NASとは?役立つ活用シーンや主要メーカーの製品の特色まとめ
NASに関する用語の定義
NASとは?
NASとは、ネットワーク・アタッチド・ストレージ(Network Attached Storage)の略称で、「ナス」と呼ばれます。簡単に言えば、ネットワーク機能を持つ外付けハードディスクのことと言ってよいでしょう。普通のハードディスク同様、内部に記憶域を備えたディスクを持ち、これにプラッタと呼ばれる電磁気を当てることでデータを読み書きするという仕組みが採用されています。
通常の内臓ハードディスクや外付けハードディスクの場合は、一度に一つのパソコンからしかアクセスできず、そのアクセスの方法もケーブルを介した有線方式に限られます。しかし、NASの場合はネットワーク、つまりLANを介して中のファイルにアクセスすることができるので、複数のパソコンやスマホ、タブレットなどのデバイスから一度に接続することができます。まさに、ハードディスクの一つの進化系とも言える存在です。
NASサーバーとは?
NASサーバーとは、NASを稼働させることによってできるファイルサーバーのことを指します。とは言っても、ファイルを保存することができるファイルサーバーとしての機能だけに留まらず、Linuxやその他のOSを直接インストールした後に、普通のサーバーとしての運用をすることも可能です。ただネットワーク機能を持つハードディスクというだけのイメージを持っている方も多いでしょうが、実はこのネットワーク機能が付加価値として備わるだけで、非常に万能な運用が可能なのがNASなのです。
NASキットとは?
一般的に「NAS」と呼ばれるものは、「ハードディスクがセットで付いていてすぐに使えるもの」と「ハードディスクは付属しない空っぽのもの」の2種類が存在します。そして、NASキットとはこの場合の後者に当たります。NASキットはハードディスクが別売りとなっていることから、セットになっているものよりも安く購入でき、内部に入れるハードディスクを安く入手したり、高性能なものを自分で選び抜いた上で、キットに装着できるというメリットがあります。(これにはNASキットとNASケースの呼称がありますが、両方とも同じ意味です。)
NASキットにハードディスクを入れることそのものは、とても簡単なので、コスパを重視してNAS環境を構築したい方は、ぜひ中身の入っていない「NASキット」の購入も視野に入れたほうが良いでしょう。
NASとRAID機能について
4Tb raid-1 NAS backup kit. Fwooaarr.#newtech pic.twitter.com/ke5baBBJN1
— Bryn Davies 🇪🇺🇬🇧 (@bryndavies) 2018年9月1日
NASについて興味を持って調べていると、「RAID機能」なるものについて聞きかじることがあるかと思います。RAIDとは、通常一つのハードディスクに書き込むはずのデータを、複数のハードディスクに分散して書き込んだり、ミラーリングを自動で行わせる機能のことです。高機能を掲げる多くのNAS製品には、このRAID機能が備わっていることも多いので、購入の際の比較ポイントの一つとなります。
ちなみにミラーリングとは、複数のHDDに鏡像(ミラー)のように全く同じデータが書き込まれるようにすることで、突然のHDDの故障でデータが復元できなくなってしまうことを防ぐ方法です。RAIDには複数の方式がありますが、このミラーリングを可能とするものもあります。
RAID0とは?
ストライピングモードとも呼ばれます。これは、本来一つのHDDに書き込まれるはずのデータを、常に4つの別々のHDDに分散して書き込ませるモードです。これは、HDDの故障によるデータの損失を防ぐ目的ではなく、ただ単にデータの読み書きを高速化する目的で採用されるモードです。
RAID1とは?
ミラーリングモードとも呼ばれます。これは、2つのハードディスクに全く同じデータを書き込ませるモードです。必要なHDDは2台でありながら、1台分のストレージしか確保できないというデメリットはありますが、片方が万が一故障を引き起こしても、もう片方に全く同じデータが記録されていることとなるので、突然のデータロストに備えることができます。
RAID5とは?
4台のHDDで3台分のストレージを構成させるモードです。書き込むデータとは別に、パリティー(誤り訂正符号)と呼ばれるものを形成します。このパリティーとは簡単に言えば差分バックアップの「差分」のようなもので、たとえ4台のHDDのうち1台が何かの拍子に故障したとしても、残りの故障していない3台に残る4台目の情報を、新たに挿入した壊れていないHDDに復元できるというものです。
また、4台のHDDで3台分のHDDとして動作させるモードなので、データの読み書きも多少高速化されるというメリットもあります。
RAID10とは?
複数のHDDにデータを分散して書き込ませることで、読み書きの高速化を図るRAID0と、ミラーリングを行わせることで故障への備えを確立できるRAID1を組み合わせる方式をRAID10と呼びます。耐障害性と高速性を両立することができる最も効率的なRAID方式ですが、その分予算が最もかさみます。
NASにRAIDを採用することの意義を感じさせるツイート
ちょうどやろうと思ってた矢先NASのドライブが死にました。RAID組んでるから運用に支障は無いが、海外経由で結構時間かかるのが難点。
— パヤたん【 オリジン済み】 (@payatan_) 2018年9月4日
NAS の HDD、問題なく生きてました。さすがに 4TB 失ったら立ち直れない……。もう RAID 組もう。
— たっきー (@potch_rune) 2018年8月29日
NASのハードディスクが冗長エラーで新しいのに交換。
— オーノ。@キニモノ。 (@Kinimono_oono) 2018年8月23日
RAIDが組んであったので、簡単だった。
ただいま再構築中。
壊れたハードディスクは2014年1月に購入したもの。
WD Red 3.5inch IntelliPower 2.0TB 64MBキャッシュ SATA3.0 WD20EFRX
NASは、あらゆるデータを一元管理するための倉庫として使用する場合も多く、実際にデータバンクとして利用している方も多いです。しかし、それだけにHDDの故障でデータが吹っ飛んでしまった時の損失は大きいので、最低限の故障への対策は練っておくべきです。RAID機能を使いこなせば、意外と他人事ではない万が一の事態に備えることができます。
NASがおすすめな人
QNAPのNASはほんとに家庭用におすすめ。バルクHDDプラス15000円ぐらいからで、PCやスマホのデータを1か所に集められる。クラウドと併用すると、各PC・スマホにデータを置く必要ないし、バックアップもとれる。
— 大貫剛 (@ohnuki_tsuyoshi) 2017年12月11日
NASは、パソコンを複数持つ方や、社内でファイル共有を頻繁にする方にとっては打って付けです。こういった複数デバイス間のファイル共有の手段としては、GoogleドライブやDropboxなどのオンラインストレージを使用する方法や、USBメモリやSDカードにファイルを落とし込んで、他のデバイスにそれを挿してファイル共有をするといった方法が一般的です。しかし、はっきり言ってそれを毎回毎回やっていたら、時間もかかるし面倒ですよね。
クラウドストレージを使用したファイル共有は、ローカルから一度ネットを介してクラウドへアップロード、その後、他のデバイスにクラウドからダウンロード…というオンラインとオフラインのファイルの「無駄な行き来」が生じることになります。これは、大容量のファイルを共有する場合になればなるほど、面倒になりがちです。しかし、自宅や社内のNASでファイルを共有する場合には、あくまでローカルのネットワークでファイルの受け渡し役としてNASが機能することとなるので、一度オンライン上にファイルを送信することになりオンラインストレージを利用する場合と比べても、圧倒的にファイルの共有速度は速く、便利なものとなります。
そして、USBメモリやSDカードにファイルを入れて、他のデバイスにコピーする場合と比べても、NASの利便性は高いでしょう。NASで行われるデバイス間のファイル共有は、「自動化」することができます。手動でファイルを出し入れするUSBメモリやSDカードを使用した方法よりも、ずっとシームレスにファイルの受け渡しが可能なのです。
NASの導入をおすすめしたい人は、前述のような効率の悪いファイルの共有を日常的に行っている人です。NASでファイルの共有やバックアップを自動化すれば、仕事も趣味も捗りますよ。
NASを購入しても意味がない人
そういや昔にNAS構築したこともあったけど、クラウドサービスのせいで必要なくなったな(´・ω・`)
— 猫狐(にゃんこ)@サーニャ動かしおじさん (@nyanko_mohumofu) 2018年7月23日
反対に、NASを購入してもあまり使っていない、使う機会がないという人もいます。今では、ネット上のファイルを保管しておけるクラウドストレージ(オンラインストレージ)のサービスも普及しています。GoogleドライブやOneDrive、Dropboxなどでは1TBものストレージを月額千円弱で利用することができます。NASを購入せずとも、それらのオンラインストレージでやりたいことができてしまう人は、NASを導入しても、クラウドストレージを上回るメリットやコスパを感じることはできないでしょう。
仕事の書類データを個人で管理する場合、パソコンを一台しか持っていない場合、パソコンとスマホでしかファイル共有をしない場合、サーバーとして運用する必要がない場合などが考えられますが、きちんとNASがないとできないことを加味した上で、購入を検討したいところです。
主要なNASメーカーの製品ごとの特徴
BUFFALOのNASの特徴
BUFFALO(バッファロー)はNASを販売するメーカーとして、数本の指に入るほどの知名度を持ち、国内で最も有名なNASメーカーの一つでしょう。バッファローが販売するNASは、ハードディスクとNASキットがセットになって"NAS"として販売されている「リンクステーション」というシリーズの製品です。性能で言えば、他社の高級ブランドのNAS製品と比較すれば、一歩足りないという印象こそあります。しかし、ハードディスクを別個で購入して用意する必要がないことから、NAS環境の構築までにかかるコストを非常に安い価格に抑えることができ、このコスパこそがバッファローの販売するリンクステーションシリーズの最大の個性であり魅力でもあります。
ビジネス用途でNASを購入した方の口コミには、動作の不安定さを訴える声も少なくはありませんが、家庭用として使用している方の口コミは好印象なものが非常に多かったです。総じて、ヘビーな運用で使用するよりも、家庭内での使用や簡易的なクラウド環境構築などといったライトな使用方法で、そのコスパが光るのかもしれません。
SynologyのNASの特徴
SynologyのNAS製品は、全てNASキットとして販売されており、内部のハードディスクは別売りで購入して使用するものとなります。ハードディスクに関して別途で購入する必要が生じるので予算はかさみますが、その分NASキットそのものとしてのシェアは最も規模が大きく、性能も「(製品概要に記載の)数字通りの動きをする」として信頼がおかれています。
購入して実際に運用している人の口コミが最も多く、ネット上でも使い方や活用法に関する知識が最も豊富です。外付けハードディスクなどといった普及度の高いストレージデバイスと違って、NASは何かと認知度も低く、「このメーカーのこの製品の使い方を知りたい」という場面で、情報収集に悩む場面が多いです。しかし、Synologyの製品はAmazonでNAS製品におけるベストセラーです。使用者が国内で最高クラスに多く、何か操作において分からないことが生じたとしても、ネットで調べて解決できる可能性が最も高いと言えるでしょう。
また、Synology社が独自に開発したDSM(Disk Station Manager)、Quick Connectというソフトウェアがとにかく使いやすいと評判です。NASは、流通し始めた当時は「パソコン上級者のみが使いこなせるマニア向け製品」という立ち位置でしたが、これらの付属ソフトウェアと対応するスマホアプリを使用すれば、GoogleドライブやOneDrive、Dropboxのようなクラウドストレージを使用するのと同じ感覚で運用することができます。難しい知識をかき集めて、一生懸命理解しようとして使えるようになる…という精神的な敷居も低く、まさに仕事に趣味に即戦力となってくれる。そんなNASキットが人気のSynologyというメーカーは、選択肢に加えておいて間違いないでしょう。
I-O DATAのNASの特徴
I-O DATAの販売するNASは、業務用というよりも個人でちょっと意識の高いデータ管理をする場合や、家庭で家族とメディアファイルを共有したい方など、ライトなニーズに対応する製品が多い印象です。そのため、I-O DATAのように家庭向けNASの人気製品を手の届きやすい価格で多数販売しているBUFFALOの製品が、購入の際の比較対象となることが多いでしょう。
I-O DATAの製品は、家庭や個人向けのNASの中でもマニアックなニーズに対応するものが多いです。例えば、
・同じ型番の製品でも1TBから12TB、HDD無しのものを選ぶこともできたり…
・オンラインストレージとの連携機能を専用アプリで強化していたり…
・RAID機能が搭載されていたり…
・世代管理バックアップや差分バックアップの機能が付いていたり…
NASを使用していて慣れてくる頃に欲しくなってくるであろう、痒い所に手が届くような少々先進的な機能を兼ね備える製品がとても多いです。しかし、いずれにしてもそれらの機能を活かしきるには、NASを使ったことがない初心者には少し難しそうというのが、印象として抱かざるを得ません。
「買って実際に使ってみて本当の品質が分かる」「数値では分からない体感での使用感」という印象のギャップが生じやすいのがNASです。何かと目を引くマニアックな機能を持つ製品が多いI-O DATA社のNASですが、初心者から上級者までどんな人にも迷わず勧められるかといえば、人によるというのがレビューや口コミから感じざるを得ない印象です。
QNAPのNASの特徴
QNAP社が販売するNAS製品の特徴としては、価格と性能のバランスが優れていて、そこまで高級なラインナップではないにも関わらず、上級者・初心者問わず幅広い活用シーンに対応できるという万能さがあげられます。コストパフォーマンスだけで見るとBUFFALO社やI-O DATA社の販売する安価なNASには見劣りしますが、その代わりに全体的な傾向としてその性能の安定感に対するユーザー評価はワンランク上という印象です。Synology社のNASのように、独自に開発された専用アプリケーションが豊富に存在し、カスタマイズ性の高さや機能の拡張性の自由度が高い点も、人気の理由です。
結局、どのNASが一番おすすめ?
各社のNAS製品の特徴についてここまで解説してきましたが、結局のところどのメーカーのどのブランドのNASが最も自分のニーズに合っているのか。混乱している方も多いかと思います。
そんな方に向けて最もユーザー評価が高く、機能やコスパなど様々な観点からおすすめできるNAS製品を、以下の記事では比較・考察しています。どれを買えばいいか迷っている方はぜひご覧下さい。
まとめ
いかがでしたでしょうか。この記事ではNASとは一体どんな機器なのかという基本的な概要から、どんな人におすすめできるグッズなのか。そして、国内で最も有名で主要なNASメーカーの製品の特徴などを解説していきました。
NASは趣味で閲覧するメディアファイルの管理から、業務で複数人で使用する仕事用のファイルの共有までとても万能です。GoogleドライブやOneDrive、Dropboxなどといったオンラインストレージでは、あと一歩やりたいことができない…という方にも非常におすすめですよ。
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