アルゴリズムから生まれていく伝統工芸。
その生成過程は、とても美しいものでした。
・アジアデジタルアート大賞
・福岡県知事賞
・文部科学大臣賞
の
3つを受賞した、高山穣氏による映像作品『Splendor』。
日本の伝統工芸である「
切子」や「
組子」を、
アルゴリズムで記述したCG作品です。
アルゴリズムで切子を描く
切子や組子は生活の中で多用された模様。大勢の人が頻繁に作成するため、装飾の数理的なルールがある程度明確になっております。
この特徴を利用して、作者の高山穣氏は、切子や組子のアルゴリズムでの再記述を試みました。
主に用いた技法は、L-systemというもの。
樹木などの植物の成長プロセスを初めとした様々な自然物の構造を、記述で表現できるアルゴリズムです。
『Splendor』は、L-systemを応用して、切子や組子の模様を描いたものです。
生成プロセスの一部は偶然性に任されています。たとえば文様の大きさや配置、動きのタイミングなどは、3DCGソフトHoudiniのノードからある程度自動的に算出されているとのことです。
また、伝統的な文様を主題に置きながらも、本作はデジタルアートにしかできない表現にも挑戦しています。たとえば、複雑な結び目のような構造と切子、変形していく曲面上で展開していく組子などです。
これらは伝統工芸の枠組みでは見ることのできない、新しい表現となっています。
アルゴリズムで伝統工芸を保存?
ところで、この記述には、もうひとつ別の側面があります。
伝統模様をアルゴリズムで「保存できる」といことです。写真や映像ではなく、仕組みそのものをアーカイブする。これによって、新しい方法ででの伝統の継承が実現したり、伝統をより正確に再現したりできるようになるかもしれません。
Splendorは
YouTubeで全編を見れるので、興味のある方はぜひチェックしてみてください。
bouncyディレクター
Masaaki Ishino
bouncy編集部ディレクター