旅のはじまりはどこから? 旅先までどう移動するか、それは旅を構成するうえで大切な要素じゃないだろうか。
急いで行くなら飛行機や新幹線もあるけれど、時間をかけて行く船ならば移動すら旅の一部になる。「船旅」という選択肢が旅をもっと魅力的にするはずだ。
開設から110年以上の歴史がある大阪~別府航路に、このたび新造船「さんふらわあ くれない」が投入された。今回は従来のフェリーのイメージを覆す、豪華で快適な客室やグルメが盛りだくさんの「さんふらわあ くれない」の魅力を紐解いてみよう。
さんふらわあ くれないの基本情報
大阪〜別府航路は、110年以上前に大阪商船(現 商船三井)によって開設され、現在に至るまで大阪港や別府港、そして温泉都市・別府の繁栄に貢献してきた。「さんふらわあ くれない」は、かつて運航していた客船の名を冠し、この航路に投入された新造船。大阪~別府間を約12時間で結ぶ。
19時前後に出発し翌朝7時前後に到着するため、船内で無理なく食事や宿泊を楽しめ、旅の移動時間を有意義に過ごせる。また、日本初となるLNG燃料(液化天然ガス)を使った長距離フェリーとして環境に配慮した試みにも注目が集まる。
運賃は一般的なスーペリアツインで大人1名1万円台(公式サイト参照)。豪華ホテル顔負けの洗練されたスイートでも2万円台(公式サイト参照)と、大変魅力的な料金設定だ。
冷蔵庫やテレビ、海を眺めるバルコニーやアメニティ類も揃い、更に広々とした展望大浴場や美しいパブリックスペース、ご当地グルメを提供するレストランやショップなども利用できるとあれば、スタンダードなホテルに宿泊するよりも断然お得感がある。
移動と宿泊を分けて手配するよりも、便利で特別感のある一泊が叶えられるというわけだ。
もちろん車やバイクごと乗船できるので、現地到着後すぐに目的地へ向かって移動できる点もフェリーならではの利点だ。
コネクティングルームやスイートも完備 世代を越えた快適さを実現
「さんふらわあ くれない」の大きな特徴として挙げられるのが、従来のフェリーのイメージを覆す客室タイプの広さと豊富さだ。「親子3世代の絆を深める」というコンセプトの元、それぞれの世代が楽しめ交流できる客室造りに力を入れている。
全18タイプの客室には、リーズナブルなシングルルームや相部屋の他、長距離フェリー初となる和洋室のコネクティングルームやペットと泊まれるデラックスルームも完備。特に、和洋2タイプの客室を繋げられるコネクティングルームは、各世代のニーズに応えて快適な滞在を約束してくれる。
また、豪華ホテルに勝るとも劣らないスイート客室は、まるで船内にいることを忘れてしまうほどゆったりとエレガントな造り。バルコニーからは瀬戸内海を眺望でき、海風を感じながらお酒を飲むひとときは格別。スイート宿泊者にはシャンパンが用意されている。
また、スイート専用カフェラウンジなど特別感のあるもてなしもホテルライクだ。
乗客1人当たりの内装面積が従来と比べて大幅に増えたことにより、客室だけでなく大浴場やパブリックスペースも船の中とは思えないほどゆったりとしていて快適だ。
キッズコーナーやベビーケアコーナーも設けられ、乳幼児からお年寄りまで無理なく過ごすことができる。手狭なホテルのバスルームとは違い、広大な瀬戸内海を眺められる開放的な展望大浴場があるのも嬉しい。
圧巻のアトリウムや夜景が特別な船旅を演出
乗船時、まずゲストの目を引くのが3層吹き抜けとなった圧巻のアトリウム。中央の美しい大階段を上れば旅の高揚感も自然と高まる。
更に、このアトリウムの天井や壁面いっぱいには高性能プロジェクターを用いたプロジェクションマッピングの映像が映し出される。ショーは毎日開催されており、いつ乗ってもイベントが楽しめるのはうれしいポイント。
「さんふらわあ くれない」が進む瀬戸内海の航路では、途中神戸港や明石海峡大橋など夜景が美しいスポットを通過する。100万ドルの夜景と称される神戸港、間近に迫るライトアップされた明石海峡大橋や瀬戸大橋など、美しい夜景に癒されること間違いない。到着間際には水平線から昇る朝陽を眺め、船旅ならではの特別感を味わえるだろう。
ご当地グルメを楽しもう
旅の醍醐味といえば、筆頭に挙がるのがご当地グルメ。「さんふらわあ くれない」にはオーシャンビューのレストランがあるが、ここでは瀬戸内海に因んだ食材や郷土料理などのご当地グルメを楽しむことができる。瀬戸内海といえば海の幸は欠かせない。鮮度の高いお刺身は人気メニューの1つだ。
船内のショップには土産物も充実している。大阪や大分のグルメや特産品も購入できるので、ご当地のお土産探しをするのも楽しい。ワインからビール、焼酎まで地酒類もズラリ。部屋へ持ち帰ってゆっくりと飲み直すのも楽しそうだ。
朝起きるとそこは別府 大分の魅力を楽しんで
長距離フェリーの便利さは、寝ている間に目的地まで移動できるという点。夕食に舌鼓を打って大浴場で疲れを癒せば、あとはぐっすり眠るだけだ。
「さんふらわあ くれない」は、瀬戸内海を夜間に航行する船としては最大サイズの大型船。更に最先端の技術や設計の工夫により、寝る時に揺れが気になるという方でもほとんど体感することがないほど静粛性が向上している。
朝起きるとそこはもう大分県別府の地。朝の清々しい光が差し込み、船窓から別府の街並みに立ち上る湯けむりが見えてくると旅への期待感も一層高まる。
大分県は日本一の源泉数と湧出量を誇る温泉県。中でも別府は個性豊かな温泉が集まる。湯けむりが立ち上り、硫黄の香り漂う温泉街を巡る旅も楽しい。また、緑豊かな山々や高原など自然の美しさも随一だ。
ふぐや関さばなどの海の幸、豊後牛やカボスなどの山の幸、両方楽しめる食材の豊富さも魅力的。戦国時代に南蛮貿易で栄えた大分県は歴史探訪も楽しみの1つとなる。
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飛行機や新幹線を使って移動を短縮するのも良いかもしれない。けれど、旅の要素として必ず含まれる移動手段も1つの醍醐味と捉えてみてはいかがだろうか。
まるで豪華ホテルさながらの「さんふらわあ くれない」。船旅で行く大分県は、きっと特別な思い出となるに違いない。