Culture

虫って美味!背筋がゾワっと、だが旨いレストラン『ANTCICADA』

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虫の何が“ダメ”なんだろう??脚?腹?触覚?目?

改めて彼らの事を思い浮かべてみると・・ゾワっとする。
互い違いに動く2本の触覚と、大きいのに全く動かぬ目、何か汁が飛び出してきそうなパンパンに膨れた腹、イガイガがついてる6本の脚。全部苦手だ。

しかし、虫がダメな私でも『ANTCICADA(アントシカダ)』で過ごした3時間は、虫を愛でることができた。そして、リスペクトを持って虫を食すことまでできた。

それは、昆虫食のオーシャンズ6に出会えたからだった。

はじまりはムシの日

緊急事態宣言が開けて間もない6月4日・虫の日に、コオロギビールやコオロギラーメンなどを商品化した団体『ANTCICADA』が、日本橋馬喰町に待望の昆虫食に特化したレストランをオープンした。

さまざまな著名人から開店祝花が届いていた。国内外問わず注目が集まっている

ロゴマークのAの右側にあしらわれたのは、店を代表するコオロギの脚かと思いきや、クワガタの脚だそう。代表の篠原氏みずから一番Aに合う脚を熟考し、選んだそう。

しかも、メニューに印字されている文字のほとんどが、篠原氏が考案したオリジナルの虫フォントだという。虫に関するこだわりが、店内の随所に見られる。

昆虫食のオーシャンズ6

“世間が持つ虫に対するネガティブな印象を変えたい”

という、篠原代表の想いに共感した4名のメンバーが、多方面から集結。
食を求めて40ケ国以上を旅した元銀行マン、日本酒ベンチャーの商品開発にも携わる発酵家、農業・漁業・林業を経験した屈強な女性など、経歴とスキルの異なるの6名(最年長で28歳、最年少で24歳という若いメンバー)で運営している。

しかも、彼らは共同生活しながら仕事をしているそう。だから、チームの関係性はとても密の様子。取材に訪れた時も、代表が誰かわからなかったぐらい、関係性がラフで密。

クモの味はカニの味。食の価値観を変えるメニューたち

「お手本がない世界だから、とりあえず食べてみることから始めます。」
2つ星フレンチやデンマーク留学で経験を積んだシェフ、白鳥さんの創作昆虫食は食べてみることから始まる。そもそも、昆虫を食べた経験がなかったそう。篠原氏らと共同生活する家で見つけたクモを、茹でて食べたのが白鳥さんの昆虫食の始まり。

「初めてのクモは、カニの味がしました。そして、命の味を感じました。それから、虫に対する価値観が変わりました。家にクモが出ても、ゴキブリが出ても殺せなくなりました。命の大切さを感じるのと同時に、野菜を生育させているのと同等の感覚ですかね。」

白鳥さんの加入により、「コオロギラーメン」だけじゃなく「地球を味わうコース料理」が生まれた。コースのコンセプトは、虫やジビエ、野草、外来生物など、一般的に日の目を見ない食材を輝かせる創作昆虫食。

コースメニュー:フェモラータオオモモブトハムシ

ツル科のクズの茎に寄生するハムシを乾燥させ、チュルッと食べられる杏仁に。

コースメニュー:清流〜ざざ虫、そら豆、ミント

コースメニュー:イナゴ醤で食べる鹿肉

「虫を粉末にしたりして存在を消そうとするのはなく、ゲテモノのように姿をそのまま残すわけでもなく、オブラートに包んで食べやすくしてあげる事が大事だと思ってます。食べに来て下さったお客様に、豚や鳥・牛や魚介の並びに『虫』と言う選択肢を持ってもらえるような料理を目指してます。」

ちなみに、最高品質の虫は意外にも原価が高く、白鳥シェフの悩みどころでもあるそう。1キロあたりの値段は、高級和牛レベルなのだとか。驚愕。

毛虫は桜餅の味。誰にも言い出せなかった学生時代

ANTCICADA創業者の篠原祐太さんに、話を聞けた。

ーー篠原さんにとって、昆虫とはどう言う存在なんでしょうか?
篠原:昆虫とは自分ですかね。これまでいろんな虫を食べてきたなと思ってます。いろんな体験もさせてもらった。
桜の木にいる毛虫が桜餅のような味がしたのも、桜の葉を食べているから。僕は虫をたくさん食べてきて、喜びも悲しみも、不味い、という衝撃だったり、さまざまな体験を虫から享受してきた。だから僕は、昆虫に形作られてきたなと思います。

ーー昆虫を食べるきっかけは?
篠原:家の前が山だったので、物心ついた時から虫が好きで、虫を食べてました。そこに明快な理由はありませんでした。そこから味が複雑で面白いと思いました。印象的だったのは、桜の木についてる毛虫が、桜餅みたいでめちゃくちゃ美味しい。

ーー昆虫を食べることに対して、周囲の反応はどうでしたか?
篠原:家族にも内緒にしていました。虫を食べるのが、よくない事だという認識が幼心ながらありました。ずっと内緒にしてきてたんですが、大学の時に転機が訪れました。自分のやりたいことをやりたいようにやっている大学の先輩の生き方などを見て、憧れました。そう言う生き方に憧れていました。

その矢先に、FAOという国連の機関が「今後人口が増えていく中で、昆虫が食糧難の救世主になる」という内容のレポートを出したんです。それ以降世界的に、昆虫食のレポートなど増えていきました。

自分が良くないと思ってやっていたことに、そんなに可能性があるのかと驚きました。国連が、自分を支えてくれているようでした。環境が変化したので、大学で初めて昆虫を食べることをカミングアウトしました。

当然、ネガティブなリアクションも多かったです。その中で、「気持ち悪い」で終わらせてしまう ある種のもどかしさを感じました。それと同時に、一部の人が興味を持ってくださりました。

虫の料理を食べてもらって喜んでもらう瞬間がとても嬉しかったんです。そこで気づきました。昆虫を食べる事は多くの人にとってはネガティブなものでも、やり方次第では印象を変えていけるんじゃないかと思いました。

ーー昨今の昆虫食ブームについてはどう思われてますか?
篠原:昨今の注目のされ方は「資源にも限りがあるから虫を食べよう」とか、「牛とか豚を食べたいけど、食べられなくなるかもしれないから、代替物として虫を食べる時代が来る」という、どこか消去法のような代替物のような捉えられ方をしている節があるような気がするんですよね。それだと、とても虫に失礼じゃないですか。そんなに嫌々食べるのであれば、食べずに死んでくれと思っていて、生き物を命を奪って食べるのだから、ちゃんと虫にもリスペクトの心を持ってほしいんです。

栄養価が高いから昆虫を食べるも良いんですけど、環境に優しいから食べるのも重要なんですけど、それって虫の魅力をちゃんとわかってないですよね。虫ってもっと魅力的じゃない?と思います。だから、我々は日の目を見ない食材を輝かせられるようなレストランにしていきたいと思ってます。

                 ・ ・ ・


熱い。ANTICICADAには熱い想いがあった。
興味本意だけで昆虫食を取材しに行ったが、取材終わりにはちゃんと食の価値観が変わっていた 。

記事では割愛しているが、コオロギラーメンは本当に美味しかった。コース料理は取材時に食すことはできなかったが、白鳥さんの作るコース料理にも当然期待ができる。

あなたも無用な先入観を一度捨て、食の可能性を拡げに馬喰町まで来てみては?

CREDIT
Director :Masaaki.Ishino
Sub Camera :町田知陽
Lighting :高野真吾
SNS :にしまり

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