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スマホ1つで車が呼べる中国版Uber「Didi」の人気の秘密は?【深セン特集】

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全3回(7月29日30日、31日18:00配信)でお送りしている、世界の最先端の街「深セン」特集。最終回となる第3回は、中国版Uber「Didi」です。


中国の都市部では、人口の増加に交通網の整備が追いつかず、自転車やバス、地下鉄などの方法に加えて、スマートフォン・アプリで自動車を呼んで目的地まで乗せていってもらう「配車サービス」が人気です。

このようなサービスはアメリカ発のUberが先駆けで、かつては中国にも展開していましたが、2016年に中国市場からの撤退を宣言。その際に、Uberが競争に破れた相手として知られ、現在も中国の配車サービス市場を席巻しているのが、「Didi(滴滴出行)」です。

今回はこのDidiが人気の理由についてリポートします。

圧倒的な配車数で「どこでも乗れる」を実現




Uberが当初中国でサービスを展開していた際には、配車サービスに使用できる車両を5年以内の新しい車に限定し、一定の金額を超えるミドルクラス以上の車でなければならい、といった制限を設けていました。

一方で、Didiはそのような制限をなくすことで「より多くの人がDidiでサービスを提供する側になれる」ことを宣言。安全性や高級志向といった価値を、ある程度犠牲にする一方で、配車数を増やすことで都市部ならどこでも乗れる、というポジションを築き、結果的にUberを圧倒し、中国市場からの撤退にまで追い込んだのです。

どうやって使う?

今回、取材で訪れた中国広東省の深セン市は、急速な都市化で知られる場所です。そのため、市内では地下鉄の路線が毎年のように増え、アプリで借りられる自転車などが人気を博すなど、新しい交通手段に対する需要がひときわ旺盛な場所です。

そのため、他の都市部と同様に配車サービスが人気。今回は、平日の夜、ホテルからホテルへの移動という状況で、実際にDidiを利用してみることにしました。

配車サービスを利用するにはまず、Didiのアプリを開き、行き先や利用したい車種を指定します。そうすると、最寄りの車が表示され、到着時間がわかるようになっています。

実は、この「到着までの時間」が配車サービスの肝で、あまりにもこの時間が遅いとユーザーは、「そんなに時間がかかるなら、流しのタクシーを探したほうが早そうだ」とか、「別のアプリで手配したほうが早いかもしれないから、そっちを試してみよう」となってしまいます。

そのため、できるだけ多くのドライバーと車を確保して、できるだけ多くの場所ですぐにユーザーの元に「配車」することが利用者の獲得の重要な要素となっているのです。

Didiが上手だったと言われているのはこの部分で、高級車でもないし新車でもないけど、とにかく「呼んだらすぐ来る」という配車サービスの肝の部分を数の力で実現することで、定番の地位を築いています。

実際に、私が使用した際も、5分ほどでDidiの車が到着しました。深センのビジネス街という、比較的利用者多い地域であったこともあるかもしれませんが、ちょうと地元の人達が飲んで帰宅するくらいの時間帯、言わば「配車サービスのピークタイム」での利用にもかかわらず、5分ほどで車が到着。十分に実用性と便利さが感じられる素早さでした。

私たちが乗った車の運転手は、「日本車だよ」とうれしそうに語る気さくな人物。売り上げを聞いたところ「1日で300元(約5,000円)」とのことでした。稼ぎ時は朝の通勤時間帯と夜の帰宅時間帯で「この仕事は気に入っている」と話していました。

安全なのか?


Didiはスマートフォンアプリでドライバー登録をすることで「配車サービス」を提供する側になれ、競合に比べての条件が緩いのが特徴です。そのため、車種やクラスはまちまちですし、タクシー会社が顧客接点のひとつとして利用している場合もあるので、本物のタクシーが配車されてくることすらあります。

見た目もバラバラですし、看板やステッカーが着いているわけでもないので、「本当にこの車かな?」と戸惑うこともあります。また、仕組み上、アプリの登録者とドライバー、あるいは車が本当に同じかは特定できないため、登録済みドライバーのスマートフォンさえ手に入れればなりすますことも不可能ではありません。そのため、乗客事件に巻き込まれたという報道もあります。

しかし、既に現地で暮らす人たちの移動手段として定着しつつあるため、いまさら法律で全面的に禁止するという流れは、なさそう。

現地に暮らす日本人(30代・男性)は「通勤時やちょっとした移動に利用します」「一人でのるのが怖いと思ったことはありませんね」と話していました。

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急速に都市化が進む深センでタクシー不足解消の一端を担うDidiは、これからも現地の人たちに移動手段として活躍しそうです。

(取材・記事:楯雅平、取材協力:川ノ上和文)

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