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早稲田大学に就活とキャリアに特化した「初」のサークルが2022年3月に誕生した。その名は「早稲田キャリア研究会」(通称:キャリ研)。単に仲間うちで業界研究をするなどにとどまらず、中小企業の経営者らと交流する機会も持っているという。25年ほど前の卒業生として、後輩たちの試みを探ろうと都内会場に潜入してきた。
40人のうち18人は1年生
筆者(47)が就職活動をしたのは、1990年代後半。大学生はまだまだのんびりしていた。企業でのインターンシップはさほど普及してなかった。入学してから3年生の夏ごろまで、学業にそこそこ励みつつ、アルバイトやサークル活動に時間を割く。そして、3年生の秋からボチボチと就活を意識し始める。そんな早大生が多かったように記憶している。
しかし、キャリ研のメンバーは異なる。2023年5月中旬に開かれた中小企業の経営者とのフランクな懇親会=飲み会には、約40人が参加。うち1年生は18人で45%ほどを占めた。
1年生は、つい2カ月ほど前までは高校生だ。受験勉強が終わったから、ゆっくり羽を伸ばそうーー。そう考えるのではなく、早くも自らのキャリア形成に目を向けていた。
この日も飲み会の前、人材ビジネスやDX推進を手がけるLifortune代表・渋谷喜之さんからキャリアに関する座学を受けていた。皆、真剣な表情で時に熱心にメモを取っていた。
「就活も大変だと聞くから、早くから準備をした方がいいかと思って」
「将来、やりたいことが分からないから、そのきっかけ作りになれば」
1年生に限らずメンバーは、キャリ研に参加している理由をこう語った。なるほど、大学時代の筆者よりも、はるかに将来を考えていて頼もしい。
広島や静岡からの経営者も
かたや中小企業の経営者たちの狙いは、どうか。Lifortuneの呼びかけに応じて、集まったのは9社からの約10人。都内だけでなく、地方からやって来た経営者もいた。
広島県福山市の共栄は、葬儀に使う棺(ヒツギ)を主力製品とし、約40人の従業員を抱える。3代目社長の栗原正宗さんが参加した動機は、「今の大学生の死生観を勉強する機会を持ちたい」。普段、接するのは葬儀の喪主世代が多く、大学生との接点はない。時に自社製品のパンフレットを広げつつ、社会人経験についても話していた。
静岡県浜松市のリトワードリンクスは、ゴム・樹脂・化成品の製造販売中心に複数事業を手がける。従業員約30人のうち、ほとんどが女性。地方企業の中では特に女性の割合が高く、ダイバーシティ経営の分野でも注目されている。
同社の創業社長である寺田朋広さんは、「若者の考え、関心事を聞くことが出来る貴重なチャンス。早大生から刺激を受けたい」。学生たちとかなり熱を帯びた会話を交わしていた。
アルコール管理もしっかりしつつ
栗原さん、寺田さんともに「将来的な採用につながれば」との気持ちはある。しかし、まずは目の前の学生と対話することで、刺激を受けたいと考えていた。
都内企業からは、事故物件の売買などを手がけるマークス不動産社長の花原浩二さんらが参加していた。どの経営者も上から目線になることなく、学生と真摯に対話していたのが印象に残った。
学びたい学生と刺激を受けたい経営者ともに、Win-Winの関係を築いていた。
なお、記事では分かりやすいように、この懇親会を「飲み会」と表記した。当然ながら、アルコールの管理は、しっかりと実施。キャリ研メンバーは、20歳未満と20歳以上で手首につけるリストバンドの色を変えていた。学生は、食事が美味しかったことにも喜んでいた。
会場には常に笑い声
正直、筆者はキャリ研の存在を初めて知った時、どうにもピンとこなかった。「せっかくの大学生活、就活やキャリアに目を向けるよりも、もっと楽しいことがあるのでは?」。こんな疑問を抱いた。
しかし、メンバーたちは業界研究や財務諸表講座なども楽しみながら実施しているという。そして、時にバーベキューやドライブ、旅行などにも有志で行っていると聞いた。真面目一辺倒のサークルではないようだ。そして何より、この日の飲み会の雰囲気は良く、会場には常時、笑い声が響いていた。
彼ら彼女たちが、どういうキャリアを歩んでいくのか。ひょっとしたら数年後、社会人として一皮むけた姿を取材する機会を持てるかもしれない。
現場でキャリアを重ねることにしている筆者は、後輩たちとのそうした再会を願っている。