ホームレスから一発逆転!国際的路上パフォーマーを生んだドラムスティック【Moovooモノ語り】
留学生から所持金600円ホームレスに
バケツドラムを始めてから早4年。
「世界中の人をとにかく笑わせたい」という気持ちから、黄色の衣装に身を包み、世界中の地でバケツドラムを叩く。
【バケツと共に世界を駆けるダックマン】
本名は中村鷹人。幼い頃、母に捨てられ暴力を受け、人から逃げるように生活し、誰にも必要とされなかった僕にとって、路上パフォーマンスというのは革命的だった。
路上では、不特定多数の人に見てもらえる上に、投げ銭も貰え、褒め言葉を掛けられる。
路上パフォーマンスを始めたのは、僕がホームレスになってしまった、という背景がある。
【当時住んでいた家(ほぼ外)】
初めての留学だったという事もあり、自分だけでサービスの良し悪しを判断することが難しい立場にあった。
そんな弱みにつけ込まれてしまい、留学エージェントに高い保険や高い航空券の購入を勧められ、さらにホームステイ先では、日本語が喋れない家族の方が勉強に身が入るとお願いしたのにも関わらず、日本人の家庭に割り振られてしまった。
高額を支払ったのにも関わらず、思い通りにいかない事ばかりだった。
さらにその後、ホームステイ先でも向こうの家族の事情で、これ以上ホームステイが続けられないというトラブルに巻き込まれた僕は、所持金が600円しか残っていないのに家が無いという状況に追い込まれた。
そこで、頭を過ぎったのは、「帰国」の二文字だった。
その頃まだ留学をしてから2ヶ月しか経っておらず、英語もろくに喋れず、こんな成長じゃ今帰国してもただ笑われるだけだと思い、「最後に何か思い切り変な事を成し遂げよう」と考え出した。
そして、寒い中外で寝ていたときに、いきなり路上で何かをやってみようとふと思った。
学生時代は軽音学部に所属していたこともあり、「路上×音楽」で自分に何かしらできないかと考えたのだ。
かと言って、楽器を買うお金も無かった僕が考えついた答えは、バケツを本物のドラムのように見立てて叩くというものだった。
【偶然隣町のゴミの中から見つけたバケツの山】
正直、ドラムはかじった事がある程度で全く自信は無かった。
もちろんそんな簡単にバケツが落ちている訳が無いと思ったが、散歩がてら行った隣町のゴミの山からバケツを7個ほど見つけることができた。
公園で洗っては、その残った600円で激安ドラムスティックを購入し、そのまま朝まで練習に励んだ。
【初めて人前で演奏する前のセッティング - ドラムスティックは500円だった】
ドラムは少しかじったことがある程度。バケツはドラムとは全く違った。
しばらく公園で練習していると、子連れのお父さんが来て、「お金はどこに入れればいいの?」と聞いてきた。
その金額は$2 (日本円約150円) だった。
嬉しくて涙がでた。
これを仕事にして良いのだと誰かに認めてもらえた気がした。
その後練習を積み重ね、バケツドラムも上達して行った。
“疲れ知らず”の頑丈なドラムスティックを求めて
【オーストラリア ・シドニーにて初パフォーマンス】
元から人前に立って何かをするのは好きだった。それがこのような形で実った。
「なんでもなかった僕が何かになる感覚」が、人にも力を与えるのではないかと思った。
それからというもの毎日、毎日バケツドラムを公園で練習した。10時間などあっという間だった。
【滑り止めとして使用していたキッチン手袋】
文字通り、血が滲む程努力した。
雨の中、風の中、雪の中、どこでだってバケツを叩いた。
【豪雨の中バケツを叩くTK】
それからオーストラリア 、カナダ、アメリカと様々な都市も周った。
その間に折れたドラムスティックの数は、数えきれない。
バケツドラムは通常のドラムセットと違い、とにかく硬い。なので、ドラムスティックも折れやすい。力の調節も下手くそだった為か、一日一本はドラムスティックが折れていた。
そこから、ドラムスティックの太さや握りやすさを考慮し、今のVIC FIRTHのドラムスティックへと辿り着いた。
【VIC FIRTH ヴィックファース スティック Freestyle 5B VIC-FS5B】
このスティックは、太くて軽い上に丈夫なので折れづらい。
何よりも僕が重視しているのはドラムスティックの「重心」の位置だ。
ドラムスティックは、メーカーや演奏する音楽のジャンルによって、重心が異なる。
普通のドラムならば、先が細ければ細いほど使いやすいのだが、ドラムスティックを回して使ったりする僕にとっては違った。
このドラムスティックは、かなり先の重心が重く、「少ない力で大きな音が出せる」。
この記事を読んでくださっている人の中で何人の方が、納得してくれるかは分からないが、ドラムを演奏するには、かなりの体力を消費する。
そして僕が路上パフォーマーとして生きていくためには一日7時間程演奏する必要があった。
ただ、細いスティックならゴマンとあるが、それも一瞬で壊れてしまう。
路上パフォーマーにとってどんなスティックがベストなのか、日々何回も試行錯誤した。
【使い古された歴代のドラムスティック。折れたものが何本もある】
今のVIC FIRTHに辿り着くまでに愛用してきた歴代のドラムスティック達だ。
機能面の追求だけでなく、ただの木目調ではつまらないので、色も自分で塗るなど工夫してきた。
ほんの小さな工夫ではあるが、視覚的に子供ウケもよかったので、よりたくさんの人達を笑顔にさせることができていると実感できた。
どん底があったからこその「今」
段々年月を重ねる毎に、技術も向上していき、もっと上手くなりたいという欲も出てくる。
パフォーマンスのクオリティに納得がいかず苛つきを覚えることだってある。
最初は激安のドラムスティックを使って満足していたのだが、段々とそこにクオリティを求めてくるようになる。
大きい舞台で失敗して、後悔が頭から離れない事もある。
【老人ホームでのパフォーマンス】
【日本夏祭りイベントでのパフォーマンス】
【誕生日パーティーでのパフォーマンス】
少しでも何かを変えたい、上達したいという思いから、少しお金を出しても「VIC FIRTHのドラムスティック」を愛用していきたいと思った。
そのおかげで、音の大きさやキレもよくなり沢山の人を立ち止まらせる事が出来るようになった。
良い商品は値段こそ張るが、長持ちする物も多い。今回のこのドラムスティックのように、自分のステップアップに応じて、良い物を買うという事は素晴らしいことであると思う。
しかし、忘れてはならない。
どんな人にもスタートがあって、始めた時はどんな事にも感銘を受け、満足していた。ということを。
思い出も物も大切に、たまに振り返って、使ってきた物や関わってくれた人に感謝して、成長していきたい。
Written by TK-Entertainer
【今日もどこかで人を幸せにしているダックマン】
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