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え! この電動キックボード、違法なのにお店で販売されてるの?
2018年頃から電動キックボードの動向を追っているに知らなかった我々……。ナンバープレートさえついていれば法で認められた車両という証であり、公道を走行しても問題ないと思っていた。
電動キックボードは合法と違法の差が素人には分かりづらい。それゆえ、2021年の渋谷では、歩道を走る、ナンバープレートさえ付いていない電動キックボードをよく見かける。なぜ、こんな状況なのだろう?
そんな疑問に答えを求め、我々は早速電動キックボードに詳しい人にアポをとった。
シンガポールのFalcon PEVと共同で、日本で「公道走行可能な電動キックボードZERO9」を開発・販売しているSWALLOW合同会社、代表、 金洋国氏にインタビューを行った。
インタビュアーは、動画ライターで電動モビリティの動向を取材する田所美波。サポートに編集部の菊田正剛が同行した。
登場人物
金洋国
田所美波
菊田正剛
公道走行可能な電動キックボードの条件
電動キックボードが、公道走行するための条件を最初におさらいしておこう。
・電動キックボードは原動機付き自転車(以下、原付)扱いなため、原付に必要な保安部品が揃っていること。具体的には保安基準を満たす下記を搭載していること。
・住んでいる自治体の市民税課で、軽自動車税申告書兼標識交付申請書に必要事項を記入して、提出すること。
・ナンバープレートを取り付けること。
・自賠責保険に加入すること。
以上の条件が揃っていればいいのだが、インタビューしてみると意外なところに落とし穴はあり、驚いた。
公道走行ができない電動キックボードが増える理由
先日、商品を借りて乗ってみた電動キックボードが整備不良のものであることがわかりました。「公道走行できる!」が売り文句だったのですが、実際はそうじゃなかった。2つのブレーキの内、片方が電子ブレーキで整備不良の状態で売られていたんです。
私の例みたいに、消費者が知らずに買って公道で乗ってしまう商品も少なからず一般に出回っています。違法電動キックボードの現状について、どう考えていますか?
原付である以上、物理ブレーキが2つ必要なのは条文をしっかり読めばわかります。ですが、すごく遠回しな表現が使われているんですよ。だから、気づかない・読み解けないのが一般的です。片方が電子ブレーキ、片方が物理ブレーキという形で販売する業者さんもいます。その理由は世界的にそのようなブレーキの形をとる電動キックボードが主流になってきていて、それを輸入していることが多いからです。大抵は勘違い、見逃しをして販売しているのが現状ですね。
実際に公道走行できる電動キックボードを販売している金さんは、条文をちゃんと読み解けたのはなにかコツでもあったんですか?
僕も読み解いたわけじゃなくて、自分の安全に対する考え方として、電子ブレーキは危ないと思っていたからなんです。電子ブレーキは、バッテリーが切れたら機能しない。ただのレバーになっちゃいます。「それはブレーキとしてどうなのかな?」というのは常に思っていたんですよ。
幸いぼくが取引しているシンガポールの製造元も同じ考え方を持っていました。彼らは電子ブレーキを一切作ってないんです。そこから仕入れたので、たまたま電子ブレーキにはあたりませんでしたね
公道走行できないのに、なぜナンバープレートを取得できるの?
そこがまた私には不思議ポイントなんです! 保安部品が完ぺきではないものにも、国はナンバープレートを与えているじゃないですか。ナンバープレートがあれば「公道で走っていいですよ」という証明にならないんですか?
電動キックボードに限らず、原付は税務課が担当しています。税務課に書類だけ出せばナンバープレートが取得できちゃうんです。ちゃんとブレーキなどがついているかは税務課の人は気にしなくていいんですよね(保安部品の写真を求められることはある)。
じゃあ片方電子ブレーキでも、そのまま申請できちゃうんですか?
そうですね。税務課の人もそこまでは知らないことが多いのでナンバープレートを取れてしまうのが現状というか……。
でも、もしナンバープレートをつけて公道を走っていて警察に「それ電子ブレーキだよね?」という指摘を受けると、乗ってる人は罰則を受けますよね?
そうですね。整備不良という切符を切られてしまいます。
原付のナンバープレートは「課税標識という税金を払っていますよ」ということを示す標識なんですよ。車のナンバープレートとは実は全然違うものなんです。だから「ナンバープレートついているから安心♪」というわけではないんです。
原付はガチなバイクより緩めな制度で運用されているのが実態なんです。
日本で電動キックボードは生き残れるのか?
シンガポールでは、危ないという理由で電動キックボードが公道で乗れなくなりました。日本も原付の制度をちゃんと整備していかないと、違法の電動キックボードが増えてマイナスな意見が増えるかも……と思ってしまいます……。
(完全に違法というわけではなく、自転車専用レーンのような場所なら乗れるのですが、あまりないので事実上乗れなくなりました。)
そうですね。けれど、電動キックボードをバイクと同じ扱いにするのもやはり無理があるというのも、みんなが感じていることだと思います。警察や国交省もそういう思いがあるみたいです。警察からの中間報告に、「今後多様なモビリティが増えていく中で、ちゃんと区分を作ってそこに入れましょう」ということが書いてあります。
知らなかったです!
原付のルールを厳しくして「電動キックボードをしっかりとした原付にしましょう」という流れではなくて、「新しく作った区分に電動キックボードを入れてちゃんとルールをつくっていきましょう」というのが今の流れなんですよ。
一定の大きさ以下の電動モビリティは、最高速度に応じて以下の3類型に分けるとともに、外部に表示を行った上で、走行場所について切替えを認めることを検討
日本の法律は意外に整備されている?
日本の電動キックボードに関する法律は遅れている印象だったんですけど、意外に整備されているんでしょうか?
そうですね。原付って実は日本だけの制度です。海外には原付はないので英語で話す時すごく言葉に困るんですよ。Vespa(バイクのメーカー)とかっていう単語をいつも使うんですけど、あれが海外でいう原付の一般的なイメージです。
海外に原付ってないんですね! 初耳です。
海外のバイクはもっと大きくて、125cc以上が主流なんです。50ccのバイクってあまりなくて。小型のバイクという区分が日本には昔からあったというのが実は先進的です。
むしろ日本は、電動キックボードの先進国になるかもしれませんね。
そうですね! そのようになれば嬉しいですね。
電動キックボードでどんな未来を思い描く?
金さんが電動キックボードに期待する未来って、どんなものですか?
僕たちSWALLOWの理念は「電動キックボードのある生活を豊かに」です。「電動キックボードが生活の一部になって、気軽に乗れる物になって欲しい」というのが僕たちの願いですね。
禁止される前のシンガポールにはそういう社会がありました。みんなオフィスに乗って行って、充電して、また乗って帰るというような文化です。日本でそれを再現するのが僕の願いです。
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今回取材をして一番衝撃だったのは、「整備不良の電動キックボードの大半は故意でつくられたものではないのかもしれない」という発見があったことだ。
たしかに、販売者もわざわざ整備不良のものを販売したいわけじゃないだろうし、消費者も交通違反のリスクをしょってまで乗りたいはずはない。国も、販売者も、消費者も、ニューカマーとどう共存するか探り探りなのだ。
人の在り方と共に、法は変わっていく。電動キックボードという乗り物は、これからの人の在り方と法を変容させていく画期的な乗り物なのかもしれない。