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海外ノマドワーカーのフィリピン下鳥です。
フィリピンのアポ島は、周辺が海洋保護区に指定されている自然豊かな島です。
2021年9月、国際環境NGOネットワーク「GAIA(Global Alliance for Incinerator Alternatives)」が、アポ島の廃棄物管理の取り組みを評価し、フィリピン初の"ゼロ・ウェイスト島"に認定しました。
ゼロ・ウェイストとは、資源の浪費を最小限にとどめ、廃棄物をできるだけ減らし、最終的にごみをなくすことを目指す取り組みです。
238家庭、人口約1,000人の小さな島が、どうしてゼロ・ウェイストを目指し、成果を挙げられたのか。プロジェクトを推進した村長のMario Pascobelloさんにお話をうかがいました。
どのような取り組みを行っている?
村長:最初に行ったのは、ゴミの分別に関する島の条例の制定でした。次に、資源ごみの回収場所の設置。生分解性のものとそうでないもの、プラスチック・缶などを集めておく場所です。
島内には5ヶ所の資源ごみ回収場所が設置されています。6人のスタッフが各家庭から資源ごみを回収し、この場所に運ぶそうです。回収は週3日、曜日ごとに種類が決められています。
資源ごみ回収のスタッフは、緑のTシャツを着ています。収集スタッフの賃金は住民が直接お金を出して賄っているそうです。島の重要な仕事の1つとして認識されていることがうかがえます。
村長:コンポスト(堆肥化)のエリアも2ヶ所設置しました。ここへは住民が直接木や葉を運びます。できた肥料は学校や希望者へ無料で提供しています。
自然豊かな島だからこそ、木や葉のごみが大量に出ます。それらを再利用するだけでも、かなりごみが減ることがうかがえます。
村長:そして最も重要なのは、住民への教育です。ごみを分別すること、決まった曜日と時間をしっかり守ること。特に子供達への教育を重視しています。学校で正しい廃棄物処理を教えるために、まず教員への教育から行いました。
日本ではゴミの分別やゴミ出しのルールはかなり根付いていますが、フィリピンの多くの自治体では、いまだほとんど根付いていません。実はこの現状こそが、アポ島がゼロ・ウェイストに取り組む理由でもあります。
20年以上無視されてきた法律
実はごみの分別自体は、各自治体に対して、2000年に既に法律で義務付けられていました。しかしこの20年間、ほとんどの自治体で実行されてきませんでした。
マリオさんは2018年に村長に選出され、法律に従って適切な廃棄物処理システムの構築に取り組みました。法律上アポ島には建設できない埋立地も、アポ島が属するダーウィンの街に建設を掛け合い、もうすぐ完成というところまで来ました。
街単位での埋立地の設置は、都市部を除けば州内で初めての実現になります。しかし、「それでも遅かった」とマリオさんは語ります。
村長:どんなに良い法律があっても、人の意識が変わらなければ意味がありません。意義を理解し協力する人もいれば、そうじゃない人もいる。だからこそ法を定めて終わりではなく、時間と資金をかけて、忍耐強く取り組む必要があるのです。
1つのコミュニティで実現しても意味がない
アポ島がゼロ・ウェイストに取り組むのは、法令遵守以上に、より主体的な目的があります。
村長:アポ島は1982年に、フィリピン初の海洋保護区に制定されました。現在は国内に2000以上の海洋保護区がありますが、その多くはこの島で開発された方法論を踏襲しています。私たちはゼロ・ウェイストの取り組みも同様に、他の地域にも広げていきたいのです。
アポ島内での廃棄物処理は、現在ではほぼ問題なく運用できるようになりました。実は、今アポ島が直面している最大の問題は、島の外からやってくるごみです。
海流の関係で、他の都市からの海ごみがアポ島のビーチに流れ着いてしまいます。ビーチや海が汚れるだけでなく、多くのカメやイルカがプラスチックゴミを食べて窒息し、死んでいるそうです。
村長:ゼロ・ウェイストは1つのコミュニティで実現しても意味がないんです。だからこそ、私たちの取り組みを成功事例にして、国全体、そして世界へ広げていきたい。海洋保護区の事例のように。
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私は最初、取り組みが成功した理由は、コミュニティの規模が小さく、ルールや教育を徹底しやすかったことだったのかと思っていました。
しかし実際に訪れてみると、島の人たちが長い間美しい海を守り、自然と共生してきたからこそ、ゼロ・ウェイストの意義や、環境汚染の深刻さを肌で実感できていて、それこそが取り組みの定着につながっているように感じました。
日本ではフィリピンよりもルールが根付いていますが、一方で、出したごみがどのように処理されているかや、世界の環境汚染とどのようにつながっているかまでは、なかなか実感できていないような気もします。
彼らの取り組みは、エコツーリズムを通して、私たち外国人観光客も知ることができます。小さいコミュニティから見える視点だからこそ、新しい気づきをもらえるかもしれません。