「あつまれ どうぶつの森」尽きない新発見 放置2か月後の衝撃【名作レビュー】

徳田要太
公開: 2020-10-02

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「どうぶつの森」シリーズ最新作、あつまれどうぶつの森がNintendo Switch用ソフトとして発売中だ。国内の総出荷数は715万本で、日本ゲーム史上歴代1位を記録している(2020年9月現在)。「どう森」シリーズをDS版の「おいでよ どうぶつの森」(2005)からプレイしてきた筆者にとっては、まるで自分ごとのように嬉しい記録だ。そんな前人未踏の大ヒットを飛ばした「あつもり」の魅力を見ていこう。


シリーズのおさらいと魅力

史上1位と聞いて「そんなに売れたのか」と驚かれた方もいるかもしれない。実際、「国民的」とも言える人気ぶりであるが、やはりそう呼ぶにふさわしい魅力を備えている作品だと思う。今回はその魅力を紹介するにあたり、まずは「どうぶつの森」というゲームがどのような作品だったのか、振り返ってみよう。

「どうぶつの森」と言えば、可愛らしいどうぶつたちが住む「村」や「島」で悠々自適な生活を疑似体験できるゲームである。一人ひとり口調や好みが違うどうぶつたちは、ゲーム内の世界を自由に移動し、釣りをしたり、歌を歌ったり、走り回ったりしている。彼ら/彼女らと触れ合い、そこで生まれる経済活動に参加することで、たしかにそこに生きている生命とコミュニケーションを取っているような気にさせてくれる。

 ここで言う「経済活動」とは、大体はたぬきを擬人化したキャラクター、たぬきちの興した事業のことを指す。たぬきちは家具を販売する「たぬき商店」、主人公のマイホームを建ててくれる不動産業、「村」や「島」のインフラを整備する公共事業などを担当している。ちなみに不動産業者として主人公に押し付けてくるローンの金額は(実社会に換算すると)法外なもので、ユーザーからは「悪徳たぬき」だの「鬼畜たぬき」だのと(親しみを込めて)呼ばれている。

 今作のたぬきちは主人公たちに「無人島移住パッケージ」なるものを提供してくれる。今作は家具や道具を自らの手で作ること(=DIY)で生活を豊かにさせていく、「無人島での自力の生活」がコンセプトだ。初めのうちはテントでしか暮らせなかったのが、家具を作り家を増築したり、島に移住者を呼び込んだりすることで、少しづつ島を開拓していく。まるで一つの文明を0から作り出していくかのようだ。

 無人島が舞台となるのはシリーズ初のことだが、その中でも今作で特に画期的だったところは、なんと言っても「島クリエイター」と呼ばれるシステムだろう。これを使えば、島の地形をワンボタンで自由に作り変えることができる。道路を整備することはもちろん、川を引いたり、高台を作ったり、その気になれば家のすぐ隣に滝を流すことだってできる。

さらに、これまで期待の声が上がりながらも恐らく容量の関係で実装不可能だった、家具を屋外にも設置できる機能がついに採用された。過去作では屋内の模様替え、「公共事業」という形での土地開発にとどまっていたことに比べると、プレイヤーの活動の選択肢が爆発的に広がっていることがわかるだろう。

 ちなみに筆者は木目調の床を張った地面に学習机や椅子を置いて学校の教室に見立てたり、真っ白な床に人体模型や身長測定器を置いて保健室に見立てたりして楽しんでいた。

スイッチでさらに「マイペース」に

このように今作はNintendo Switchで登場したことで、過去最高ボリュームでの、スローライフシミュレーションが可能になったわけだ。

 過去最高ボリュームと言えば、「博物館」のことも忘れてはならない。本シリーズでは、「村」や「島」で捕まえた魚や虫、発掘した化石などを博物館に寄贈・展示できることが恒例となっている。

 今作でもこのシステムは健在なのだが、その作り込みようといったら桁違いのボリュームだ。単に展示を行うだけではなく、博物館をレジャー施設として楽しめるように緻密な設計がなされている。例えば海洋生物を展示する場所では、現実の水族館でもよく見られるような、周囲360度の壁すべてが水槽になっている展示がなされていたり、ガラスカバーの有無で既に絶滅した生物の化石が見分けやすくなっていたり、生息環境や地質年代ごとに展示場所が変わっていたり、実際の博物館と比べても遜色ないほどの工夫がなされている。Nintendo Switchのスクリーンショット機能を使えば、簡単に「映える」画像を作ることも可能だ。

 Nintendo Switchの機能を生かした楽しみ方は他にもあり、特にゲーム機本体を持ち運びできるようになったことが大きい。これまで見てきたように、今作は過去の据え置き器と比べても圧倒的なボリュームを誇る作品でありながら、それを携帯ゲーム機としても楽しめる。移動中にカブ価をチェック(※)したり、ゲーム機本体の起動が容易になったために、スキマ時間に15分程度のプレイを1日に繰り返したりというようなプレイスタイルが可能になった(※毎日価格が変動する野菜のカブを購入することで、簡単な資産運用を楽しめる)。

 オートセーブ機能も実装されたので、多少きりの悪い場面でも安心してプレイを中断することができる。

 ゲーム内でマイペースなスローライフを疑似体験できることに加えて、ゲームをいつどこで起動するか、どれぐらいで終了するかの判断までをもマイペースに行えるようになったわけだ。

 ちなみに前作までは、数十秒程度かかるセーブをきちんと行わずにゲームを終了した場合にはペナルティが発生していた。リセットさんと呼ばれるモグラのキャラクターが現れ、ゲームの起動時に長い(数分程度かかる)説教を食らう羽目になる。

 しかし今作ではオートセーブ機能が実装されたことで、必然的にリセットさんは「リストラ」されることとなった。ファンからはある意味愛され、筆者もお気に入りのキャラクターであったが、正直いない方が快適にプレイできるキャラクターではあると(申し訳ないことに)思わざるを得ない。

飽きたからこそ、心に響く演出

 さて、ここまで快適かつマイペースにプレイできるゲームとなると、プレイしたてのころは新鮮な気持ちで癒されていたとしても、そのうち飽きてしまう人もいるだろう。実際、筆者も途中で飽きて2カ月ほど放置した経験がある。

 しかし途中で飽きてしまったとしても、いや、飽きてプレイを中断してしまったからこそ体験できる演出が、今作には用意されている。

 実はどうぶつたちは、プレイヤーがどれくらいの期間ゲームをプレイしていなかったのかを覚えている。久しぶりに島に訪れると、「久しぶり!」と声をかけてくれたり、プレイヤー(主人公)のことを心配してくれるような会話をしてくれたりする。ちょうど帰省したしたときに、たまたま旧友と出会えたときのような懐かしさや安心感を与えてくれるのだ。

 もう一つ筆者が驚いたのは、「おとしもの」についてだ。今作では、島の住人が落としたアイテムを「おとしもの」として拾い、持ち主に届けることができる。

 ところが筆者はこの「おとしもの」を拾った状態で2カ月間ゲームを放置してしまった(持ち主には申し訳ないと思っている)。そして久しぶりにゲームをプレイしてみると、このアイテムの表示が「おとしもの」から「なんだっけ?」に変わっていた。実際に筆者が、このアイテムを拾った事実を完全に忘れていたことを指摘するかのように。

 「やられたな」と思った。島の住人たち全員に話しかけても誰も「おとしもの」のことを話題に出さないし、恐らく忘れてしまったか、失くしたものと思い込んでいるのだろう。実際は「おとしもの」を拾ってから1日でも立つと「なんだっけ?」に変わるらしいが、そのことを知らなかった当時の筆者は、スマホを落として画面にヒビを入れてしまったときと同じくらい、取り返しのつかないことをしてしまったことへの後悔の気持ちでいっぱいだった。

 今作にはこのように時間差を利用した演出があったり、不定期に大型のアップデートがなされたりして、長い間プレイヤーを楽しませてくれる工夫がたくさんある。

 初回の大型アップデートでは、「素潜り」機能が追加された。海を泳ぎ、貝や海藻などの海洋生物を捕獲できるのだ。素潜りができるようになったのはシリーズ初のことで、正直泳いでいるだけで楽しいし、友人と通信すればシンクロナイズドスイミングをまねたりして遊ぶこともできる。

 筆者のように飽きっぽい人間でもアップデートがあればその度に「やってみようかな」と思えるし、そのときには「おとしもの」が失われてしまうような、プレイヤーの心に強烈な爪痕を残す体験ができるかもしれない。

 久しぶりに戻ってくると、プレイヤーと同じだけの時間を過ごして変化している島が待っている。変化はしているけれど、誰もがプレイヤーのことを忘れず、声をかけてくれる。「ゲームをプレイする」というよりは、「ゲーム世界に遊びに行く」という感覚に近いかもしれない。毎日この世界に訪れて住人として生きるのもいいし、「第二の故郷」として時々帰ってくるような場所にしてもいい。

 その世界の中では思う存分スローライフを味わえるし、いつでも現実に戻ることができる、二重・三重の意味でマイペースに楽しめるゲーム、それが「あつまれ どうぶつの森」なのだ。

おすすめの名作
  • 任天堂
  • あつまれ どうぶつの森

  • 税込み5,673円
  • 子どもも大人も楽しく遊べる人気ソフト

  • 大人から子どもまでハマル人が続出する「どうぶつの森」の最新作です。始めればすぐに、動物たちとの出会いや島の生活に夢中に。世代を問わず一度は遊んでみてほしいソフトです。

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