派遣社員は不安定?仕事内容、雇用形態の違いやメリット・デメリットも解説!

荒井 幹
公開: 2020-11-26

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派遣社員と聞くと正社員と比較して「不安定である」「業務内容に制限がある」など、あまり良いイメージを持たれていない人も多いのではないでしょうか。

さらに今日のコロナショックの影響で「派遣切り」という言葉が以前にも増して注目されています。厚生労働省の発表によると、5月から10月までの解雇見込みの非正規労働者数は33,382人と発表しており、この数字の中には派遣社員も含まれています。


そこで今回は社会情勢を踏まえたうえで、これから派遣社員になろうか迷っている方向けに、派遣社員の仕事内容や派遣社員のメリット・デメリットについてもご紹介します。

派遣社員とは

派遣社員とは、労働者派遣事業と有料職業紹介事業の許可番号を取得している人材派遣会社と契約を結び、別の企業に派遣される社員を指します。

そのため、派遣先の企業との雇用関係は無く、雇用契約は派遣元の企業に帰属します。派遣社員に対する給料も派遣会社より支給されます。

派遣社員の雇用形態のしくみ

派遣社員の雇用形態は労働者、派遣会社、派遣先企業の3者で成り立ちます。

派遣先の企業にとっては人手不足なときに必要な人材を確保でき、派遣元の企業は即戦力人材を派遣社員として企業に派遣することで派遣先から紹介料をもらう、というビジネスモデルです。

派遣社員は業務指示を派遣先の企業よりもらい、労働力を提供することで、紹介料の中から給料として派遣社員本人に支払われます。

この3者の関係性について以下の図でわかりやすくまとめられています。

派遣の仕組み

派遣社員と正社員の仕事内容の違いとは?

派遣先の企業には正社員も在籍していますので、同じ職場環境・空間で業務を行います。しかし、派遣社員と正社員には「仕事内容や仕事の幅」「拘束時間」「ボーナスの有無」「安定性や将来性」に明確な違いがあります。

仕事内容や仕事の幅

正社員は仕事内容に制限がなく裁量を持って仕事ができる一方で、派遣社員は契約によってあらかじめ決められた範囲内で仕事をすることが一般的です。

仕事の指示は派遣先の企業から与えられますが、担当する仕事内容は明確となっています。派遣先の業種や職種によってもその内容は異なるため、契約内容は必ず確認することが重要になります。

拘束時間

正社員は基本的に所属する企業の職務規程に業務時間、及び残業時間についても記載されているので、その内容に従います。

一方派遣社員は正社員と違い、拘束時間も契約で事前に決められています。例えば残業について、契約内容に日単位もしくは月単位で上限が定められているので、契約規程の範囲を超える残業は派遣社員自身で断ることができます。

ボーナスや退職金の有無

正社員の場合もらえる金額に差はあれど、ボーナスを支給する企業が多いですが、派遣社員は基本的にはボーナスが支給されません。

支給されない理由は、正社員と派遣社員の給料の算出方法に違いがあるからです。

年収内訳

派遣社員は時給と働いた時間によって月給が決まり、その内訳には交通費やボーナスの分も含まれています。

一方で、正社員の場合は初年度の基本給が低く設定されており、勤続年数や勤務態度・成績など総合的に判断されたのち、企業が定めている給与査定回数によって基本給やボーナスが上がっていく仕組みとなっています。

企業によってはボーナス制度を設けている派遣元もありますが、正社員ほどの大きな金額はあまり期待ができません。

また、退職金について、契約期間満了まで勤めたとしても派遣元から退職金を支給されるケースはありません。

安定性や将来性

安定性や将来性について、正社員は「雇用期間の定めのない」契約です。そのため、何か大きな問題を起こさない限りは会社都合で解雇になることは滅多にありません。

一方で、後ほど解説する無期雇用契約や紹介予定派遣は除き、派遣社員は最長で3年しか同じ派遣先での勤務ができません。

さらに、コロナをはじめとした不測の事態が起きたとき、解雇のターゲットになりやすいのも、正社員より派遣社員の方がその傾向は強いです。そのため、安定性という点で派遣社員は正社員と比較して劣ると言えます。

そして、キャリアアップを考えた場合、正社員の方がひとつの企業で長く勤められるので、さまざまなスキルや知見が身につきます。
しかし派遣社員の場合は仕事内容も決まっているうえ、3年という期間の定めがあります。

ルーチンワークが主な仕事内容である職場や、未経験可の専門的な知識が不要な職場の場合は正社員と比較して長期的なスキルアップが難しいと言えます。

派遣社員のメリットとデメリット

それでは次に派遣社員のメリット・デメリット、派遣社員がおすすめな人・そうでない人について解説します。

派遣社員のメリット

派遣社員のメリットは「正社員と同様に社会保険に加入できる」「キャリアを活かすことができる」「自由な時間が確保できる」の3点です。

①正社員と同様に社会保険に加入できる
派遣社員でも、条件を満たした場合に健康保険や厚生年金保険、雇用保険に加入することが義務となります。

また、有給休暇についても入社後6ヶ月が経過した段階で付与され、取得する際は派遣元に申請することで所定の日数分を消化することができます。

②キャリアを活かすことができる
派遣先の企業は基本的には派遣社員を即戦力として採用するので、自社での教育に時間をかけることなく仕事に従事してくれる人を人材派遣会社に依頼します。

そのため、派遣社員側としてもキャリアを活かせる仕事を選ぶことができるので、自分がこれまで培ってきた知識やスキルを活かして仕事に取り組むことができます。

派遣社員は契約書に仕事内容が記載されており、やるべきことも決まっているので就業前から具体的な仕事内容について把握することができます。

就業後のミスマッチが少なく自分の適性に合った仕事を選ぶことができるのもメリットのひとつです。

③自由な時間が確保できる
派遣社員は残業時間などが決められているので、特別なことがない限りは早出や残業などがありません。

そのため、定時内で仕事を終えられる業務内容であり、契約外の仕事はする必要がないので、自分のプライベートな時間を自由に使ったり、家庭と仕事を両立させることができます。

派遣社員のデメリット

派遣社員のメリットをご紹介しましたが、一方で「裁量のある仕事ができない」「賃金が低い場合がある」「正社員と比較して不安定」のデメリットもあります。

①裁量のある仕事ができない
派遣社員は仕事内容が細かく決められており、それ以外の仕事はしなくても良い反面、責任が求められるような裁量の大きな仕事は任せてもらえない場合が多いです。

特に職場によっては、スキルを身に付けるのが難しいこともあります。したがって、仕事内容と将来のキャリアプランを照らし合わせて「本当にこの職場で良いのだろうか」と事前によく吟味する必要があります。

②賃金が低い場合がある
2020年4月に「同一労働同一賃金」制度が導入され、正社員と派遣社員の格差はなくなってきています。

同一労働同一賃金の導入は、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者) と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。

出典:厚生労働省|同一労働同一賃金特集ページ

しかし、現状まだまだ派遣社員は時給制である企業が多く、ボーナスの有無や福利厚生など正社員と比較すると低いケースもあります。

③正社員と比較して不安定
派遣社員は派遣先企業の社員ではありませんので、派遣先企業がやむを得ず人員整理をするとなった場合に、まず派遣社員から対象とする企業がほとんどです。

また、契約期間が終了した際にすぐに次の就業先が見つかるとは限らず、人材派遣会社が紹介する求人案件も希望に沿ったものであるかどうかもわかりません。

次の就業先が決まるまでは無収入の状態になってしまうので、この点が正社員と比較すると不安定と言えます。

派遣社員がおすすめな人

派遣社員がおすすめな人は「スキルアップをしていきたい人」「プライベートの時間も確保したい人」「将来的に正社員を目指したい人」です。

①スキルアップをしていきたい人
未経験可や仕事内容が毎日同じような職場ではなく、医療職やエンジニアなど専門性が求められる仕事ではスキルアップを十分に見込めます。

このような職場は既にある程度のスキルを求められるうえ、仕事を通して自分が持っているスキルをさらに高めることができます。また、業務時間外の残業もないので資格の勉強などに時間を割くことも可能です。

②プライベートの時間も確保したい人
正社員の場合、何か突発的な事態になった際や仕事が終わらない場合は残業をする必要がありますが、派遣社員は基本的に定時出勤・定時退社なので就業後の時間を自由に使うことができます。

③将来的に正社員を目指したい人
今は正社員の道を考えていないけれども、いつかは正社員になりたいと考えている人は「紹介予定派遣」という制度を使って正社員になることが可能です。

紹介予定派遣とは、ある一定の試用期間(最長6ヶ月)の後に派遣先企業と労働者双方の合意の元で派遣社員から正社員になれるという制度です。

この制度では、労働者は派遣先にて働きながら職場の雰囲気や仕事内容があっているかどうか、派遣先はこの人は自社の社風や仕事内容についてこれるかどうか、をお互いに確認しあえるので双方にメリットがあります。

もし紹介予定派遣制度を利用しようと考えている場合は、応募求人が紹介予定派遣の求人であるかを確認することが必要です。

派遣社員がおすすめではない人

一方で派遣社員がおすすめできない人は「福利厚生などの充実を求める人」「安定が欲しい人」「裁量の大きい仕事がしたい人」です。

①福利厚生などの充実を求める人
福利厚生やボーナス、退職金や昇給・昇格についても正社員の方が充実していると言えます。この点に重点をおく人は派遣社員はおすすめできません。

②安定が欲しい人
派遣社員は契約期間満了後に求人を再度探す必要があること、派遣切りなどにあってしまうことからも安定を求める方には不向きです。

③裁量の大きい仕事がしたい人
あらかじめ業務内容が決められている派遣社員と、さまざまな業務を経験でき、裁量の大きい責任のある仕事も任される正社員とでは、スキルの付き方も変わります。

そのため、裁量の大きな仕事をして活躍したいと考える人も派遣社員はおすすめできません。

無期雇用派遣とは

働き方のひとつに正社員と派遣社員のちょうど中間に位置する「無期雇用派遣」という制度もあります。

無期雇用派遣とは、派遣元の企業の採用面接を通過して派遣元との無期雇用契約を結んだ派遣社員を指します。

無期雇用契約になると月給制になる、派遣社員にある「3年縛り」がなくなる、収入が途切れるタイミングがなくなる、などのメリットがあります。

一方で、希望は聞いてもらえても派遣先を自由に選べなくなったり、休暇が取りづらくなってしまう点がデメリットです。

まとめ

ここまで派遣社員の仕事内容やメリット・デメリット、派遣社員がおすすめな人とそうでない人をご紹介してきました。以下が今回のまとめになります。

・派遣社員の仕事内容は契約によって細かく決められており、基本的に契約外の仕事ができない
・派遣社員は自由な時間、好きな仕事ができるメリットがある一方で、立場が不安定などのデメリットもある
・派遣社員の働き方には紹介予定派遣や無期雇用派遣などの種類がある

派遣社員のイメージに陰りが見える今日でも、求人数がゼロになったわけではありません。自分の働き方・考え方に派遣社員がマッチしているのであれば、派遣社員の道に進むのもありです。

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webライター
荒井 幹
海外営業、左官工、webディレクターを経て現在はフリーランス。3年ほど前から自身で就職・転職系のメディア運営を手がける。得意ジャンルは転職、ファッション、英語など。趣味はシーシャとダンス。
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