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2017年9月16日(土)から18日(月)までの3日間、六本木のレストラン「RANDY」でオープンした「注文をまちがえる料理店」は、その名の通り、ときどき、注文した料理や配膳を間違えてしまうレストラン。
それなのに、客は怒るどころか「ま、いいか」と寛容に受け止め、店内には笑顔が溢れる。そんな不思議なレストランには、一体どんな秘密があるのだろうか?
笑顔が溢れる秘密はスタッフにあり
ホールにあふれる笑顔。実はこの料理店で働くホールスタッフは、認知症を抱えている。意図せず注文を間違えてしまうことを、客側も「ま、いいか」と寛容に受け流すことで、認知症の理解を広め、認知症の方が自分らしく生きることを目的としたイベントなのだ。
クラウドファンディングで目標を達成
2017年6月にプレオープンした「注文をまちがえる料理店」は、その素晴らしいアイデアから国内外のメディアの注目を浴びた。
その反響を受けて、第2回のオープンを9月21日の世界アルツハイマーデーに合わせて設定。クラウドファンディングサービス「Readyfor」で募集を開始すると、またたく間に支援者が募り、見事プロジェクトが成立した。
集まった資金は、「食器」や「ブックレット」の制作に充てられた。「自分の街でも実施したい!」という国内外からの要望に応えるため、貸出し可能な公式グッズなのだそう。
このユニークなイベントは、テレビディレクター小国士朗氏が、番組制作をしていく中で生まれたアイデアだという。発起人である小国氏にその経緯と今後の展望を聞いた。
きっかけは取材中のある気づき
小国:2012年に和田行男さん(「注文をまちがえる料理店」実行委員長)が運営する認知症の介護施設を取材していました。
和田さんが運営する施設は、認知症の方でも自分らしく生活することをモットーにしているグループホームです。入居者は自分でできることは自分でやる。だから私たちも、取材中におじいさん、おばあさんが作る料理をごちそうになることがありました。
ある日、献立は「ハンバーグ」なのに、出てきたのは「餃子」だったんです。その時、「今日はハンバーグじゃなかったでしたっけ?」と言おうとしたのですが、思いとどまりました。「ハンバーグ」が「餃子」になってもおいしければ良いのではないか?と。
そのときにパッと頭に浮かんだフレーズが「注文をまちがえる料理店」でした。
小国:プレオープンのアンケートでは、実に「60%」のお客様になんらかのミスがあった。名前こそ「注文をまちがえる」としていますが、僕たちは、意図して間違えることを目的としていない。なので、間違えないように環境を整えました。
今回は、オペレーションやサポートの体制を見直すことで、結果として間違いを「25%」にまで減少させることができました。認知症を抱えていてもサポート体制をしっかりと整えれば、きちんとオーダーがとれてお料理を持っていけるようにできるんですね。でも、間違いが減ったら「注文をまちがえる料理店」から「注文をまちがえない料理店」になってしまうんですけど、それも「ま、いいか」と。
小国:あまりそういうことは考えてないですね(笑)。大切にしているのは「ワクワク」感です。とにかくこのアイデアって面白いよね、ワクワクするよね、という好奇心が先に来ていて、その結果として、世の中が変わっていったら良いなと思っています。
認知症を抱えていても、普通の接客や生活ができる。そんな当たり前のことを、世の中の多くの人々に気づかせてくれた「注文をまちがえる料理店」は、意外にもふとしたアイデアを具体化させたものだった。
こうした日常のふとした気づきと、それを実現するアクションが、誰もが暮らしやすい社会を築いていく仕組みづくりにつながっていくのかもしれない。