緑茶の健康効果、伊藤園の研究者に聞く 病気や悩みに…おすすめの飲み方は?

信原 一貴
公開: 2020-01-08

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 暮らしに身近な緑茶は、多くの人が「飲むと体にいい」と認識していると思います。ただ、どんな病気や悩みに効果があるのか、ウェブなどではさまざまな情報が飛び交い、中には根拠に乏しいものも。正しい知識を持って緑茶を楽しむため、今回は最大手メーカー伊藤園・中央研究所の衣笠仁所長に話をうかがい、緑茶の健康効果を科学的根拠をもとに解説してもらいました。


緑茶に含まれる健康成分は?

ーーまず、緑茶にはどのような健康成分が含まれているのでしょうか?

 古来から緑茶は薬効があると言われてきましたが、その科学的な性質は長年研究され、今も新たな発見が続いています。

 主要成分の茶カテキンは名前がよく知られていますが、実は茶葉には4種類含まれています。

ーー4種類も!

 それだけではありません。以前は茶葉からお湯で茶を入れると「カテキンが減る」と考えられていたんですね。でも、それは誤解でした。研究が進み、減ったと思っていた茶カテキンは「熱異性体」に変化していることが分かりました。熱異性体を含めると緑茶には8種類もの茶カテキンが含まれ、総量は茶葉と大きく変わりません。

ーーカテキンと言っても色々あるのですね。

 8種類は化学構造で「遊離型カテキン」と「ガレート型カテキン」に分けられます。このうち「ガレート型カテキン」は特に抗菌性や抗酸化性が強いため、注目されている成分です。

 このほか緑茶にはアミノ酸「テアニン」やビタミンCのほか、カフェイン、カリウム、タンニンなど様々な成分が含まれています。

緑茶の健康効果①)コレステロールの吸収抑制

ーーまず体の悩みとして多い、コレステロールにお茶が及ぼす効果を教えてください。

 コレステロールは細胞膜の材料にもなる人体に重要なものです。しかし食べすぎなどで摂りすぎると血管内にコレステロールがたまり、心臓病や脳梗塞といった病気の原因になります。

ーーそこでお茶がどうかかわってくるのですか?
 
 ガレート型カテキンには、体内で余ったコレステロールの吸収を抑える効果があります。

 仕組みも分かってきました。コレステロールは胆のうから出る胆汁で溶かされ、「胆汁酸ミセル」という形になって吸収されます。ガレート型カテキンはここに作用して、胆汁酸ミセルからコレステロールを追い出してしまいます。

ーー追い出されたコレステロールはどうなるのですか?

 体に吸収できる形になっていませんから、腸を通って体外に排出されます。

 東北大の池田郁男教授との共同研究では、成人男女に12週間、ガレート型カテキンを197.4mg配合した飲料を1日2本飲んでもらったところ、コレステロール値の有意な低下が認められました。日常的に緑茶を飲むことで効果が期待できることが示されています。

緑茶の健康効果②)ダイエット効果の期待も

ーー体の悩みとしては、緑茶のダイエット効果への関心も高いと思います。

 とりすぎた脂肪の吸収を抑え、体に脂肪がつきにくくする効果が期待できます。

 脂肪は「膵(すい)リパーゼ」と呼ばれる消化酵素で分解され始め、体内で吸収されます。ガレート型カテキンは、この働きを阻害して脂肪の分解を抑え、体内への吸収を抑える効果が確認されています。緑茶を飲むと、食後の血中中性脂肪の上昇を抑える効果も分かっています。

ーーたくさん飲んで、吸収が抑えられすぎることはありませんか?

 体内であまった分への作用ですので、緑茶を飲みすぎて脂肪やコレステロール不足になるといったことはありません。人体に必要な量は吸収されます。

緑茶の健康効果③)インフルエンザを予防

ーー次に病気への予防効果をうかがいたいと思います。冬場に特に気になる、インフルエンザへの効果も分かっているとか。

 はい。緑茶でうがいをするほか、飲んでもインフルエンザの予防効果があることが確認されています。
 緑茶の健康成分による予防効果は、3つあると考えられています。

1)のどの細胞にインフルエンザウイルスが付着し細胞内に入るのを予防する。

2)インフルエンザウイルスが体内で増殖するのを抑える。

3)テアニンやビタミンCが体の免疫力を増強する。

 静岡県立大薬学部の山田浩教授などの研究によりますと、高校生のべ1100人に緑茶でうがいをしてもらうと、水道水でのうがいに比べてインフルエンザの発症が約30〜50%減少していました。

ーー緑茶うがいのほか、飲んでも予防効果はあるのですか?

 飲んだ場合の効果を、伊藤園と山田教授で共同研究しました。
 医療施設の職員197名に緑茶成分のカプセルを5か月間摂取してもらったところ、インフルエンザの発症率が4.1%に。摂取していない人の発症率は13.1%で、緑茶を日常的に摂取するとインフルエンザのリスクが下がる可能性が明らかになっています。

 のどの粘膜を乾燥させないよう、ちょっと濃い目の緑茶うがいをしたり、飲んだりすることでインフルエンザ予防効果が期待できます。

緑茶の健康効果④)花粉症の症状緩和

 花粉症の症状を抑える効果も分かってきています。お茶に多く含まれるカテキン類が、

・花粉症
・ハウスダスト(ホコリやダニ)などが原因の通年性アレルギー性鼻炎

 の諸症状を緩和する傾向が明らかになっています。

 日本薬科大学との共同研究では、比較的軽いスギ花粉症状の成人に6週間、カテキン類含有飲料(お茶の黄金桂)250mlを1日3本飲んでもらいました。すると、くしゃみや鼻水、目のかゆみなどの自覚症状が緩和され、薬の使用頻度も少なくなりました。

ーーどのタイミングで飲むのがいいのでしょうか。

 花粉が飛び始める3週間くらい前から、濃いめのお茶を1日に500㎖ほど継続的に飲むとよいでしょう。ただ、薬ではないので効く人と効かない人がいる点は注意が必要です。緑茶ならやぶきた、べにふうきなど、烏龍茶なら鉄観音、黄金桂などがおすすめです。

緑茶の健康効果⑤)口臭や虫歯対策

ーーお茶を飲むとすっきりする感覚がありますが、口臭や虫歯対策にはなるのでしょうか。

 口臭の主な原因はメチルメルカプタンという物質で、硫黄系の香りです。これを特にカテキンが吸着することが分かっています。試験では茶エキスを含む液体で口をすすぐと、メチルメルカプタンの検出量が抑制されていました。
 ニンニクやネギの臭い、魚の生臭さなども吸着できます。食事に緑茶を飲むと、すっとするのはカテキンの消臭効果です。

 虫歯予防の効果も、いろいろな研究がされています。
 虫歯ができるときは歯の表面にプラークと呼ばれる固まりがつきます。プラークの中に菌がいて増殖し、虫歯や歯周病になる。このプラークの形成を、カテキンが抑えることがわかっています。

緑茶の健康効果⑥)殺菌や美容、腸内環境改善にも期待

 ほかにも、さまざまな研究機関が緑茶の効果を調べています。次のような効果が期待できると指摘されています。

▼O157やボツリヌス菌への殺菌効果。テーブルをふくなどして感染予防

▼ビフィズス菌が増え、腸内環境を改善

▼紫外線障害から皮膚を守る美容・美肌効果。抗酸化や抗菌効果を期待し、チャエキスを配合した美容液や洗顔せっけんも登場。

▼血圧上昇や血糖値上昇の抑制作用

 伊藤園でも胃痛、食後の胃の膨満感、胃もたれが慢性的に起きる「機能性胃腸症」の症状改善に関する研究で、茶カテキンの有用性を示唆する結果を得ています。

 また、社会的問題になっている「認知症予防」に緑茶成分が役立てられないか研究を進めています。一部成果は発表していまして、 1日にお抹茶(薄茶)2杯分のテアニンやカテキンを摂取すると、加齢で低下していく認知機能を維持する可能性を示す結果が得られています。

誤った情報に注意を

ーーお茶の効果について、世の中で誤解されている点はありますか?

 そうですね……猛暑だった昨年夏には「熱中症のとき、お茶は脱水症状が進むので飲んではいけない」という誤解が一部で広まりました。お茶に含まれるカフェインに利尿作用があり、それで脱水症状が進むとは、様々な知見から考えにくいのです。

 確かに緑茶にはカフェインが含まれていますが、利尿作用が出るほどの量ではありません。水を飲んだ人と、緑茶を飲んだ人で、利尿効果に差はないと考えています。熱中症のときはとにかく水分をとらないといけないので、緑茶を飲んでいただいても問題ないものと考えています。

効果的な飲み方は?

ーー健康効果を得るため、緑茶のおすすめの飲み方はありますか?

 薬のような即効性はありませんので、継続的に飲むことが大切だと思います。

 また、花粉症やインフルエンザ予防には、少し濃いめの緑茶を使ったほうがいいでしょう。それをマイボトルの中に入れて飲むと、乾燥しているオフィスなどでは効果的です。カテキンの効果と、のどをうるおす効果の両方が得られます。

ーー緑茶は水出しで楽しむこともありますよね。

 水出しだと味がまた違い、続けて飲んでいく中での楽しみ方が広がります。

 良い茶葉を使い、10~20分かけてゆっくり水出しする。すると渋みがほぼ出ず、うまみ成分だけが出るので、出汁を飲んでいるような味わいになります。
 そこで使った茶殻に、次は熱いお湯をバーッと入れると今度は渋みのある味わいが楽しめます。違いがとても面白いです。
 最後に、茶殻にポン酢をちょっとかけて食べるとおいしいですよ。おつまみになって、栄養も全部とれる。
 ただ、やわらかい新芽を使った高級煎茶じゃないと固くておいしくありません。

ーー淹れ方による健康成分の違いはあるのですか?
 カテキンの中でも水に溶けやすいもの、溶けにくいものがあり、水出しだと若干成分が変わります。ただ、低温で淹れたお茶のカテキンは免疫力が上がる効果があるという研究結果もあり、お湯でも水出しでも健康効果への期待はできます。ペットボトルやティーバッグの緑茶商品も、カテキンやアミノ酸など主要成分はご家庭で淹れるお茶と違いはありません。

 ただ、よく「宵越しのお茶は飲むな」といいますが、急須で淹れたお茶を翌日以降に飲むのは好ましくありません。茶葉にカビがはえることもありますし、カテキンも酸化してしまいます。ペットボトルのお茶も残ったら冷蔵庫などに入れて、フタをしっかりしておくといいでしょう。

 またカフェインが含まれていますので、妊婦や小さいお子さんは薄めて飲んでいただくといいでしょう。

はちみつやレモン…飲み方アレンジも

ーーネット検索での情報ニーズを調べると、緑茶にはちみつやレモンを入れる飲み方も関心を呼んでいます。

 伊藤園でも、はちみつとレモンを使う「ハチミツ美人茶」などのレシピを公開しています。茶葉は良質な繊維なので、食品としても有用です。緑茶を粉末にした商品や抹茶なら、お菓子やスイーツに入れたりアイスクリームにかける楽しみ方もできます。

 またアレンジとしては、茶葉をフライパンで自分で焙じて、その場で淹れるととすごく香りがいいです。もらいものなどで時間がたってしまった緑茶でも、自家製ほうじ茶として全く違う味わいとよい香りが楽しめますよ。

 最後に残った茶殻はカテキンが残っているので、乾燥させると高い消臭効果があります。ストッキングに入れて靴箱の中に置くなど、ぜひ試してみてください。

まとめ

 伊藤園・中央研究所の衣笠仁所長に、緑茶の健康効果を科学的根拠をもとに紹介していただきました。
 普段何気なく飲んでいる緑茶ですが、想像以上に多彩な効果があり、話をうかがっていても驚きました。

 淹れ方を変えれば味わいも変わり、色々な楽しみ方ができるのも緑茶の特徴です。
 ぜひ今回の知識をもとに、楽しみながら健康増進を図ってみてください。


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