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2025年2月、航空ベンチャー企業のBoom Supersonicは、テスト機「XB-1」の超音速テスト飛行を実施し、機体が発生する衝撃波を緩和する「Boomless Cruise」技術の実証試験にも成功した。Boomはその後、6月に2度目の超音速テスト飛行を行い、超音速への到達回数を合計6回に伸ばした。
衝撃波を地上に到達させない技術を実証
空中で物体の移動速度が音速(秒速約340m)を超えると、物体が前方に発している音波が圧縮されるように重なり合ったマッハ波を生み出す。このマッハ波は、超音速で移動する物体の後方から強い圧力変化を引き起こしながら円錐状に拡散し、マッハコーンと呼ばれる領域を形成する。
このマッハコーンが可聴音域に減衰しつつも地上にまで到達すると、そこでは爆発するような音(ソニックブーム)とともに、場合によっては窓ガラスなどが破損するような被害を生じる。
2000年代以降、この衝撃波を低減する航空機デザインの研究開発が始まり、米国防高等研究計画局(DARPA)やNASAなどが、ロッキード・マーティンなど既存の航空宇宙企業とともに、衝撃波低減形状の航空機の開発を行ってきた。
そして、航空ベンチャー企業のBoom Supersonicも、この衝撃波の被害を地上に及ぼさない航空機を実現し、将来的にコンコルドの退役以来の超音速旅客輸送の再開を可能にすることを目指して独自の開発を行っている。
XB-1 test plane demonstrated supersonic flight with no audible sonic boom. Boomless Cruise enables flights up to 50% faster over land and 2X faster over water on Overture supersonic airliner.
衝撃波を大気の層で屈折させる技術
音の伝わる速度は、空気が冷たい高高度よりも、温かい地表付近のほうが早くなる特性がある。衝撃波も音の一種なのでこの原理が当てはまる。そしてBoom XB-1では、超音速飛行で発生する衝撃波を一般的な超音速機に比べて浅い角度で発生するように設計されている。
浅い角度で発生した衝撃波は、大気の温度や気圧の変化するある高度まで来ると、屈折して上向きにその方向を変えるマッハカットオフと呼ばれる現象を生じる。これを意図的に利用するのが、「Boomless Cruise」技術だ。
今回の試験飛行では、最高速度マッハ1.12で飛行しても衝撃波が地上に到達しなかったことが確認された。
超音速旅客機「Overture」の開発も進む
試験飛行の成功によって、Boomは開発中の超音速旅客機「Overture」で地上上空を超音速で移動可能であることが確認できたとしている。この旅客機はマッハ1.3で飛行でき、アメリカ東海岸から西海岸までの移動時間を、現在の旅客機より最大90分も短縮できるという。国際路線でも、もちろん速度向上の恩恵が得られるはずだ。
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静かな超音速旅客機で、外国がぐっと近くなるかも?
Boom Supersonic