住所非公開、完全招待制。
まるで一流シェフが独立して構えたレストランのような響き。寿司や焼き肉が出てくる場所かと思いきや、出てくる料理はカレー。
ここは日本初の会員制カレー屋“6curryKITCHEN”。
コンセプトは、EXPERIENCE THE MIX.。ただ、おいしいカレーを食べて帰る場所ではなく、カレーをきっかけに集まった「気の合う仲間」と会えるコミュニティにもなっているのだ。
仕事仲間でもない、昔からの友達でもない、ただ隣りに座ったもの同士、気軽に自分の話ができて、ビジネスや趣味、未来の話をつまみにおいしい料理とお酒が飲める――そんなカレー屋が、東京・恵比寿にある。
今回bouncyは、飲食店の未来の形とも言えるこのカレー好きコミュニティーにお邪魔してきた。
カレーを食べるときは、カウンターに座るのがお店のルール
6curryKITCHENの内装は、U字のカウンターを中心に、スタンディングの机が数脚配置されたデザイン。
お店の扉を開ければ、このU字のカウンターが目の前にあり、入った瞬間にお店の雰囲気がわかる開放感のある空間になっている。
そして、カレーを食べるときは、このカウンターに座るのがお店のルール。
キッチンの至るところにEXPERIENCE THE MIX.が起こるように工夫が施されている。「一つのものをみんなで囲む」体験になるU字型のカウンター。
中にはMIXスタッフと呼ばれる店員さんがいて、隣同士に座った人から会話が生まれるように、話を振ってくれたり、カウンター越しに雑談したりと、自分から話しかけるのが苦手な人でも自然とコミュニケーションを楽しめるようになっている。
そもそもなんでカレーで会員制?
そういった場ではあるのだが、そもそもなぜカレーなのか?アジア・中東・ヨーロッパ、数えればきりが無いほどの料理が存在している世の中で、カレーを選んだ理由は?
6curryのブランドデザイナーのYOPPYさんとコミュニティクリエイターの廣瀬彩さんに話を聞いた。
6curryを始めたきっかけは何ですか?
――「カレーで新しいことをしたい人・カレーが好きな人集まれ!」と社長がSNSに書いたことが6curryの始まりです。集まったメンバーで「新しいカレーを作ろう!」と、6curryLABを結成。そこでカップカレーを開発しました。
カップカレーは、忙しい女性でも食べやすいカレーがコンセプト。カロリーやバランス・おいしさを考慮して、スパイスを調合。上半分もサラダにして野菜がたくさんとれるカレーになっています。
このカップカレーをUber Eatsで販売してたのですが「カレーをたくさん作って届ける」のではなく、「カレーをみんなで混ざって開発したプロセス」に、価値を感じました。
そこで、6curryのキッチンを会員限定に解放。なので私たちはレストラン、ではなく6curry「KITCHEN」と名乗っています。
キッチンオープン時に掲げたコンセプトが、EXPERIENCE THE MIX.。
ただカレーを食べるための場所ではなく、コミュニティ。カレーを食べながら、会員さんもスタッフも、カウンターを中心につながり・混ざる場所です。
そもそもなぜカレーなのでしょうか
――カレーは大抵の人が好きな料理だと思っていて、カレーにまつわる思い出がある方が多いんです。
キャンプで作ったり、お気に入りのカレー屋さんがあったりとか、カレーの話をすると、みんな思い出の話をしてくれる。そういう特別な料理だと思ってます。
もう1つが、カレーの定義。カレーの定義は「複数の調味料を混ぜたもの」。その定義でいうと、麻婆豆腐もカレーになります!何にかけても、何を入れてもおいしくなるカレーは、コラボレーションの土台にちょうど良い。
いろいろな人の想いやアイディア、食材を混ぜて、コラボレーションを引き起こす料理として最適だと思っています。
なるほど。実際にどんなコラボレーションが生まれたんでしょうか
――カウンターで隣同士になって仲良くなった人たちが一緒にビジネスを始めたり、発注して受注してみたいな形でつながるってことも、たくさん起こっています。
会員になると、キッチンで好きに企画を立てることができます。会員さんのなかでやりたいことがあったり、自己紹介したいという人が、1日キッチンを使って、好きにイベントを作ることもできるんです。
一日店長になれるってことですか?
――はい、会員さんは一日店長としてキッチンに立っていただけます。食材を提供してくださる店長の場合には、その食材を使ってオリジナルのカレーを作ることも。
カレーだけではなく、カレーにあうドリンクをコラボで出すこともあります。過去に一日店長をしてくださった梅農家さんの梅干しサワーや、お茶屋さんとコラボしたほうじ茶梅酒も大好評で、そのまま6curryのメニューになりました。
コラボした方の商品が美味しかったり良いものだったりすると、イベントの時にキッチンで買うだけでなく、後からネットで買ったりSNSで「すごくよかった」と拡散してくれることも。
やりかたは、本当に自由。どんなアイディアも、どんな想いもカレーがあると上手に混ざることができる。そこが面白いと思っています。
今後も恵比寿を拠点にしていくのでしょうか
――6curryの混ざる体験をどんどん拡張していきたいと思っていて、これから10月中旬に渋谷店をオープンする予定です。
そのあとも拠点を増やしていきたいのですが、もしかしたらリアルな場所だけでなくオンライン上で混ざる体験ができるかもしれません。混ざる体験は、キッチンの拠点の中だけでなく、世界中に広げていく取り組みができたらいいなと思っています。
会員と一緒につくるオリジナリティ溢れるカレー
6curryは、コミュニケーションを重視したコミュニティではあるが、カレーへのこだわりもなかなか。
6curryのカレープロデューサーを務めるのは、アマチュアカレーグランプリで優勝した新井一平氏。
ルゥや小麦粉は一切使わず、スパイスからカレーを作っており、たとえば、味噌の蔵元の一日店長に合わせて作った味噌キーマ、秋刀魚を使った季節のカレー、会員さんがおすそわけしてくれた、釣れたての魚を入れたカレーなど、混ざり合うコミュニティーならではの、多種多様なカレーづくりに挑戦し続けている。
取材した日は、山椒キーマカレー、グリーンカレー、THEチキンカレーが、お鍋の中で煮込まれていた。山椒キーマカレーが、これまた絶品。
渋谷にもコミュニティを構築中
現在、6curryは渋谷店の初代会員をクラウドファンディングサイト
Makuakeで募集中。
カレーが毎日一杯無料の初代渋谷[夜]会員や、ランチドリンクが飲み放題の初代渋谷[昼]会員などのリターンを用意している。
招待がなくとも会員になれるのはMakuakeのみ。
昼にふらっと、夜にじっくり、カレーとコミュニケーションを味わえる場所になりそうだ。
会員募集は、9月19日の18:00まで。
取材に訪れたのは平日の火曜日。駅チカとは言えない立地だったが、人の流れが途切れることはなく、閉店までかなりの賑わいだった。
それだけ、会員にとって魅力的なコミュニティーなのだろう。
bouncyディレクター
Marina Maekawa
旅行しながら、ビデオ作るのが好き。特にLAが好き。