ワークスペースは住まいの豊かさに繋がる!一級建築士・小木野さん流の間取りの考え方
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となりのMyデスク
リモートワークや在宅ワークが定着しましたが、自宅で仕事をしているとワークスペースが確保できなかったり、家族の音が気になったりと、快適に働けないと悩む人も増えているようです。そこで、住まいのプロに自宅でも無理なく仕事ができる空間の作り方について聞きました。この連載ではプロのアドバイスをもとに、新時代のお仕事環境を紹介します。
一覧を見る今回のおとなりさんは一級建築士の小木野貴光さん
小木野さんは建築系の学科を卒業後、設計事務所で建築士としてキャリアをスタート。
住宅や商業施設などの設計に携わりながら、大学院でデザイン学の修士を取得したことを機に、自身の設計事務所を設立します。
仕事の約半分は個人住宅の設計で、最近ではリモートワークスペースを取り入れた住宅を積極的に提案しているそう。
ヒアリングから引き渡し後のアフターフォローまで長期にわたりクライアントとコミュニケーションを取る中で、リモート時代に適した住まいのあり方が求められていると実感しています。
自身も東京・赤羽にあるオフィス兼住宅で「暮らしと仕事」を両立させている小木野さんに、住まいの中に働くスペースのつくり方を聞きました。
書斎未満の”ちょこっとスペース”をつくる
コロナ禍を経てニューノーマル時代に突入し、リモートワークで自宅から働くことが日常となりました。
「家が狭い」「環境が良くない」といった理由で、広くて快適な住まいを求めて、郊外への住み替えを検討している、という話もちらほら聞こえてきます。
しかし、小木野さんによると「広い家に引っ越せば解決するものでもない」そうで、住まいに多目的なスペースが作れるかが重要だと言います。
特に日本の住宅は2LDKや 3LDKというように、敷地に対してなるべく多くの部屋を設ける間取りが採用されがちです。
そして、リビング、寝室、子供部屋、ストレージなど、部屋の用途もある程度、決められた状態で販売されます。
すると、広さの割に落ち着いて働ける場所がない、といった状況になってしまいます。
そんなリモート部屋難民には、「住居の中に多目的に使える場所を作ってみては?」と小木野さん。
具体的にはどんな方法があるのでしょうか?
壁や通路にカウンターを設置する
自宅で働くなら書斎が必要だと考えがちですが、書斎未満の隙間のようなスペースでも十分に作業はできます。
住まいのちょっとした隙間、柱や梁(はり)の間、廊下の壁などにカウンターを取り付けると仕事場所になります。
働き方が多様化している中で、家の中にも多用途の場所があるといいです。仕事で使わない時には、趣味の物を飾ることもできます。こうした場所は家の中の余白の部分。余裕の部分。多用途の場所があった方が、暮らしが豊かになりますよ。
何に使うか決めすぎない場所があると、暮らしや仕事、家族の状況が変わった時に臨機応変に活用できそうですね。
クローゼットや階段下を一時避難場所に
書斎がないからと、夫婦ともにダイニングテーブルで仕事をしていたら、オンライン会議が始まってお互い発する音が気になって気が散りますよね。
避難先の寝室にはデスクがなかったり、子供部屋だと夕方以降は使えないなど、環境が気になって落ち着いて仕事に取り組めないということも。
それなら、クローゼットやストレージを活用してみませんか?
書斎のような独立した部屋が作れなくても、普段は収納として使っているスペースを活用して、仕事場所にできます。クローゼットにデスク代わりになる棚を設置したり、階段下の納戸にデスクひとつ置けるスペースを空けておいて、いざとなったらここに移動すると決めておきます。もし、急に家族とオンライン会議が重なっても、気を遣わずに仕事に集中できます。
リモートワークには独立した部屋が必要だと思っていましたが、ちょっとしたスペースを仕事場所として活用するなら、今の住まいでも実践できそうですね!
オンライン会議の背景を素敵に設える
コロナ禍で実際に会う機会が減って、オンライン会議が圧倒的に増えました。
画面越しで対面することが前提になり、若い世代はリモートライトや映りを補正できるフィルターを活用していますが、落ち着いた年齢になると不自然な加工よりも、ナチュラルな映りがしっくりくるように。
明らかにCGだと分かる背景や、フィルターのかかった補正された顔で参加することは、少し失礼と感じる人もいるとか。
せめて、zoomに映る画面だけでも整えたい!と思っている人におすすめの方法があります。
本棚を置いてデキる感UP
真っ白な背景よりも、本棚に専門書がびっしりと置かれた本が映っていると、なんとなく知識的な印象を受けますよね。
もし、家を建てるなら壁一面を本棚にしたい!という憧れはありながらも、今ある住まいを活かすなら本棚を設置するのが現実的です。
見せられるような本が少なくても、大丈夫。ちょうど画面に映る部分だけでも本をまとめつつ、仕事関連の書籍を置いてみましょう。
見せたくない本を隠しつつ、リアルな本棚を映してオンライン会議の背景をランクアップできます!
壁紙や扉でこだわりの暮らし風に
小木野さんは「日頃の身だしなみを整えるのと同じ感覚で、オンライン会議の背景にこだわりたい!という要望が増えている」と言い、設計でもオンライン会議を前提とした部屋づくりをしています。
生活感を出さずに、暮らしぶりをよく見せたい!と、設計段階からリモートスペースを決めて、背景になる場所にこだわる方も結構います。これは、コロナ禍以前には無かったリクエストです。
CGではなくリアルに素敵な背景が欲しいなら、内装を少し変えることで、きちんと生活をしながらこだわりも再現した背景がつくれます。
小木野さんのオススメは次の2つ。
◯リモートスペースの壁紙だけ貼り替える
◯画面に映る扉をお部屋のアクセントと捉えて、こだわった扉に変える
日本の住まいは全体的に白っぽくて平面的な内装なので、見える部分だけでもこだわりのある建材に変えると、一気に雰囲気が変わります。
扉に貼れるシールタイプのドアステッカーや、貼ってはがせるウォールステッカーなどを活用すれば、より簡単に変化がつけられますよ!
思い切ってリモートワーク用に間取りを変える
コロナ禍のリモートワーク拡大に伴い、都市部の不動産価格が上昇していることもあり、中古物件のリノベーションが注目されています。
小木野さん曰く「古い物件をリノベして住む人が増えている…というよりも、リノベが当たり前の選択肢になった」とのこと。
但し、中古物件は建てられた時代によって特徴があり、昭和の物件であれば和室があったり、築浅のマンションは部屋数を重視した細切れの間取りがよく見られます。
どうしてもリモート生活に今の間取りがあわないな、と感じているならプチリノベで間取りを変更するのも選択肢です。
夫婦がそれぞれ働ける書斎の作り方
自宅で働くと言っても主に「作業」と「会議」の2種類があり、書類作成やメールのような作業ベースの仕事ならダイニングで向かい合っていても問題なくできます。
けれど、夫婦のどちらも頻繁にオンライン会議があるようだと、一時的に寝室やクローゼットに逃げ込むのは難しいし、快適なワークスペースにはなりません。
そこで、小木野さんは「お互いの声が届かない場所に、それぞれ独立した書斎を設けては?」と提案します。
戸建てであれば違う階にそれぞれの作業場所を配置したり、マンションでもリビングと離れた居室に壁を作って独立した空間を作るなど方法はあります。
これから家を建てる、マンションの購入を考えているなら、夫婦別々に使えるリモートスペースを検討してもいいでしょう。
玄関ストレージを作業スペースに
「自営業や副業で人と会う機会があるなら、いっそのこと玄関周りを仕事場にしてみましょう」と小木野さん。
玄関脇にある納戸の壁を取り払って、広めの玄関を土間のような作業できる場所に設えます。こうすると、暮らしと仕事場の区切りができてオンオフのスイッチも入れやすくなり、仕事関係の来客があっても家族の空間に入れることなく対応できます。
リモートワークだけでなく副業の場として動画撮影のスタジオにしたり、趣味のサロンや教室にしたりと、広い玄関は色々と活用できそうです。
まとめ:住まいそのものをリモート仕様にしてみては?
ここまで、建築のプロにリモートワークに適した住まいづくりのアドバイスを聞いてきました。
小木野さんも多くの個人住宅を手掛ける中で、「コロナ禍を経て人々の働き方が一気に変わってきているけれど、仕事内容や拘束時間によって適したワークスペースは違ってくる上に、もともとの住まいの大きさや間取りによってもできることが異なる」と言います。
書斎未満の隙間を活かしたカウンターや、オンライン会議専用の背景のような気軽なプチリノベは早速実践してみたいアイディア。
さらに、夫婦でフルリモートなら、暮らしと仕事の両立ができるように、住宅そのものを変えてみるのも方法のひとつですね。
自分たちのライフスタイルを実現したいなら、まずは設計事務所や建築士に相談してみると、思いがけない解決方法を教えてくれるかも。
専門家の力も借りながら、理想の住まいを手に入れてくださいね!
これからも、となりのMyデスクではリモートワークに役立つ情報をご紹介していきますので、ご期待ください!
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