オンラインを活用して新人研修を成功させる!Z世代の特徴に合わせた運営方法

小澤 美佳
公開: 2022-06-07

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コロナ禍になり3度目の春を迎えました。当時は手探り状態でオンライン新人研修を始めた企業の方々も、そろそろフローが確立し、それと同時に課題が明確化してきた頃かもしれません。

メンバー約400人がフルリモートで勤務する当社・株式会社ニットでも、当初は、オンライン研修において「心理面や理解度などの情報キャッチが難しい」という課題を抱えていました。それらの解消に向け、長い時間をかけて取り組んできた経験を元に、新人のオンボーディングまでの流れや、Z世代とも言われる新卒生の特徴を踏まえた育成ポイントなどをお伝えします。

オンラインを想定した新入社員研修の必要性

2022年3月に株式会社manebiが実施した調査では、「2022年の新入社員研修はどのような形式で実施予定ですか?」という質問に対し、対面研修との併用も含めると「オンライン研修を実施する」とした企業は6割強で、完全対面研修を実施予定の企業よりも上回る結果となりました。

また、2020年11月時点でリクルートマネジメントソリューションズが行った調査(出典:リクルートマネジメントソリューションズ:「人事306名に聞く、With/Afterコロナ禍の人事施策はどのように変わるのか」)では、研修におけるオンライン/対面の今後の使い分けを聞いたところ、「対面・集合研修よりも高い効果が得られるのであれば、オンラインで実施したい」という企業が87.5%と、オンライン研修を今後も前向きに導入しようとしていることが分かっています。

新型コロナウイルス流行をはじめとした変化の激しい時代であり、働き方改革が促進されている今、企業は、オンラインを想定した新人研修のノウハウを身につける必要があると感じます。

フェーズで区切った目標設定と2つの注意点

オンラインで新人研修を行う際の進め方を、当社を例に、詳しくご紹介していきます。

新しく入社してきた人を組織に定着させ、現場での戦力化を図ることを「オンボーディング」と呼びます。それを成功させる鍵となるのが、フェーズを区切り、段階的な目標設定を定めるということです。

これは、当社での失敗から得た教訓でもあります。というのも、当社でもフェーズで区切らない教育を行っていた時期があったのですが、その頃に入ってきたメンバーが、短期間で辞めてしまうということがあったのです。その原因として、始めから高いレベルの目標を設定してしまっていたために、新人にとって大きな負担になっていたのだろうということに思い至りました。人の育成において念頭に置いておくべきことは、「段階を踏んでいくことが大切である」ということを痛感した出来事でした。

そのような失敗を踏まえ、現在では以下のように目標を設定しています。

新人研修のフェーズごとの目標と取り組み例

当社では、「新メンバーが独力で業務を獲得し、自律的に働ける」状態を「オンボーディングに乗っている」と定義し、入社から2カ月でそこまでに達することを目標にしています。(※「オンボーディング」とは、新入社員や中途入社社員を企業にとって有用な人材に育成する教育施策やプログラム)

さらに上記の通りフェーズを区切り、新メンバーが業務の軌道に乗るようにサポートをしていきます。それぞれのフェーズごとに、「何を行う必要があるのか」「どのように育成担当者が新人に対して対応すべきか」といった具体的な内容を作り込んでいくといいでしょう。

注意点 ①目標の示し方に配慮

ここで注意したいのが、「これができるようになって当然」というメッセージを与えるような研修は行わないこと。このようなメッセージがあると、「自分はこの企業ではやっていけないかもしれない」という不安を招くことになりかねません。そうなると、その引け目から、「誰にも相談できない」状況に陥ってしまうことになりかねません。組織に入ってすぐの新メンバーのオンボーディングが順調に行くことは「まず無い」と思っておきましょう。

しかし、これは決して「高い目標を与えるな」と言うことではありません。「目標の見せ方」に配慮してみるということです。「最終的にはここまでできるようになってほしい」という目標は伝えた上で、そのためには、「1カ月間でここまで達成してほしい」「そして次の1カ月はここまで……」と、上で述べたような段階ごとの目標を併せて伝えることが重要です。

注意点 ②理解度にあわせたコミュニケーションと育成担当者の選出

リモートでは対面のとき以上に情報をキャッチすることが難しいものです。そのため、それぞれの習熟度・理解度に応じて、コミュニケーションの内容や頻度を変える必要があります。

例えば、新卒社員と中途入社社員では、前提スキルや管理職側の期待が以下のように異なります。

◆新卒社員
社会人のイロハなど含め、何も知らない前提。業務だけでなく、社会人としての基礎スキルを身に付けてほしい。
◆中途入社社員
社会人経験があるという前提。それにプラスして、本人の得意を活かしてほしい。

これらを踏まえた上で、新卒/中途入社社員それぞれの育成担当者を決定するといいでしょう。経験値だけでなく、性格面も新人育成には影響するため、慎重に選びましょう。

育成担当者選出のポイント
◆新卒社員
手取り足取り教育出来る人。所謂、面倒見が良い人が理想。
◆中途入社社員
現場の配属部署で、得意を活かせるように、何でも聞けるような人。

このようにして決定した担当者は、OJTでその会社の流儀と仕事の進め方を伝えながら、オンボーディングに乗せることを目指しましょう。

管理職・育成担当の心得3つ。キーポイントは「性善説」

オンラインでの新人育成においては、管理職・育成担当者が、以下の3つの心構えを持って接してほしいと思います。実践することで、「会社に馴染みにくい」「突然、音信不通になってしまう」というような新人離れを防ぐことができるでしょう。

心得1 ▶「オンラインでも何でも出来る」と信じる

「対面で会ったことがないのに、オンラインだけで信頼関係を作ることできるのか不安」といった声をよく耳にします。しかし、これは対面でマネジメントしていた頃と比べているだけなのです。当社では、面接から入社後の育成、事業運営まで全てをオンラインで行っており、基本的に対面で会ったことがない方ばかりです。それでも、「オンラインでもあたたかみを感じられるから」という理由で組織に所属し続ける選択をしている人が多くいます。

そもそも、「テレワークで上手く仕事が出来るのか」と不安になっているのはマネージャー(管理職)だけ、ということも多いように感じます。

心得2▶「仕事をしている」と信じる

テレワーク下では、「メンバーがちゃんと仕事をしているのか不安になる」という話もよく聞きます。しかし、仕事をサボりがちな人は、たとえオフィスにいても家にいても同じだと私は思うのです。サボっているのでは……と疑うよりも、まずは「仕事をしている」と信じましょう。

それよりも、テレワークの場合は長時間労働の危険があるということを心配するべきでしょう。「いつでもどこでも仕事ができる」環境の元では、オンとオフの切り替えられずに働き過ぎてしまい、体調やメンタルを崩してしまうケースもあります。特に新人の場合は「頑張らないと!」という意識が強いため、働く時間にも注意を向け、メンバーのケアを意識しましょう。

心得3▶「褒める」コミュニケーションで信頼関係を構築する

「信頼関係を構築して、メンバーのやる気を生み出す」ことが、自律的な仕事への意欲につながります。メンバーを観察し、チャットなどで「さっきの商談、良かったよ」「作ってくれた資料、すごくいいね」など、【1日、1褒め】を心がけましょう。テレワークのときは、オフィスで仕事をしていたとき以上にその姿勢を示すことがポイントです。

これらの3つの心得は、新人とのコミュニケーションの基本であり、日々の積み重ねが大切です。

オンライン新人研修×Z世代のマネジメント。3つのポイント

今年の新卒社員は「Z世代」とも呼ばれ、当社にも2名が入社してきました。Z世代の社会進出が始まる中、「他の世代とはどのような違いがあるのか」「仕事に対してどのような価値観を持っているのか」を知りたい人事や現場管理職の方も多いと思います。ここでは、彼らの特徴から、マネジメントのポイントを考察していきます。

Z世代のマネジメントポイント①「つながり」を感じられる環境作り

Z世代の人たちは「仕事よりプライベート」「個人主義」というように、仕事や会社に対してロイヤリティがないイメージを抱いている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実際はそうではなく、むしろ「誰かとつながっていたい」と感じる傾向にあると私は考えています。それは、SNSなどのオンライン上で気軽につながったり、コミュニティなどを通じてリアルでの接点も多く持とうとする行動にも表れていると思います。

特にオンライン研修では、入社した実感が得にくいもの。「コミュニケーションが取りにくい」と感じる新入社員もいるでしょう。そのような新人に対して、ちゃんと「つながり」を感じさせてあげられているかを意識してみましょう。

◆具体策の例◆
①歓迎のメッセージを自宅に届ける
つながりを重視し、他者にどう見られるかを気にするZ世代には、歓迎の気持ちや「見てるよ」ということをしっかりと表現することが効果的です。例えば、メッセージカードや企業のオリジナルグッズなどが入った「ウェルカムボックス」を、入社前にサプライズで自宅に届ける企業もあります。

②ビデオメッセージで歓迎する
当社では、社長が新人それぞれのご家族とあいさつをするのが恒例となっています。さらに、今年の入社式ではご家族からの温かいビデオメッセージをサプライズで流す演出をし、2人の入社に対しての喜びと期待を伝えました。

歓迎しているムードを演出し、安心感や連帯感を抱いてもらうことが大切です。これは、日々のコミュニケーションの中でもできます。それは、とにかく声をかけてあげることです。日報に対してリアクションをしたり、「この前の仕事、すごい良かったね!」と一言声をかけるだけで、つながりは感じられるものです。このように、組織全体で新人が働きやすいと思える環境を作り出すことで、会社へのロイヤリティが高まっていくのだと思います。

Z世代のマネジメントポイント②寄り添うコミュニケーション

Z世代は、インターネットを駆使したり、コミュニティを通じて情報を収集したりと、情報の大海原の中で上手く波乗りをしている人が多いことに驚かされます。そんな彼らには、コミュニケーションを取りながら個々の能力を見極め、伸ばしていくことが非常に効果的です。

Z世代は日常的に多様な情報に触れているため、自分の考えをオープンにすることにも慣れています。「昔はこうだった」とか「こうやるものだ」などと、一方的な目線で指示を出すのではなく、同じ目線に立って意見を求めることで、思いもよらない観点やアイデアを得られ、それが結果的に会社の利益につながることもあるでしょう。

Z世代のマネジメントポイント③働く環境の整備

Z世代の特徴は、「自分らしさを大切にする」「承認欲求が強い」「プライベートを大事にする」という点が挙げられます。そんな彼らと共に強い組織を作り上げるには、以下のような環境整備が重要であると思っています。

・ワークライフバランスを意識した制度整備
・効率化・生産性向上に向けた仕組み作り
・SNSを活用した採用活動
・オンラインでもつながりを感じられる施策
・オープンなコミュニケーション
・新人たちを受け入れ、認める風土醸成 等

多様な思考を受け入れ、必要に応じて柔軟に環境を整備していくことは、Z世代だけでなく既存の社員のエンゲージメント向上にもつながるでしょう。

枠にとらわれない強い組織作りを!

オンライン研修のポイントと、Z世代の特徴を押さえたマネジメントのコツをお伝えしました。これは、「この世代は〇〇だから△△だ」と先入観をもって接するためではなく、あくまで、Z世代の特徴をつかむことで、仲間として受け入れ理解していくための一指標です。Z世代に限らず、どの世代の社員とも、積極的なコミュニケーションを図りながら共に組織を作っていくと、その先には想像もしなかったようなイノベーションが生まれると信じています。新しい組織の在り方を企業全体で創り、強い組織を目指しましょう!

株式会社ニット 広報
小澤 美佳
2008年に株式会社リクルート入社。リクナビ副編集長として数多くの大学で、キャリア・就職支援の講演を実施。採用、評価、育成、組織風土醸成など幅広くHR業務に従事。2019年にニットに入社。現在、広報に従事する傍ら、オンラインセミナーの講師やイベントのファシリテーターを実施。直近の1年間でメディア執筆100本以上。Twitterは2.9万人のフォロワーを保有している。副業で嘉悦大学の大学講師も務めている。

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