すみっコぐらし、男性にも人気の理由 「影を抱えたキャラ」の魅力

信原 一貴
公開: 2019-11-18

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 キャラクターシリーズ「すみっコぐらし」の人気が高まっています。子どもも女性も、そして男性まで魅了されてしまう秘密とは…?

 すみっコぐらしの誕生は7年前。2019年11月には、ついに初のアニメ「映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ」が公開されました。


 ファン層は子どもや女性にとどまらず、映画公開直後の11月13日には男性限定の上映会が開催されました。

 映画の脚本を書いた角田貴志さんと、すみっコぐらしの大ファンで関連記事も書いてきた朝日新聞の影山遼記者が登壇。

 男性2人が、どんな「すみっコ愛」を語ったのか。一問一答形式で詳しくお伝えします。ぜひご覧ください。

ぺんぎん? 自分と似てる

脚本家の角田貴志さん(左)と、朝日新聞の影山遼記者

角田(写真左):こんばんは。脚本を担当しました角田貴志です。よろしくお願いします。
影山(写真右):ファン代表として参加させていただきます朝日新聞の影山遼です。

角田:(司会者も「ねこ」のぬいぐるみを抱いているのを見て)大丈夫ですか。ジャマじゃないですか、ねこは。
司会:私物です。みなさん、きょうは私物ですか。

司会者も「ねこ」のぬいぐるみを抱きながら進行

影山:(ぺんぎん?のぬいぐるみを抱きながら)そうですね。きょうは家から。
角田:家から(笑)
司会:それでは、お話を聞いていきたいと思います。

心がすり減っているときに

司会:まずはすみっコぐらしとの関わりですが、脚本のオファーがきたときどう思われたんでしょうか。

角田:最初、すみっコぐらしをデザインした、よこみぞゆりさんが書かれた4コマ漫画2冊を参考資料としていただいたんですけど、4コマを映画にするのか。どうなんだろうなあと(笑)。一からどうしたらいいんだろうなと思いました。

司会:影山さんはいかがでしょうか。

影山:わたしがすみっコぐらしと出会ったのは2014年でした。新聞記者になったばかりで心がすり減っているときで。名古屋のロフトでキャラコーナーにいったら、ぺんぎん?のぬいぐるみの目が死んでいて、すごい自分に似ているなと。

 家に帰って調べてみたら「自分探し中」のキャラクターで、同じ境遇だなと頭から離れなくなりました。きょうは、ちょうど5年前に買ったぺんぎん?を連れてきたんですけど、もう愛用しすぎてお尻が色が変わっていて。大分こいつに助けられた感じですね。

司会:そのぺんぎん?普段はどこに置かれているんですか

影山:うちに天井まである本棚があるんですけど、その本棚と天井の隙間に。かなりうつろな目で見守ってくれています。

すみッコが「声を出さない」理由

司会:そんな影山さんから見て、今回の映画、ご覧になっていかがでしょうか。

影山:すみっコたちの魅力が存分に出ているなと。すみっコたちが主役にもかかわらず、キャラ達が最初のほうは自分たちで動こうとせずにすみっコらしいなと。それからどんどん、すみっコがムリヤリ動かされる形で物語が動いていくのを、ほほえましくみていました。

 すみっコたちはアニメでも押しつけがましい可愛さがあるわけでもなく。だけど意外と機敏に動くんだなとか。あと見る前は、どういう映画になるのか「しゃべりだしたら困るな」「すごい饒舌にしゃべったら困るな」と思っていたのですけれども……。

 映画ですみっコたちが声を出してしゃべらないのは、(すみっコの生みの親)よこみぞさんの意向もあったんですか。

角田:そうですね。最初のほうから「すみっコたちの声が想像できない」とよこみぞさんがおっしゃっていて。正直なところ、監督もアニメーションをつくるチームの人たちも「しゃべったほうがやりやすいけどなあ」と多分思ってたんですけど(笑)そこはもう、よこみぞさんの強い意志で押し通していただいて、結果よかったなと思います。

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  • 主婦と生活社
  • すみっコぐらし ここがおちつくんです

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「すみっコたちの声が想像できない」と言われる理由。読むと納得できます。

敵がいない世界観

司会:今回の映画はお客さんの感想やレビューを見ると、すみっこの可愛さはもちろんのこと、脚本の巧みさやドラマ性にも注目が集まっています。

角田:脚本と言われますけど…いろんな人たちが集まって、みんなの思いで作ったお話なんです。最初あらすじの案をみんなで色々出したんですけど、たしかよこみぞさんが三つくらい考えていただいて「すみっコたちと童話で何かできないか」「迷子の誰かと会う話ができないか」と。それをミックスした形です。

 絵本の世界を舞台にすると決まってからも、CG担当の部署の人たちだったと思うんですけど「最近飛び出す絵本ですごいのがあるよね」と。みんな賛同して、物語に取り入れました。ですから本当にみんなで作ったという感じですね。

司会:絵本の世界は、すみっコの世界観的にはどうでしたか。

影山:ぴったりだなと。すみっコたちができる最大限の冒険というか。しかも絵本の中でも敵がいなくて、みんなが優しい。角田さんも優しそうな方だなと。

角田:まだ分からないですよ(笑)

影山:この上映会を見に来ているみなさんも、たぶん悪意に満ちた人はいないだろうと。

観客:(笑)

すみっコが持っているもの

影山:敵というか、悪意を持った人は出さないというのはあったのですか?

角田:別に特別、気を付けたわけじゃないんですよ。たとえば、この映画にも登場する鬼って、一般的には怖い存在じゃないですか。でも別にことさら怖くしようという風にはならなかったし。それは、すみっコぐらしが最初から持っているものが影響しているんですかね。そもそも敵を作ろうとか、そういう考えには最初からなかったですね。

影山:このイベントの話をいただいて、先に会議室で一人で映画を見たんですけど、まさか最後に本当に泣いてしまうとは。

角田:おひとりで見られていて。

影山:普段の生活では全く泣かないんですけど。

角田:でもね、別に僕らも泣かせようとか、たぶんそこまで考えてなかったですよ。(映画で新登場した)ひよこ?をどうにかしてあげようというのを一生懸命かんがえた結果だと思いますね。

自分はひよこ?わからない。絵本の中でなかまをさがしている。

出典:映画公式サイト

影山:最初にひよこ?というキャラクターが決まって、物語づくりが始まったんですか?

角田:どこからだったかな。新しいキャラクターを一つ出したいなという話があったと思うんです。色々なアイデアの中から、固まっていったのが「小さな迷子」というキャラでした。

司会:ファミリーや女性などがターゲットの中で、これだけ多くの男性に響いているポイントはどこなのでしょうか。

影山:カワイイとか癒しは女性や子どもだけでなく、性別年齢を問わないものではないかと。自分が書いたすみっコ関連の記事を分析しても、45%くらいは男性が読んでいる。男女問わず、たぶん結構疲れて……(笑)。別に全員が中心にいる必要はなくて、「すみ」にいる人生だってそれはそれで楽しいはず。そこへの共感が、男性人気の理由では。

角田:僕ら劇団で10人くらいメンバーがいるんですけど、楽屋に入っても「すみ」から埋まっていく。隠れすみっコファンはたくさんいると思います。

司会:心の本質をついているってことなんですかね。

角田:そうなんでしょうね。

関連書籍
  • 主婦と生活社
  • 絵本 すみっコぐらし そらいろのまいにち

  • 税込み968円
  • だれもしらない、すみっコたちの5つのおはなし

  • ねこ、とんかつ、とかげ、しろくま、ぺんぎん?のストーリー。絵本のような雰囲気の、ファン待望の一冊です。

キャラの背景がより深くわかる。すみっコファンへの入門編としてもおすすめです。

セリフなくても「伝わった」

司会:制作秘話というわけではないのですが、実際にこのお話がどのように作られていったか、そこに踏み込んでいきたいなと思います。

影山:どうしても短編みたいなのを、つなぎあわせた映画になるのかと思っていました。最初から長編にしようという?

角田:僕も最初にいただいた4コマ漫画のエピソードをつなげるのかな、と勝手に思っていたんですけど。最初の打ち合わせから、割と長編でいきましょうという話があった。最初は45分ぐらいの映画という話をしていたんですけど、途中からは66分に伸びて、割と壮大になりそうだなと。

 お子さんが集中できる時間と、大人が満足できる時間というので迷ったと思うんですけど、お子さんが飽きないよう背景をコロコロ変える工夫もしています。

影山:ターゲットとしては、すみっコを知っている人向けにつくったのか、知らない人にもまんべんなく見てもらえるようにしたのか…。

角田:もちろん知らない人も見れるようにと、最初にキャラ紹介のパートもあるんですけど。これは多分監督も最初から言っていたんですが、とにかくすみっコファンに受け入れてもらえるものを作らないとだめだなと。ぼくも、そう思って書いていました。

影山:もとからすみっコを知っている方は順当に楽しめて、泣けて。さらに「逆詐欺映画」と言われているように、初めてすみっコを見る人も意外なドラマ性にハマっているのでしょうか。ヒットするとは思っていましたか?

角田:ぜんぜん思っていなかったです(笑)本当に。それこそセリフがないので、話がちゃんと伝わるかなと心配するくらいでした。大丈夫かな、理解できてもらってるかなと。ですから、ここまでちゃんと理解していただいて、見に来てもらえるとは全然思ってなかったです。

影山:しかも一回観て、あとから物語をまとめたストーリーブックを読むと「こんなことあったんだ」と。来週また見に行こうと思います(笑)

関連書籍
  • 主婦と生活社
  • 映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ ストーリーブック

  • 税込み990円
  • すみっコぐらしが映画化!ストーリーを収録

  • フルカラーでイラストもたくさん。絵本の世界をめぐる旅の、はじまりはじまり。

次々と楽しいシーンが出てくるこの映画。本で見ると、新たな発見が。

影を抱えたキャラの魅力

司会:ツイッターでも「逆詐欺映画」とトレンドにあがっていました。すみっコの設定を含めこんなに深いんだと、映画で初めて知った人もいらっしゃるのかなと。

影山:(うなずいて)みんなキャラが影を抱えていて……。

角田:ぺんぎん?を好きになったのも設定を読んだからなんですよね。

影山:そうですね。ぬいぐるみを買ったときも調べたら、ぺんぎん?の場合だと「マイペース」「あまりすみっコの世界でも協調性がない」と設定があって。自分にちょっと似ているなと。たぶん影を抱えている部分が自分に似ていてるなと感じて、多くの人がすみっコ好きになっていくんじゃないかなと。

 しかもすみっコが面白いのって、好きなキャラをめぐって争いになることもない。ああ、あなたはこれが好きなのねと認めあえる(笑)

司会:最後にお二人の映画のお気に入りのシーンをおうかがいできれば。

影山:もちろんぺんぎん?の「きゅうりマシマシで」とか、ベタになっちゃうんですけど。あとはラストのぺんぎん?の涙を浮かべながら笑っている表情、「すごいな」と思いました。ちょっと語彙力が足りていませんが。

司会:いえ、熱い感想ありがとうございます。

角田:僕は「たぴおか」のそれぞれのシーンですかね。画面の「すみ」で好きな事やっている。チューチュートレインとか。僕が脚本に書いたり、監督も好きにやられたと思うんですね。

司会:某「船の映画」の動きをしている、たぴおかもいました。

角田:あれは大人向きでしたね(笑)

登場キャラクター紹介

 「映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ」に登場するキャラクターの一部を紹介します。みんなどこか後ろ向きだったり、何かから逃げてきたり。紆余曲折あって、なかまになりました。

<しろくま> 北からにげてきたさむがりでひとみしりのくま。 あったかいお茶をすみっこでのんでいる時がいちばんおちつく。

出典:サンエックス公式サイト

<ぺんぎん?> 自分はぺんぎん? 自信がない。昔はあたまにおさらがあったような…。自分と同じ「緑色のぺんぎん」を探していますが、見つかっていません。

出典:サンエックス公式サイト

<とかげ> じつは、きょうりゅうの生き残り。つかまっちゃうのでとかげのふり。みんなにはひみつ。

出典:サンエックス公式サイト

<ねこ> はずかしがりやで気が弱く よくすみっこをゆずってしまう。 体型を気にしている。

出典:サンエックス公式サイト

<とんかつ> とんかつのはじっこ。おにく1%、しぼう99%。あぶらっぽいからのこされちゃった…

出典:サンエックス公式サイト

<ひよこ?> 自分はひよこ?わからない。絵本の中でなかまをさがしている。

出典:映画公式サイト

関連書籍
  • 主婦と生活社
  • すみっコぐらし検定 公式ガイドブック

  • 税込み1,320円
  • すみっコぐらしをきわめたい人へ ファン必見の一冊

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 キャラクターのことをより深く知るには、こちらの「すみっコぐらし検定 公式ガイドブック」もおすすめです。

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