※bouncyではアフィリエイト広告を利用しています。記事で紹介した商品を購入すると、売上の一部がbouncyに還元されることがあります。
全身の筋肉がだんだん衰えるALS(筋萎縮性側索硬化症)。その難病と闘いながら、ALSクリエイターとして活躍する武藤将胤(まさたね)さんを追った映画が完成した。監督を務めたのは6年間にわたって密着取材を続ける、あるテレビ朝日グループの制作会社ディレクターだ。
©2023テレビ朝日・フレックス/映像提供 テレビ朝日・フレックス
病気の進行も不屈の精神も
タイトルは『NO LIMIT,YOUR LIFE ノーリミット,ユアライフ』。武藤さんと妻・木綿子(ゆうこ)さんの日常生活、病気の進行に伴い手術を受ける様子や「EYE VDJ MASA」に挑戦する姿などが描かれている。
EYE VDJとは、EYE(眼)を使った視線操作で、映像を操るVJ(ビジュアルジョッキー)・音楽のDJ(ディスジョッキー)の2役をこなすことだ。
bouncyと武藤さんは、2021年3月に開いたオンラインイベント「bouncy Lab.」でつながった。武藤さんは前年に喉の手術を受け、発声が難しい。そのためテキストを視線入力し、手術前に録音しておいた自身の声を音声読み上げ機能で出していた。
映画の密着取材は、2017年から始まった。そのため、発話したり歩いたりしている武藤さんの映像が出てくる。時間をかけた分、ALSという病気の進行具合がリアルに分かる。そして、何よりALSに負けず世界を広げる武藤さんの不屈の精神が鮮明に描かれる。
石原さとみさん「2人が人として好き」
武藤さんが代表を務める一般社団法人「WITH ALS」は、2023年6月18日「MOVE FES.2023」を開催した。ALSを啓発する音楽フェスで、前回の開催は2021年12月。当時も、筆者を含むbouncy編集部員が会場入りし、動画と記事でリポートを制作している。
今回の六本木の会場は、21年の渋谷よりキャパがはるかに大きくなっていた。そこに約700人が来場した。このほか配信では約300人、メタバースでは約40人。合計約1040人が武藤さんのEYE VDのパフォーマンスなどを楽しんだ。
フェスでは映画の告知の時間も取られた。ナレーションは武藤さん夫婦の6年来の友人だという、俳優・石原さとみさんが担当した。
来場して武藤さん夫婦と舞台上に並んだ石原さんは、武藤夫婦を次のように語った。
「何よりも2人が人として好きなのです。がむしゃらに生きるのではなく、的確に目標を持って、ちゃんとつかみに行っている感じの姿が本当に好き」
「そこには人間としての根本的に一番大事な、思いやりだったり、相手の立場に立って物事を考える優しさだったりとか、そういうものを一番よく分かってくれている」
もちろん、石原さんのこうした武藤夫婦への愛は、ナレーションにもにじみ出ている。
監督「夫婦から勇気を受け取って」
筆者はこの映画に関して、bouncyと武藤さんのつながりだけでなく、個人としてのご縁も感じている。監督を務めた制作会社のディレクターは、毛利哲也さん。毛利さんと筆者は約25年前の一時期、共に山口県警の記者クラブに在籍していた。
当時の毛利さんは地元テレビ局、筆者は朝日新聞の共に新人記者だった。何度か山口市内で記者仲間らと飲んだ。誠実な人柄との記憶がある。
毛利さんは、2006年からテレビ朝日「報道ステーション」のディレクターとして最先端医療などを担当。2017年4月に武藤さんと出会い、何十回も自宅に行き、自らカメラを手にして撮影を続けてきた。そして初監督となる今作を完成させた。
40代後半ともなると、かつての記者仲間の多くは取材現場から離れている。現場にいる筆者のような存在は珍しく、その分、毛利さんに共感を抱く。
オンライン取材で毛利さんは、密着取材に6年間かけた理由をこう話した。
「武藤さんはファッションもオシャレで、生き方も真っすぐで、思いの強い方。取材をすると格好良い姿、格好良い言葉を見せてくれていた。けど、妻の木綿子さんを取材すると初めての介護で大変だったり、夫婦げんかもあったりとのことだった」
「表に出る前には裏の武藤さんがいて、それを支える木綿子さんもいる。彼らの日常生活を伝えることが、ALSがどういう病気なのかを伝えることにつながると考えた」
そのうえで、映画に込めた思いを次のように表現した。
「彼らが挑戦する姿は、どんな世代の人でも、背中を押されるし、勇気をもらえる。映画を見て、そうしたものを受け取ってもらえたら」
2023年6月23日から公開中
2023年6月23日から、東京は「T・ジョイPRINCE品川」、大阪は「T・ジョイ梅田」で公開が始まっている。ほかの日程は、公式サイトでチェックを。