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世界最大級の時計見本市「バーゼルワールド 2019」で見えた、伝統技術のその先。

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100年以上の歴史を持つ「腕時計」という存在。ゼンマイと歯車だけで動く機械式時計、バッテリー駆動のクォーツ式時計、ソーラーパワーを使うGPS電波時計など、様々なスタイル、機構、挑戦を続け、2019年のいまでも人々に愛され続けている存在だ。


昔ながらのゼンマイ、歯車で成り立っていたとしても、その中には切削の最新技術であったり、カーボンやチタンといった最新の素材であったりと、その時々の技術の流れに乗り、時を刻んでいるのだ。

これだけ飽きられずに進化を遂げている時計、今後この伝統の技術がどう進んでいくか?

それを見極めるべく、bouncy編集部はスイスへ旅立ち、「バーゼルワールド 2019」を取材してきました。

毎年約10万人以上が来場! 世界最大級の時計と宝飾品の見本市「バーゼルワールド」

ロレックスやショパールのような老舗高級ブランド、グッチやDKNYのようなファッションブランドなど、全世界の名だたる時計ブランドの最新モデルがここで発表され、バイヤーたちの商談が行われる、世界最大規模の時計と宝飾品の見本市「バーゼルワールド」。

今年は3月21日から26日まで6日間をかけて開催され、世界中から数百を超える出展社が集結。スイス北西部のライン川のほとりにある都市バーゼルは、この見本市のために訪れた人々によって、非常に活気づいていた。

時計ジャーナリストが語る「時計の未来」

何故、腕時計のためにこれだけの人々が集まるのか?

長年、高級機械式時計の世界を取材し、時計やファッション、車に造詣が深いフリーライター柴田 充氏に、時計の魅力について伺った。

ー腕時計の魅力はどういうところにあるのでしょうか? 柴田氏: 機械式時計を含む腕時計全般というのは、より自分らしさであったり個性を象徴するものだと思います。100年以上の歴史を持っていて、その間に様々なスタイルであったり、色々な機構であったり、様々なトライアルをした結果が現在に到るわけで、その非常に多様化している中から自分に合ったものを1本選べるという点で、自分らしさを反映できる道具だと思います。


例えばそれが自分の収入であったり、自分の年齢であったり、ライフステージであったり、それぞれのシーンに自分に見合ったものを1本選べるという点において自分だけのものになり、そこに価値があると思います。

ースマートウォッチが流行するいま、機械式腕時計を選ぶメリットはありますか? 柴田氏: スマートウォッチというのは最大公約数的に機能と合理性を極めて実用の面ではそれに勝るものはないと思います。スマートウォッチの中でも今いろいろな機能がどんどんセグメントされているというか、それぞれの用途にあったスマートウォッチが出てきてるかと思います。


例えばNIKEが出すようなスポーティなスポーツユースのものであったり、カシオが出すような山ですとか、GPS機能を中心としたもの、最終的にはと言いますか、ある一定のセグメントされた分野において進化を遂げていくというのがスマートウォッチの1つの形態になっていくでしょう。

ただ、その一方で機械式時計はいったいどういう選択肢があって、それぞれの選ばれるものがあるのかということを考えると、時計というのは今では少し社会性を持っている存在になっていて、例えば社会人のたしなみとしてビジネスにおけるドレスコードがあるように、こういう場にはこういう時計をするべきではないか、あるいはこういう会社、職場ではこういう時計をするべきではないかという1つの基準のようなものがあるのは間違いないとは思います。


例えば一流ホテルのホテルマンが以前は靴を見たと言いますけれども、今は時計もかなり見る確率が多いらしくて、それは決して客の品定めをするのではなくて、その人がどういう人なのかを知るための判断基準の一つにしていると僕は聞いています。

そういった意味でも自分らしい時計であり、社会から自分がどう見られたいのかを考えたときに時計が1つのアイテムになると思います。

ー数千万〜数億円する時計が売れるのも、そういったステータスを考えてのことでしょうか? 柴田氏: 1本数億円ともなると美術工芸品の域になるので、それを日常的に着けるというのはまずないと思います。本当に王侯貴族ではないですけれど、中東とかの人たちが買って財産として置いておいて、そしてある日それを手放すこともあればずっと歴代受け継ぐような、一つの財産になります。

ただそのレベルに行かなくても、数千万クラスですと日本でもよく着けてる方がいらっしゃいますし、例えばIT系、起業家、そういう富裕層というような方々が着けているような時計もあります。

そういう時計をなぜ選ぶのかというと、彼らにとっては1つのクラスを象徴するドレスコードになるわけで、自分たちの仲間内であることを象徴するような、あるいは自分が成功したということをシンボライズするようなもの、そういうものとして5千万、6千万の時計をしている人も少なくないです。

ー今後、腕時計がより身近になっていくには、どうすればよいでしょうか? 柴田氏: 例えばファッションで考えてみると、ファッションの世界ってアースレジャーと呼ばれるような非常にスポーティで、それこそジムに行ってもいいようなスタイルでカジュアルウェアが増えている、一方でナポリスタイルですとかイタリアの中でも非常に特化したファッションが流行っていたり、またブリティッシュ系のクラシコスタイルも流行っている、一方でファストファッションもあると。

時計が今後より身近になっていく上では、そういうファッションアイテム化は間違いないですし、そう行った中では多様化していくのが当然だと思います。

それこそ数千万するものから5万、10万で買えるものが同じライン上にあって、それぞれの人たちが何を選ぶのか、どういうシーンでそれを選ぶのかということでより多様化して共存共栄していくのが、今後の時計のような気がします。


それでこれまで時計がこういう形で手元にあるという習慣が根付いてくると、かつてのハットのようにある時期は流行ったけど、今は被る人は少ない、まあ若い人は被りますけど、そういうようなものではなく根付いていくと思いますし、それがそれぞれのシーンですとか、用途に応じて全く違う時計を皆が使い分けるようになっていくんではないかなとは思います。

ー腕時計とは、人にとってどういう道具といえるでしょうか。 柴田氏: どんなに慌しい日常がザーッと過ぎようとも常に個人の時間であって、それは手元にウェアラブルで着けてることによって自覚できるような一瞬一瞬のようなものはあると思います。


人それぞれの感覚にも近いとは思うんですが、やっぱり時間って個人のものだと思うんですよ。

日常的に次のスケジュールはこうだああだ時間はどんどん進んでいくんですけど、自分が着けている時計を見ることによって、「あ、これは自分の時間だ」と。そこで一瞬落ち着きを取り戻す、あるいは平静を保つことができるというような機能も愛用すればするほど出てくると思います。

その点では、よりウェアラブルが進んで眼鏡のここに搭載されるとか、そういうのもあるとは思うんですけど、それが効率とかだけじゃない、ヒューマンなと言いますか、メンタルに近い道具ということになってくると、この辺がいい落としどころではないかなと思いますね。

・ ・ ・

時計台の大時計からはじまって、万人が同じ時計を共有し、社会が動くというような1つのことから、それがそのうち普通の置き時計になって、そして今は腕で時を刻んでいる「時計」という存在。


皆で共有したものからどんどんパーソナルになっていってく時計。未来では「時間のあり方」すらも変わっていくのかも知れない。


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