近年、世界中の注目を集めているメタバース。2021年10月にFacebook社が社名をメタ・プラットフォームズ(Meta)に変更すると発表したこともあり、2021年に行われた最大級の家電見本市、CESでもホットなテーマだった。
日本においてもメタバースへの取り組みは始まっており、このたび凸版印刷がリアルとバーチャルが融合したメタバースショッピングモールアプリ「メタパ」を開発した。
メタバースというと、VRゴーグルやコントローラーを用いて仮想空間に入るサービスが多いが、メタパはスマホさえあればメタバースにアクセスできる。
ポケットに入るメタバースがメタパのコンセプトだ。
メタパのHPはこちら: https://metapa.app/
新しい顧客体験を創造する
メタパはアバターを操作して、バーチャル空間に構築された店舗を巡ってショッピングできるアプリだ。
遠隔地の友人とメタパのバーチャルショッピングモールにアクセスすれば、音声会話やテキストチャットしながら一緒に買い物が楽しめる。
オンラインで買い物をする点について、既存のネットショッピングと同じように見えるかもしれないが、ECサイトとメタパの顧客体験は大きく異なる。
ECサイトでのショッピングは便利だが孤独である。商品を探し、選び、決済するプロセスは合理的で「遊び」がない。顧客体験は個人的かつ限定的だと言えるだろう。
しかしメタパでの買い物は、商品を手に入れるだけでなく、そこに至るプロセスに醍醐味がある。遠隔地の友達と一緒に買い物をする顧客体験だ。友達と一緒にバーチャル店舗で商品を探し、迷い、相談し、選ぶ楽しみがあるのだ。
ECサイトがカタログショッピングだとしたら、メタパはショッピングモールである。
1人で商品を選ぶのではなく、みんなでバーチャルショッピングモールへと買い物へ出かけよう。それがメタパの提供する新たな顧客体験、これからのお買い物のカタチである。
バーチャル店舗で商品を確認できる
メタパでは利用者がアバターを操作してバーチャルショッピングモール内を歩き回り、気になる商品を手に取って360°じっくり確認できる。
3D化された商品をグリグリと動かせるので、商品写真を見るよりも情報量が多く臨場感が高まる。商品の裏側や「底」など、いつもなら確認しにくい角度からも閲覧できるので新鮮だ。
加えてAR機能も搭載しているので、購入予定の家具などを部屋に置く際のレイアウトやサイズ感をイメージしやすい。
自宅でメタパのAR機能を活用すれば、買ってみたけれど圧迫感があるとか、カラーリングが部屋に合わないといったミスマッチを防止できる。設置場所の記憶をたよりに実店舗に足を運んで買い物するより、購入後の感覚のズレが少なくなるに違いない。
メタパに陳列されている商品は出店企業のECサイトにリンクされているので、スムーズに決済可能だ。
リアルとバーチャルが融合したショッピング
バーチャルショッピングモールの店舗構造は抽象化されているが、実在するリアル店舗とほぼ同一のレイアウトをとっている。
例えば2022年1月時点においては、スタートアップ企業でリリースされたばかりの商品を扱うb8taが出店し、メタパ上の店舗と実店舗がリンクしている。そのためメタパ内の店舗を訪れることは実店舗に足を運ぶのと同じような体験だと言える。
参考:https://b8ta.jp/
これが時間と空間を超えたリアルとバーチャルの融合、デジタルツイン体験だ。
インテルも出店する
2022年2月15日から1か月間、メタパとb8ta渋谷店内にインテルのブースが開設される。インテルCPUを搭載したPCが展示され、リアル店舗のような商品との出会いをバーチャルで体験できる。
メタパは出店する企業やサービスを募集しており、ショッピング以外の要素も増やしていくとのことだ。
今後は、リアル店舗に設置したロボットをメタパから操作して、遠隔地からお店を訪れたかのような体験ができる機能や、商品の疑似体験ができる「ショールーム」などを構築予定。バーチャル店舗に店員アバターを設置して接客することも検討しているという。
アバターを活用することで顧客が可視化されるため、将来的にはファンコミュニティを作ることもできるだろう。
・ ・ ・
メタパの取り組みはリアルとバーチャルの両方にまたがって商業空間を拡張するものだ。
臨場感が高い反面、時間と空間の制約があるリアルと、抽象的だが時空を超えてアクセスできるメタバース。両者の利点を上手く取り入れ新たな顧客体験を創造する。しかもスマホだけで参加できるので、メタバースに付きものの初期投資はほぼ不要である。
メタバースを体験するのにスマホ一つで済むという間口の広さは他に類を見ないだろう。今後はメタパに実装される新たな機能や出店企業に期待である。
きっと新たな顧客体験を提供してくれるに違いない。
凸版印刷株式会社