ゲーム実況は著作権侵害になる? Apexやフォートナイトは? 配信初心者が気をつけたいポイント

公開: 2021-05-06

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若い世代から人気を集めているゲーム実況・動画配信。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で巣ごもりの時間も増えたことから、ますます需要が高まっています。しかし、安易に配信をスタートするのは危険です。ゲームの動画配信の増加にともない、ゲームメーカーと著作権をめぐるトラブルも増えています。 インターネット上の権利侵害に詳しく、ご自身も無類のゲーム好きである中島博之弁護士(弁護士法人東京フレックス法律事務所)にゲーム実況における著作権の問題点について聞きました。
2021年5月6日付、GAMEクロスに掲載された記事を転載しています

「著作権法上でのゲームの扱いは映画と同じ」

ゲームのプレイ動画の配信における著作権の問題は、2020年にイザナギゲームズより発売された「Death Come True(デスカムトゥルー)」における一連の対応で注目を集めました。

俳優をキャスティングした実写ムービーと融合したインタラクティブなゲーム性が特徴であった「Death Come True」は、ネタバレ対策で発売前に違法アップロードの禁止を発表。しかし、発売後に300件以上の違法アップロードを確認し、削除請求の対応や投稿者を特定し、告訴検討の連絡や面談を行うなどの対応をしました。

イザナギゲームズとともに「Death Come True」における著作権の保護に対応してきたのが中島弁護士です。中島弁護士は、ゲームの著作権に関してこう解説します。

「ゲームの映像に関しては、著作権法上では映画の著作物と同様に保護されています。自由にキャラクターを動かせるプレイ動画に関しては、これまで映画の著作物だと明示された判例はないと思われます。しかし、背景の描写やキャラクターなど創作的な表現物が登場していることから、プレイ動画に関しても何かしらの著作権が存在すると考えるのが一般的です」

しかし、ゲームの著作権については映画ほどの知名度がないのが現状です。

「プレイステーション®︎1や2の時代から、ゲームを起動すると『権利者の許諾なく、インターネット上に配信等を行うと著作権侵害になる恐れがある』という喚起が行われていました。しかし、映画館で流れる映画泥棒のように大々的に告知ができていないのが現状です。同時に逮捕にまでいたるような事例もないものですから、映画とゲームに対する著作権の認識には大きな差があります」

若年層を中心にゲーム動画に限らずYouTubeでのアップロードや視聴が増加しています。著作権の認識がないまま配信している層も増えているのが実情です。2020年8月に株式会社ジャストシステムが発表したデータによると、ゲーム動画を視聴し、実際にプレイをしている10代の30.4%が「自身でもプレイ動画を配信したことがある」と答えています。

Apexやフォートナイトは配信推奨も、メーカーやジャンルによって異なる

一方、ゲーム動画配信への著作権意識が低いのは、ゲームタイトルやメーカーによって動画配信への対応が異なることも起因していると中島弁護士は指摘します。

「映画の無断アップロードはすべてが違法なのでわかりやすいですが、ゲームでは対戦型ゲームやFPSなどに関しては、むしろ『どんどん配信してくれ』と推奨しています。基本プレイ無料のApex Legends™やフォートナイトなども配信を推奨していて、多くの動画が配信されています。そういった現状もあり、『このゲームも大丈夫だ』という認識になっていると考えています」

ゲームの動画配信へのメーカー対応が一様ではないのは、ゲームジャンルによっては宣伝効果が見込まれることも理由です。

2020年8月に株式会社ジャストシステムが発表したデータによると、ゲームのプレイ動画を視聴した後に「公式サイトを見た人」が26.3%、「ゲームを購入した人」が24.2%となっています。影響力のある配信者にメーカーが報酬を支払う例も増えています。

「AAA級のタイトルにもなると、人気配信者に報酬を支払い、プロモーションを依頼しています。ニンジャ氏(ライブストリーミング配信プラットフォームTwitch上で最もフォロワーが多い動画配信者)は、億単位でメーカーと契約しています。人気の配信者における宣伝効果にメーカーが期待している事実があるので、ゲーム動画の違法アップロードを肯定している方々からは『無償で宣伝しているんだからむしろ御礼をするべき』なんて声もあります。そういう感情論とは別に、法律では著作権法上で保護されている著作物の公衆送信権・複製権侵害などに当たる行為をメーカーが個別に許諾をして、初めてゲームの動画配信が可能になっている。その大前提のルールを忘れてはいけません」

例えば、「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」など人気のRPGシリーズを複数保有するスクウェア・エニックスでは、タイトルごとにガイドラインや著作物利用許諾条件を細かく定めています。特に「ドラゴンクエスト」シリーズでは、これまで動画配信は禁止されていましたが、2021年1月にガイドラインを改訂し、個人における動画の収益化も認めるようになりました。

セガの「ぷよぷよ」シリーズは、基本的にプレイ動画の配信は許可されていますが、商用・営利目的の利用は認めていません。カプコンは、事務所などに所属しない個人においては、動画配信の収益化も認めているなど、メーカーやタイトルによってガイドラインの内容は多岐にわたります。

「任天堂もガイドラインに従っていれば動画配信が原則的に許可されています。任天堂のガイドラインには『お客様ご自身の創作性やコメントが含まれた動画や静止画が投稿されることを期待しております』という一文があり、ユーザーのクリエイティビティと任天堂のゲームが融合することでさらに素晴らしい楽しみ方、表現を生み出したいという着眼点があるのが特徴です。

ガイドラインを作っているゲームメーカーの多くは、基本的に許可を出していますが、ムービーシーンやエンディングシーンだけ切り抜いた投稿はダメなど許諾の範疇が異なります。ですので、配信をする前に必ずガイドラインを読まなくてはいけません」

著作権侵害と判断され、刑事告訴の可能性も

では、安易にゲームのプレイ動画をアップロードしてしまい、ゲームメーカー側に著作権侵害と判断されるとどうなるのでしょうか。

「基本的には動画の削除要請がメーカーから来ることになります。私が担当した『Death Come True』でもそのような対応をしました。違法アップロードに関しては、10年以下の懲役、または1000万円以下の罰金、またはその両方が課せられます。また仮にネタバレ動画などで売上に大きな影響を及ぼした場合は、著作権法第114条の推定規定という考え方もあります。この規定を使えば、ライセンス料や実際の視聴数から算出して得られたであろう利益を損害賠償として請求することも可能です」

違法アップロードにおける刑事罰や損害賠償が広く認知されることは抑止力となります。一方、もっと基本的なリテラシーが重要になると中島弁護士は語ります。

「違法行為をしない、法律を守るというのは生活する上での大前提です。許可されているゲームのプレイ動画をアップするのは問題ありません。しかし、ストーリー性を楽しむゲームを違法アップロードされると、『ハリーポッター』や『スター・ウォーズ』を公開初日に盗撮した人によってアップロードされるのと変わらない話になります。何年間もかけて、莫大な費用をかけて制作したものを台無しにしてしまう行為だと知ってもらいたいです。

またYouTuberなど動画配信者という肩書を名乗るのであれば、より高いリテラシーが求められます。動画配信をしているけど著作権のことはわかりませんでした、では説明がつかない時代になってきていると思います。ゲームが好きなら尚更です。サッカー選手がサッカーのルールを守ってプレイするように、ありとあらゆる専門家や収益を得ている人はルールや法律を守ってやっています。業界のルールを守りましょうの一言に尽きるでしょう」

ゲーム配信をしたいならガイドラインを守る!

ゲームのプレイ動画配信について、中島弁護士にお話を伺いながら解説してきました。ざっくりと説明すると、「配信前にガイドラインをチェックする」「業界のルールと法律を守る」が鉄則となります。

中島弁護士は、7万冊以上の漫画が違法アップロードされ、出版業界に3200億円以上の損害を出した「漫画村」の運営者を特定するなどインターネット上の権利侵害の専門家として知られています。プライベートでは大のゲーム好きとしても知られており、Xbox360のRTSゲームでは世界3位になるほどの実力者です。インタビューの最後にこれまでのゲーム遍歴を伺うと興味深いエピソードをたくさん話していただきました。

「最初に買ったハードはツインファミコンでした。その後、PCエンジン、スーパーファミコン、メガドライブ、3DO……。プレイステーション®︎1の『ファイナルファンタジーⅦ』は朝の5時にサークルKに自転車で行って買いました。『Bloodborne』も衝撃的に面白かったですね。お仕事でプロデューサーにお会いする機会があって『2日でクリアしました』と伝えたら、『開発に3年かかりました』と言われました(笑)。でも、違法アップロードというのは、そういう長い期間をかけて作られた作品を傷つける行為だと思っています。ゲームを開発するのに、お金も時間もかかっているので」

ゲームが好きなら、ゲームで収益を得たいなら、ルールを必ず守ろう!という言葉も中島弁護士のゲーム愛ゆえ。最近は、忙しい生活の中でも新作ゲームはチェックをしているものの、「30歳を過ぎてから瞬発力が衰えてきている」とも語っています。

                                           (サムライト)

中島博之弁護士

中島博之弁護士

中島博之弁護士
衆議院議員秘書を経て2011年弁護士登録。国会議員政策担当秘書の資格所持。サイバー犯罪に関しては警察に捜査協力も行う。ITと知的財産分野を中心に活動する他、海外法務や電力会社・医療法人の顧問を務めるなど多岐にわたって活躍する。漫画村運営者の特定、漫画村出張所の摘発、YouTube上の権利侵害の摘発など著作権侵害問題に積極的に取り組んでいる。2021年は代理人弁護士としてではなく、権利者本人として海賊版と戦えるよう、漫画原作を執筆中。Twitterアカウントはこちら

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