日本酒の精米歩合が違うと何が変わる?好みのお酒を選ぶ指針にしよう

nagiy
公開: 2020-01-16

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日本酒を選ぶ際によく出てくる言葉に「精米歩合」が挙げられます。特に日本酒ブームの火付け役として有名な獺祭などは精米歩合が低い日本酒として有名ですよね。

しかしこの精米歩合という言葉、実際のところ何を指しているのかしっかりと答えられますか?

いきなり精米歩合とは何のことなのか答えよ。とテストみたいに聞かれてしまうと困ってしまいますよね。そこで今回は、酒造りにおいて外しては語れない「精米歩合」について詳しく紹介していきます。


連載【日本酒ライターnagiy】|Moovoo

▲日本酒好きになって15年、好きが高じて全国の酒蔵訪問旅行を趣味にしているフリーライター。美味しい、珍しい日本酒の紹介・楽しい飲み方を提案していければと思います。

精米歩合とは?

米と稲穂

さてまずは大前提として、精米歩合そのものが何を指すのかについて見ていきましょう。基本の知識をしっかりと押さえておくことで、お酒選びがもっと楽しくなるかもしれませんよ。

日本酒の原料「酒米」の磨き具合

では精米歩合とはいったい何を指すのか。これはもう端的に言ってしまえば名前の通り、酒造りに使われている酒米の磨き具合を指す言葉であり数値です。

日本酒のラベルなどに書かれている精米歩合の後に続く数字は、酒造りに使われるために削られた、お米の残った部分を示す数値。玄米の状態から40%削ったお米は精米歩合60%といった感じです。ちなみに削った部分を表す言葉は「精白率」と呼ばれます。

したがって精米歩合の数字が小さいほど精白率が高い日本酒だということですね。

特定名称における精米歩合規定

精米歩合が酒米の研磨率だとわかっていただけたところで、続いては特定名称における精米歩合の規定を見てみましょう。日本酒の種類によって変わる精米歩合で、そのお酒の味わいを何とくなく想像できるかもしれません。

日本酒の特定名称における精米歩合
・吟醸酒     60%以下
・大吟醸酒    50%以下
・純米酒     精米歩合に規定なし
・純米吟醸酒   60%以下
・純米大吟醸酒  50%以下
・特別純米酒   60%以下又は特別な製造方法
・本醸造酒    70%以下
・特別本醸造酒  60%以下又は特別な製造方法

上記精米歩合が、それぞれの特定名称で規定されている精米歩合になります。ここでちょっと面白いのが純米酒ですね。以前は純米酒にも精米歩合70%以下という規定がありましたが2004年に撤廃。

規定がなくなったことで純米酒の規定は「米と水、米麹のみで作ったお酒」だけになりました。よりお酒造りの幅が広がった事から、現在では低精米から高精米まで様々な純米酒を楽しめるようになっています。

精米歩合によって日本酒の何が変わるの?

冷酒とお刺身

日本酒の精米歩合を見てみると、80%のように高いものから21%なんて低いものまでたくさんあります。では、この精米歩合を変えることによって、作られる日本酒にはどのような違いが出てくるのでしょうか?

ここからは精米歩合を変えることによって、日本酒にどんな変化が出てくるのか解説していきます。

磨くほど香り高くなる

精米歩合が変わることによって、一番顕著に違いが表れるのは日本酒の香りだといえるでしょう。精米歩合が30%や20%の物のように、米を磨けば磨くほど香り高くなる傾向があります。

俗に言われる「吟醸香」というものですね。

この香り高くなるという表現、いまいち分かりにくい人も多いと思います。私個人の見解としては、精米歩合が低くなるほどお米の香りが薄くなる。といった表現の方が分かりやすいのではないかと…。

吟醸香とは言ってしまえば「お酒特有の香り」です。精米歩合が低くなるにつれてお米の香りが薄まり、お酒特有の香り高さが出てくると考えてみればわかりやすいのではないでしょうか。

磨き具合によって味の違いが出る

続いての違いは日本酒の味に違いが出る点ですね。精米歩合を低くすればするほど、雑味のないクリアな味わいになっていきます。反対に精米歩合が高い日本酒は、お米のうまみや甘味を残した滋味深い味わいに。

昨今では、精米歩合の低いクリアな味わいの日本酒がもてはやされてきました。このことから、精米歩合1%なんて驚くような日本酒もあるそうですよ。

しかし、ここで勘違いをしてはいけないのが、精米歩合が低ければそれだけでおいしい日本酒だとは言い切れない点です。

クリアな味わいという言葉はとてもよいものに聞こえますよね。しかし、全ての酒蔵が同じように精米歩合を低くしてしまえば、どれも似たような味わいのお酒ばかりになってしまうという危惧の声も上がっています。

お米のうまみをしっかりと残した日本酒も、旨みが濃くおいしいもの。もちろん最後の決め手は個人の好みになってきます。飲みやすいものを探しているのなら、精米歩合が低いものを選ぶことは正解ですが「美味しい日本酒」を選びたいのなら、精米歩合にこだわり過ぎると損をしてしまうかもしれませんね。

お米のうまみを感じよう!精米歩合が高い日本酒

では実際に精米歩合によって、日本酒にどんな味や香りの違いが出るのか?これはやはりそれぞれの日本酒を口にしてみるのが一番です。まずは精米歩合が高くお米のうまみを残した日本酒について見ていきましょう。

おすすめ①
  • 寺田本家
  • 香取 純米80 720ml

  • 税込み2,140円
  • 生酛仕込みと精米歩合80%が織りなす米のうまみ

  • お米を2割しか磨いていない状態。昔ながらの生酛仕込みで作られた、お米のうまみを凝縮したような濃い味わいの日本酒。無濾過の自然酒なので、淡い黄色の酒色も楽しんで。

精米歩合80%の日本酒。クリアな味わいに慣れた方からすれば、本当に同じ日本酒なのかと舌を疑うようなお酒だといえるでしょう。ねっとりとした旨みと、どこか穀物由来の香ばしさを感じさせる素材の味わいを楽しめる1本です。

おすすめ②
  • 泉橋酒造
  • 恵 海老名耕地 1,800ml

  • 税込み3,024円
  • 精米歩合80%!お燗につけることで旨さが引き立つ日本酒

  • こちらも精米歩合が80%と米のうまみをしっかりと感じられる日本酒です。そもそもお燗用に作られているので、寒い季節の1本としてピッタリな日本酒だといえるでしょう。

精米歩合80%と濃い目の1本ですが、麹米は60%まで磨かれているので柔らかな吟醸香も感じられる日本酒です。お燗にすることで辛みやキレが増すので、より飲みやすく感じられるでしょう。存在感のある味わいなので、出汁を使ったおつまみや濃い風味のおつまみにピッタリです。

おすすめ③
  • 吉田酒造
  • 白龍 純米磨き9割 1,800ml

  • 税込み2,420円(楽天)
  • 温めることで華やかな香りが立つ精米歩合90%のお酒

  • 驚きの90%と、普段私たちがいただくごはんとほぼ同じ精米歩合のお米から作られた日本酒。お米由来のうまみさだけではなく甘味も感じられる、どことなくほっとするような味わいです。

上記で紹介した2本が精米歩合80%。そうなればこの上を行くには90%しかありませんよね。食事としていただくごはんとほぼ同じ精米歩合。一口いただけば、まるでご飯を食べているようなお米の香りと甘みが口いっぱいに膨らみます。冷やや冷酒よりも、香りが立ちやすいぬる燗で楽しみましょう。

クリアな味わいが魅力!低い精米の日本酒

ここからは上記までとは反対に、昨今根強い人気を誇る精米歩合が低い日本酒について見ていきましょう。有名どころである獺祭も紹介していきますね。

おすすめ④
  • 来福酒造
  • 純米大吟醸 超精米8% 720ml

  • 税込み12,222円
  • 8%の精米サンプルがついてくる、舌と目で楽しむ1本

  • 92%の精白率を誇る、非常にクリアで雑味を感じない日本酒です。材料を多くそろえることが難しいことから、限定品である点も魅力的に感じる日本酒ですよ。

茨城県で作られている酒米「ひたち錦」を原料とした日本酒です。ひたち錦で作られるお酒はもともと繊細でクリアな味わいのものが多くなっていますが、8%まで磨きぬいたことからより雑味を感じない透明な味わいに。

おまけとして8%まで精米されたお米がついてくるので、味わい以外にも楽しめる日本酒ですよ。

おすすめ⑤
  • 楯の川酒造
  • 楯野川 純米大吟醸 720ml

  • 税込み22,924円
  • 6代目蔵元の理想を実現!旨みのバランスが取れた1本

  • 最高の日本酒を作りたい、楯の川酒造6代目蔵元の熱い思いから作られた、精米歩合8%の非常に飲みやすい日本酒です。ほのかな香りや甘味、口の中で広がる香味など初心者さんにこそおすすめですよ。

香り・繊細さ・膨らみ・余韻のすべてを完璧に満たした日本酒が作りたい。そんな蔵元の想いを歴代蔵人が叶えて見せた1本です。そもそも楯の川酒造は以前にも精米歩合18%の日本酒を送り出すなど、米を磨いた日本酒を作ることを得意としている酒蔵。

本気を出したからこその8%ではないでしょうか?クリアな味わいの割りに、日本酒特有の香味やうまみもきちんと残っているので、飲みやすい日本酒が飲みたい!なんて方こそ一度試してみてはいかがでしょうか。

おすすめ⑥
  • 新澤醸造店
  • NIIZAWA KIZASHI 純米大吟醸 720ml

  • 税込み47,652円
  • お米の芯部分にしかないほのかな甘みと旨みを堪能

  • 精米歩合7%のお米。実際に目にしてみれば芥子粒のような小さな酒米に驚く方も多いはず。割れないように丁寧に精米された、お米の芯部分でしか味わえない優しい甘さを楽しんでみましょう。

クリアな日本酒を作る際に不要とされている、お米の栄養分や雑味が含まれている外側を徹底的に排除した日本酒。ほのかに感じる甘みとクリアな喉越しは、磨き上げられたお米だからこその味わいでしょう。

戴く際にはグラスやおちょこにもこだわってみたくなりますね。また日本酒とは思えないようなラベルデザインにも注目してみてください。

まとめ

今回は日本酒選びにおける指針の一つ「精米歩合」に関して紹介してきました。以前の日本酒業界で言えば、精米歩合が低いクリアな日本酒こそ至高!なんて声が高く聞こえていましたが、現在ではそうでもないのが現状です。

米のうまみがしっかり残っている方がおいしいよ?なんて声も聞こえ始めているのですね。実際のところ日本酒のうまみや甘味を楽しもうと考えれば、あまり精米しすぎたものでは物足りないと感じるもの。

ただ、やはり飲みやすさを考えれば、精米歩合が低い日本酒の方がおすすめであることも間違いありません。したがって精米歩合のパーセンテージだけにこだわるのではなく、自分にとってどんな日本酒がおいしい日本酒なのか?この点をしっかりと考えて選んでみましょう。

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