弁護士が教える交通安全グッズの選び方 事故予防から補償請求まで
交通事故に遭ってしまうと、けがの痛みや入院・通院での治療など、生活や仕事に大きな負担がかかります。場合によっては後遺症が残り、長く支障が続くこともあります。
こうしたリスクに備えておくことで、いざというときに相手へ補償を求める場面でも役立ちます。
そこでこの記事では、交通事故を予防するためのグッズや、事故後の備えとして有効なグッズについて取り上げます。近年の法改正で設置が義務化されたものも含め、交通事故案件に長年携わってきた弁護士の立場から解説します。
目次
1.交通安全グッズを活用する意義
交通事故は、誰にでも、いつでも起こり得るものです。車やバイクを運転する方はもちろん、普段運転しない方でも、歩行中や自転車に乗っているときに事故に巻き込まれる可能性があります。
事故のリスクを減らすには、交通ルールを守ることが基本です。それに加えて、万が一事故に遭った際に被害を最小限に抑え、被害に対する補償を加害者に求めるための適切な備えをしておくことが大切です。
そのための有効な対策として、交通安全グッズ・事故対策グッズがあります。これらのグッズを活用することで事故に遭う可能性を少しでも減らすとともに、仮に事故に遭っても、けがのリスクを減らしたり、けがが重症化するのを防いだりする効果が期待できます。
代表的な交通安全・事故対策グッズについて、どのような特徴があるのか、どのような場面で役立つのか、具体的に見ていきましょう。
2.代表的な交通安全・事故対策グッズのカテゴリ別解説
交通安全グッズと一口に言っても、利用する立場によって必要なものは異なります。ここでは、自動車を運転する場合と、歩行者や自転車・バイクに乗る場合の二つの視点から、代表的なグッズを紹介します。
自動車(四輪車)側
自動車を運転する人にとっては、事故の記録や予防に直結する装備が重要です。また、法的に設置が義務付けられているものがあります。日常的に車を利用する方は、これらを適切に備えることで事故リスクを減らし、万が一の際にも安心につながります。
2-1.ドライブレコーダー(ドラレコ)
(c)Getty Images
ドライブレコーダー(以下「ドラレコ」)は、近年急速に普及しており、事故時の映像を記録できる非常に有用なツールです。事故の状況を客観的に残せるだけでなく、近年厳罰化された「あおり運転」への対策としても効果を発揮します。
映像が記録されることにより証拠の価値は高く、保険会社との示談交渉や裁判での賠償請求に役立つだけでなく、刑事事件として警察に提出する際の重要な資料にもなります。
ただし、ドラレコを選ぶ際には注意も必要です。種類や性能によって映像の鮮明さは異なり、夜間や逆光の状況では事故の瞬間がうまく撮影できない場合があります。
また、録画できる容量や時間には上限があるため、その点も確認しておくことが大切です。実際に、交通事故に遭ったときの映像を記録したドラレコのデータを証拠として提出しようとしたところ、事故後に容量がいっぱいになったためデータが上書きされて消えてしまっていた、というようなケースもありました。ドラレコを購入・使用する際には、このような点も注意しましょう。
そのほか、本体価格に加えて車両への設置費用も必要です。
2-2.チャイルドシート・ジュニアシート
(c)Getty Images
チャイルドシートやジュニアシートは、乳幼児や児童を事故時の衝撃から保護するための補助具です。道路交通法では、6歳未満の幼児を乗車させる際には、病気など特別な事情がない限り装着を義務付けています(第71条の3第3項)。
自動車の標準的なシートベルトは乳幼児や児童の体格に合わず、安全に装着できません。チャイルドシートやジュニアシートは、シートベルトを乳幼児等の体格に合わせて正しく着用するために設計されており、シートを設置して身体をしっかりと固定することで、万が一の事故時の衝撃を緩和し、命を守ることにつながります。
ただし、それぞれの子どもの身長や体重などに合ったシートでなければ十分な安全効果が得られません。購入を検討する際は、子どもの体格に合っているか、国土交通省の安全基準を満たしているかといった点を確認しましょう。また、子どもの成長に伴いチャイルドシートからジュニアシートへの買い替えが必要になることも考えておきましょう。
快適性の観点からは、洗いやすく通気性の良い素材を選ぶことを考慮に入れても良いかもしれません。
2-3.その他の便利グッズ(後方視界補助ミラー、安全運転支援アプリやスマートデバイスなど)
運転をサポートしてくれる便利グッズを取り入れるのも有効です。たとえば、後退時の死角を減らすために後方確認用の補助ミラーを設置すれば、安全確認がしやすくなります。
また、安全運転を支援するアプリやスマートデバイスも増えています。歩行者や先行車両を検知したり、車線をはみ出したときにアラームで知らせてくれる後付けの機器もあり、事故の予防に役立ちます。
ただし、これらはあくまでも補助的なものです。過信せず、運転者自身が本来の注意義務を果たすことが前提となります。そのうえで、プラスアルファの安全対策として活用を検討するとよいでしょう。
歩行者・自転車・バイク(二輪車)側
歩行者や自転車・バイクの利用者にとっては「自分の存在を周囲に知らせること」や「衝撃から身を守ること」がポイントです。
反射材やライト、ヘルメットなどは事故防止の基本装備であり、法的に義務化されているものもあります。さらに、エアバッグ付きジャケットやプロテクターといった新しい防護具も登場しており、日常的な利用に応じて選ぶことが重要です。
2-4. 反射材・ライト類
(c)Getty Images
夜間や悪天候時は視認性が低下し、事故の危険が高まります。歩行中や自転車・バイクの運転時には、反射材やライトを使用して自分の存在を周囲から見えやすくすることが大切です。バイク利用者は、ヘッドライトやテールランプを常に良好な状態に保つよう、日常的なメンテナンスを欠かさないようにしましょう。
また、自転車利用者は自転車の備え付けのライトの電池切れなどが起きないよう普段から注意しましょう。自転車の反射材または尾灯の設置も道路交通法で義務づけられています(63条の9第2項、52条第1項)。
なお、自転車の無灯火は道路交通法違反となります。2026年4月からは自転車の「青切符」反則金制度が始まり、違反すると5000円の反則金が科されます。
2-5. ヘルメット・プロテクター
(c)Getty Images
バイクではヘルメットの着用が法律で義務付けられており、当然の装備といえます。一方、自転車でもヘルメットやプロテクターは有効で、事故時に頭部や身体への衝撃を吸収・緩和してくれる役割があります。
自転車利用者については、2023年4月から道路交通法でヘルメットの着用が「努力義務」とされました(63条の11第1項)。正しく着用することで、転倒や衝突による衝撃を大幅に軽減し、致死率や重症率を下げる効果が確認されています。
ただし、耐久性や安全性を重視すると持ち運びが不便になるなど、携帯性とのバランスには注意が必要です。特に子どもの自転車利用時には、事故への備えとして積極的に導入を検討するとよいでしょう。
2-6. 衝撃吸収エアバッグ付きジャケット・ベスト
近年では、自転車や二輪車向けにエアバッグを内蔵したジャケットやベストも登場しています。転倒などの衝撃を感知すると自動でエアバッグが展開し、クッションとして衝撃を吸収・緩和する仕組みです。
胸部や背部を保護することで、致命的な損傷を抑える効果があるとされています。ただし、性能や安全性を重視した製品は価格が高くなる傾向があり、その点は難点といえるでしょう。
それでも、万が一の備えとして、けがや命の危険を軽減してくれる装備である点を考えれば、特に日常的にバイクを利用する方には有力な選択肢となります。
2-7. 自転車のベル(警音機)
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自転車のベル(警音器。以下「ベル」)は、危険を知らせるための警告手段として有用です。ベルを鳴らすことで、周囲に聴覚的に危険を伝えることができます。
道路交通法では、一定の条件下でベルの使用を義務付けています(54条1項)。一方で、それ以外の場面では「危険回避のためやむを得ない場合」を除き、原則として鳴らしてはいけないとされています(54条2項)。
また、使用してはならない状況でベルを鳴らした場合には、罰則(117条の2の2第8号ト)が科される可能性があります。むやみに使用せず、本来の目的に沿って活用することが重要です。
3. 法令遵守と取り締まりの強化
交通安全グッズは、事故を予防したり、事故によるけがや重症化を防いだりするために有効です。その中には、チャイルドシートやバイク用ヘルメット、自転車のベルのように、法律で装着や設置が義務付けられているものもあります。これらは身の安全を守るだけでなく、法令遵守の観点からも欠かせません。
自転車利用者については、2026年4月から自動車やバイクと同様に「青切符」による反則金制度が導入されます。たとえば、ライトが設置されていない、あるいは電池切れで「無灯火」の状態で走行すると、5000円の反則金が科されます。
さらに、スマートフォンを操作しながらの「ながら運転」には1万2000円、イヤホンを使用して音楽を聴きながらの運転には5000円、左側通行を守らずに車道の右側を走行(逆走)した場合には6000円と、違反内容ごとに反則金が定められています。
年々こうした規制や取り締まりは強化されて厳しくなってきていますので、日頃から適切な利用と安全運転を心がけることが大切です。
4. まとめ|それでも事故に遭ってしまったら
交通安全グッズにはさまざまな種類があり、事故の予防や、万が一の際にけがのリスクを減らすうえで有効です。自身の状況や予算に応じて適切に活用するとよいでしょう。
ただし、これらのグッズで事故を完全に防げるわけでも、身の安全を保証できるわけでもありません。自分がしっかりと法令や交通ルールを遵守していても、不幸にも自分が交通事故の被害者になってしまうこともあります。
万が一、事故に遭ってしまったら、警察への報告・救護者の救助等の現場対応や、自身のけがの治療などが必要になりますが、できる限り早い段階で、弁護士に相談することが大切です。
加害者や保険会社との示談交渉では、けがや治療の状況に応じて適切な賠償を請求する必要があり、そのためには専門的な法律知識が欠かせません。
たとえば、治療が終わっていない段階で「保険会社から治療費の打ち切りを告げられた」「医師が診断書を作成してくれない」といった問題が生じることもあります。さらに、将来の賠償請求に備えて、診断書の内容をどうするか、どの検査を受けておくべきかといった点を、法的な視点から検討する必要が出てくる場合もあります。
こうした対応を適切に進めるためにも、事故に遭ったときはできる限り早めに弁護士に相談することをおすすめします。
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