2024年(令和6年)1月に発生した「令和6年能登半島地震」で、大きな被害を受けた石川県輪島市。建物の倒壊や火災による焼失が相次いだ河井町は市街の中心で、「輪島朝市」をはじめ多くの見どころや施設が集まる、奥能登観光の拠点といえるエリアです。
筆者は2021年(令和3年)に、YouTubeチャンネル『おさんぽTV 朝日堂チャンネル』の撮影で、輪島の町を歩きました。復興への願いを込めつつ、その際の様子を発信しますので、当時の町の風景へ思いを馳せてみてください。
なお最後に、災害義援金の送付先を二ヶ所紹介しています。ご活用いただけると幸いです。
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商店も魅力ある朝市通り
輪島へは金沢駅から北陸鉄道バスを利用して、約2時間30分。朝市通りは市街を貫く中心街で、沿道には漆器など工芸品、みやげ、特産品などの店舗が並んでいる。
町家風建築の建物が軒を連ね、軒にはレトロな看板が掲げられるなど、昔町の風情があふれる通りだ。
入口そばに構える「日吉酒造店」は、1912年(大正元年)創業の「金瓢白駒」の蔵元。奥寄りには柚子を素材とした和菓子・柚餅子の「中浦屋」も構える。
「永井豪記念館」は、輪島出身の漫画家・永井豪氏の原画などを所蔵する展示施設。前には代表作『キューティーハニー』が描かれた看板が掲げられ、『マジンガーZ』のオブジェは朝市通りのシンボルの一つにもなっている。
西寄りにある小さな社は、輪島の鎮守である「重蔵神社」の産屋。重蔵神社は朝市と輪島塗の守り神で、産屋がある場所は舳倉島の女神・奥津比咩命(おきつひめのみこと)が身籠った逸話から、安産の神様として地元の信仰が篤い。
輪島の旬が集まる人情市場
輪島朝市は日本三大朝市の一つとして知られ、360mある朝市通りの沿道に、200以上の露店が出店している。起源は平安時代との記録があり、重蔵神社の祭礼に合わせて持ち寄った産品を、物々交換したのが始まりとされる。
市は毎朝8時から12時まで開催され、沿道には露店のおばちゃんの呼び声が飛び交い、活気にあふれている。近郊の農家が旬の農産品を持ち寄った露店には、朝採りの野菜や花などがずらり。
また輪島は日本海に面した土地だけに、水産物を販売する露店が多いのも特徴だ。扱われる魚介は、輪島漁港で水揚げされたものが中心。鮮魚の露店の店先には、日本海や富山湾で漁獲される、旬の地魚が揃っている。
四季の代表的な魚介は、春はノドグロ、メバル、アマダイ。夏はアワビ、サザエ、シマエビ。秋はサバ、カレイ、ハタハタ。冬はブリ、マダラなど。
ブランド魚介では、石川県で水揚げされるオスのズワイガニ「加能ガニ」が有名。メスの「香箱ガニ」も、安価ながら卵がうまいことで人気が高い。また輪島は天然フグの漁獲量が日本一で、ブランドフグ「輪島ふぐ」として売り出している。
小路の奥に素顔の輪島が
輪島の市街には朝市通りのほか、並行して海側と南側にも大通りが横断している。それぞれを結んで小路も錯綜しており、所以に基づいた名前もつけられている。
朝市通りの海側の通りは、河井浜に沿って続く通称「浜通り」。沿道には板壁をあしらった民家が建ち並び、浜に面した町の風情を実感できる。
途中、「馬出し小路」や「風呂屋小路」など、生活感が感じられる路地とも交差。静かなたたずまいの先に垣間見える、朝市通りの賑わいが対照的な眺めだ。
石畳の市姫参道の先に建つ祠は、市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)を祀る「市姫社」。商人開運の市の守り神として、朝市に出店する人たちの信仰が篤い社である。
漆器の町らしい商店街
朝市通りの南側を通る国道249号は、「輪島市まんなか商店街」との名がついている。町家や土蔵をイメージした店舗が並び、輪島大祭で巡行される曳山「キリコ」を模したオブジェが並ぶなど、普段使いの商店街に伝統的景観がマッチしている。
沿道の街路灯には輪島塗の漆器が配され、「漆ロード」との愛称も。河原田川に面して建つ「輪島塗会館」では、輪島塗の製造工程の展示、漆器の販売を行っている。輪島塗の老舗も沿道に点在していて、職人町らしいたたずまいも伝わってくる。
輪島塗は古くは冠婚葬祭の実用品で、下地に輪島地の粉を使った堅牢さ、沈金や蒔絵による芸術性の高さが特徴。制作を統括する「塗師屋」を中心に、木地制作、塗り、加飾が分業で行われ、まさに輪島の町を支えてきた伝統工芸といえる。
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