ。神戸港を一望できる窓からは、商人が荷を運ぶ船の入出港を確認していたとも。
北野町通りには外国人向けアパート「洋館長屋」も現存。玄関をはさんで左右対称に居室が配され、二世帯が暮らせる間取りとなっている。
領事の邸宅から国の雰囲気が分かる
領事が使っていた異人館も多く「萌黄の館」はかつてのアメリカ総領事邸。名の通り外装と内装の配色に萌黄色(黄緑色)が多用され、コロニアルスタイルの建物に開放的なベランダ、張り出し窓などが設けられた、明るい雰囲気の異人館だ。
ほかにもオランダ王国総領事邸だった「香りの家オランダ館」もと中国領事館で唯一の東洋風の異人館「坂の上の異人館」など。旧パナマ領事館の建物は、現在はトリックアートの美術館となり、観光客に人気を博している。
天才音楽家のピアノは個性的配色
母国を紹介する異人館の中で、必見なのが「ウィーン オーストリアの家」だ。オーストリア大使館とオーストリア通商代表部の後援による施設で、作曲家モーツァルトの生涯を中心に、その世界観に基づいてオーストリアに深く触れることができる。
1階には100年前の絵画をもとに、当時のモーツァルトの部屋がリアルに再現。2階は氏の作曲活動の足跡、家族にまつわる展示で、中央には作曲に使用されたピアノの複製品が配されている。「フォルテ・ピアノ」と呼ばれ、鍵盤の白鍵と黒鍵の色が、現在のピアノと逆なのが面白い。
開国期の神戸の様子と、当時の各国の生活や文化を今に伝える、丘の上に広がる異人館街。坂道の途中から街並みを振り返れば、時代をはるか超えた往時の風景が、垣間見えるかも知れない。
今回の神戸・北野異人館街編、フル動画はこちらから視聴できます。