Culture

おさんぽ案内人が行く長崎散歩、坂の街に垣間見える異国情緒 【動画ライター】

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横浜、神戸、函館など明治の開国期に開港した港町に対し、長崎は鎖国していた江戸期に唯一、海外へ開かれていた港町である。江戸時代の異国人街の名残から、明治期の居留地の欧風建築群へと、時代をたどりながら街を歩けるのが、長崎の散策の魅力といえる。

港周辺に残る江戸期の交易の足跡

出島は鎖国時代の約200年間、日本で唯一西洋に開かれていた貿易の窓口である。もとはキリスト教の布教を禁ずるために、市内に雑居するポルトガル人を集めた場所で、1639年(寛永16年)の鎖国後は平戸のオランダ商館が移されたのを機に、西洋との貿易拠点となった人工島だ。

敷地内には料理部屋や乙名部屋、オランダ商館長の事務所兼住居だったカピタン部屋などが並び、順に江戸・幕末・明治の建物をたどれる。ミニ出島は当時の15分の1の大きさで出島を再現。シーボルトの専属絵師だった川原慶賀が描いた『長崎出島之図』を参考に造られ、扇形の人工島の形状がよく分かる。

ミニ出島。周辺の道路には旧出島の範囲も表示

新地中華街はもとは江戸時代中期、交易のあった中国からの貿易品の倉庫を建てるために、海を埋め立ててできた街。風水に基づいた東西南北の中華門からのびる十字の通りには、中国料理店や菓子、雑貨など約40店舗が軒を連ねている。

新地中華街。福建省の協力による石畳が敷かれている

南門を出た正面は、蘇州の伝統的な建築様式の湊公園で、先に続く福建通りには唐人屋敷の大門が遠望できる。長崎は江戸期に中国との貿易を独占的に行っており、唐人屋敷は中国人が住んだエリア。大門はその境に立ち、遊女や僧侶以外は自由に行き来できなかったという。

坂を登り下りして開国期の東山手へ

東山手には居留地時代、イギリスやフランス、アメリカの領事館が置かれ、領事館の丘とも呼ばれていた。東山手洋館群へ続く坂の名は、開国後も長崎の人々が東洋人以外を「オランダさん」と呼んでいたことに由来して、当時は多くが「オランダ坂」との名称がつけられていた。

オランダ坂。振り返ると夜景が望める稲佐山の山頂も見える

坂の入口の東山手甲十三番館は1894年(明治27年)頃築で、賃貸住宅としてホームリンガー商会の職員、フランス代理領事が住んでいた。隣接の東山手十二番館は1868年(明治元年)築で、ロシアやアメリカの領事館、宣教師住宅などに使われた。それぞれ幅の広い廊下と大きな応接室などに、当時の名残が見られる。

東山手甲十三番館。建物は無料休憩所にもなっている

オランダ坂を下り赤レンガの塀を回り込むと、長崎孔子廟へと出る。1893年(明治26年)に建造された、日本で唯一の本格的中国様式の霊廟。大成殿は孔子座像が祀られる正殿で、堂に掛かる幕に記された論語の言葉「有教無類」は、人は教育によって違いが出るもので生まれつき差があるわけではないと示している。

孔子廟。原爆にも耐え建立時のすがたをとどめる

グラバー園に見られる外国商社の躍動

市電が走る大浦石橋通りから鍋冠山の斜面を登りきると、グラバー園に到着する。旧グラバー住宅、旧リンガー住宅、旧オルト住宅を中心に、市内に点在していた6つの明治期の洋館を移築復元した施設で、斜面を下りながら点在する洋館群をたどることができる。

園の高台からは三菱重工長崎造船所のドックを一望

中腹にある旧リンガー住宅は、貿易や保険、海運などを手がけたホーム・リンガー商会を設立した、フレデリック・リンガーの旧邸。建物の前面は、角石の列柱で支えられ御影石を敷いた吹き放ちベランダで構成され、西側を正面にしているため港の展望が素晴らしい。

旧リンガー住宅。木造で外壁は石貼りの造り

山麓に位置する旧グラバー住宅は、貿易商でグラバー商会を設立したトーマス・ブレーク・グラバーが居住した、現存する最古の木造洋風建築。接客用サロン・別荘風の住宅を増改築して住居に仕立て、温室も増築時に設けられた。石造の床やレンガ製の煙突、漆喰塗の外壁に日本瓦と、和洋折衷のデザインが特徴である。

旧グラバー住宅。かつては敷地内の松の木が目印だった

園の名にもなっているグラバーは、東アジア最大の貿易会社であったジャーディン・マセソン商会の商人として来日した。氏は造船や炭鉱など産業立国に尽力、武器商人でもあり坂本龍馬率いる亀山社中や薩摩藩と取引して、明治維新の後ろ盾にもなっている。

邸のそばの展望所に、市街を見渡すように配されたグラバーの像。江戸期から明治期にかけて対外的な変遷を繰り返した長崎の街を、まるで見守っているかのようでもある。

長崎てくてくさんぽ

おさんぽTV 朝日堂チャンネル

CREDIT
Videographer / Writer :カミムラカズマ
Support :のだ ゆうた

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