ビールの健康効果とは?種類別栄養比較や管理栄養士おすすめのたしなみ方まで
お酒好きには欠かせないビールですが、飲み過ぎが健康面にどんな影響を与えるのか気になる方も多いでしょう。ビールの栄養素や効果、効能、ビールの発酵方法などによる違い、管理栄養士におすすめの健康的なビールのたしなみ方までご紹介します。今回、公益社団法人「集団給食協会」でコラムを執筆され、都内で「季節の小料理屋 みや」を経営する管理栄養士の宮屋敷 忠信さんにご協力いただきました。
良い?悪い?ビールなどのアルコールの健康への影響
ビールの健康への影響は、賛否両論があります。
ビールが健康に良い派の意見
適度なビールは、健康効果をもたらすと言われています。適度なビールとは、中びん1本の500ml程度。お酒に弱い方や女性、高齢者は、より少ない量にしておきましょう。
ビールは、ビタミンB群やカリウム、マグネシウムなどのミネラルなどの栄養素を含んでいます。ビタミンB群には、B1、B2、B6、ナイアシン、パントテン酸、葉酸などがあります。ビタミンB1は糖質の分解を助け、ビタミンB2は細胞の再生や代謝の促し、ナイアシンは糖質や脂質、たんぱく質の代謝に不可欠、といった作用を持っています。マグネシウムは、骨の正常な代謝の維持、体温や血圧の調整に作用します。カリウムは、余計な塩分の排出、血圧を下げるといった働きがあります。
ビールの健康に対する効能、メリットは複数あると言われています。まず、食欲の増進です。炭酸が胃の動きを刺激して、空腹感を増すために食欲を増進につながります。血管を拡張させ、血液の巡りを良くします。さらに、体温を上げ、疲労回復効果もあると考えられています。アルコールが血液中の善玉コレステロールを増やして、心臓病などの循環器系疾患の発症を抑えるとも言われています。
ビールが健康に悪い派の意見
一方で、ビールなどのアルコール飲料は、少量であっても体に悪影響を及ぼすという意見もあります。これまで発表されて来た論文では、アルコールは少量でなら動脈硬化によって起こる脳梗塞や心筋梗塞などのリスクを下げますが、がんについてはリスクを高める可能性があると指摘されました。可能性と危険性を同時に持つアルコールについて、さらなる研究も行われています。
世界的医療雑誌『ランセット』に掲載された論文では、世界195ヵ国で実施された592の研究を統合して、健康への影響を評価しました。その結果、健康リスクを抑えるために最も信頼できる飲酒量は、1日あたり0~0.8杯です。1杯は、純アルコール換算で10グラム、つまりビールで250ml程にあたります。1日1杯程の少量であれば、心筋梗塞や糖尿病のリスクが低い一方で、乳がんや結核などのリスクの高さを示しています。
アルコールを健康のためにあえて摂取しているなら、飲むのを避けた方がいいでしょう。しかし、アルコール好きで飲んでいるのでなら、自分の抱えるリスクを考慮した上で、判断した方がいいかもしれません。そして、飲むにも、1日1杯、250ml程度に抑えておくべきでしょう。
種類別ビールの栄養比較
ビールの原材料
ビールは、大麦やホップ、酵母、水を主な原料にしています。
大麦は、大麦に含まれる酵素を活性化させることにより原料となります。発芽した大麦を「麦芽(モルト)」と呼び、ビタミン量が増幅します。ホップは、昔から薬用植物して使われてきました。抗菌や鎮静、利尿効果などをもたらすと言われています。ホップにより、ビール独特の苦みや香りが生み出され、泡立ちや泡持ちを良くします。麦芽を細かく砕き、お湯に加えて糖化させると麦汁となり、ホップを加えて沸騰させ、苦味をつけてから発酵させるとお酒になります。この発酵に必要となるのが、酵母。麦汁の糖分は、酵母で分解されて、発酵により炭酸ガスが発生します。副原料は、コーンスターチや米などで、味を仕上げるために加えています。
ビールの種類
ビールは、使う酵母や発酵方法により「上面発酵ビール」「下面発酵ビール」「自然発酵ビール」の3種類に分かれます。上面発酵ビールとは、20度ほどの常温で発酵させる製法です。発酵の終わる頃に、ビールの液の上側に酵母が浮き出て、酵母の層が作られます。発効までに数週間ほどかかり、フルーティーな香り、豊かな風味を特徴にしています。発酵や熟成が進むため、長期貯蔵には向いていません。そのため冷蔵庫の無かった19世紀まではこのビールが主流でした。具体的には、IPA(インディアペールエール)、アルト、バーレーワインなど。
「下面発酵ビール」は、ラガーとも呼ばれます。現代で最も行われている低温貯蔵による発酵方法です。発酵を終えると酵母がタンク底に沈むため、下面発酵と呼ばれます。19世紀に世界中に広まりました。低温での発酵により、雑菌が繁殖しにくく管理しやすいのが特徴です。アメリカンラガー、ウィンナー、ボックなどが有名です。
最後の「自然発酵ビール」は、野生の酵母やバクテリアを利用した発酵方法。通常のビール造りで使用される酵母は、人工的に作られた純粋培養菌という酵母。しかし、自然発酵は天然の酵母を使います。培養技術の整っていない時代に行われていた原始的なビールとも言えます。ランビックやグーズ、ファロ、クリークなどの種類があります。
3種類の発酵方法で健康的なのは、上面発酵ビールと言われています。体の「酸化」は、老いや病気を招きます。この酸化を防ぐのが、ホップや麦芽。ホップや麦芽が豊富に含まれる苦味の強いビールを飲むと健康面にも役立つでしょう。中でも上面発酵のIPAは、抗酸化物質などの栄養を豊富に含んでいるため、健康面でのメリットも大きいです。
栄養士おすすめの太りにくいビールのたしなみ方
今回は、現役の栄養士に健康的なビールのたしなみ方について伺いました。
適量を守り、さっぱりとした料理を食べる
ビールを飲む量については、1日1杯ほどの適量がおすすめ。お酒に対する強さも個人差があるため、一概には言えませんが適量を守った方がいいでしょう。飲む量は、自分でコントロールしていく必要があります。
ビールと一緒に食べる料理は、なるべく高カロリー、高塩分を避けましょう。ジャンクフードや揚げ物などは、好まれがちですが特に太りやすい料理です。一方で、おすすめ料理は、お浸し、豆腐、枝豆、鍋物、酢の物など。旬の素材を活かして、さっぱりとしたおつまみを食べることが望ましいです。ただ、高カロリー、高塩分のおつまみを食べるのが全くダメな訳ではなく、重要なのは適度なバランス。少量であればいいですが、アルコールで制御がきかなくなり、食べ過ぎてしまうことに注意してください。
飲み終わりから就寝までは時間を空ける
ビールを飲み終えてから就寝までの空き時間は、長ければ長い程良いそうです。ビールが体内で吸収されるのに、飲んでから30分程かかります。その後、2時間ほどはエネルギーとして使われます。ただ、就寝時には基礎代謝が下がり、エネルギーとして使用されず、基本的に貯蔵エネルギーとして蓄えられ、脂肪になってしまいます。飲料と就寝の時間はなるべく長く開けておきましょう。
15分以上の適度な運動を
運動は、ビールを健康的に楽しむために役立ちます。激しすぎず、発汗を促す運動が理想です。基準は15分以上の有酸素運動。無酸素運動ではグルコースを、有酸素運動では脂肪酸を主にエネルギー源として消費します。また、運動強度が高まるほど、全身の糖質エネルギーへの分解は増えていきます。一方で、全身の脂肪酸エネルギー分解は、運動強度が高まり過ぎると逆に低下します。つまり、適度な運動が最も糖質と脂肪酸の分解を促すことになります。
また、一時的に激しい運動をしたとしても、時間経過が足りなければ、血中の糖分でまかなえ、脂肪を分解することはありません。その分岐点を超えて、ようやく脂肪を分解し始めます。その目安が15分間の有酸素運動。
15分以上の有酸素運動を終えてしばらくは、解糖系の代謝が続きます。有酸素運動により、糖代謝が活発になっていると、血中に入って来た糖質もすぐに消費されるため、脂肪になりにくい状態です。つまり、飲んだ翌日の運動も効果的ですが、飲む前に運動をしておくことも効果的と言えるでしょう。
まとめ
ビールは適度な量を守り、食事や睡眠、運動をうまく取ることで健康的に楽しむことができます。偏ることなく、バランス感覚を大切にしておきたいですね。
今回、「季節の小料理屋 みや」を経営する現役栄養士の方に、取材にご協力いただきました。「季節の小料理屋 みや」では、旬の野菜を使ってあっさりとした料理を提供しています。お腹周りの気になる方に嬉しいメニューばかり。地元の家族連れや女性一人で気軽に来店できるアットホームな居酒屋です。お店は、カウンター席がメインですが、座敷も利用可能。材料さえ揃えば、急なリクエスト料理にも応えてくれます。
営業時間:18:00~23:00(L.O.22:30)
定休日:火曜
住所:〒175-0092 東京都板橋区赤塚2丁目10−13
アクセス:地下鉄赤塚駅より徒歩5分、東武東上線下赤塚駅より徒歩3分
喫煙:店内禁煙(喫煙所あり)
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