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映画「ホムンクルス」で話題! 頭に穴を開ける身体改造「トレパネーション」解説【動画ライター】

身体改造カルチャーを追って20年以上、今回は、2021年に公開された映画『ホムンクルス』に登場する頭蓋骨に穴を開ける身体改造「トレパネーション」を紹介する。

ホムンクルス』とは、累計発行部数400万部を超える漫画家・山本英夫の人気漫画を映画化したものである。

綾野剛が演じる主人公「名越」はトレパネーションによって、他人のトラウマが異形の怪人ホムンクルスとして見えるようになる。

映画「ホムンクルス」より ©︎2021 山本英夫・小学館/エイベックス・ピクチャーズ

異形の怪人ホムンクルスは創作上のフィクションだが、頭に穴を開ける身体改造トレパネーションは実在している。

私は情報提供者として『ホムンクルス』の原作漫画に関わっており、その情報は実際に頭に穴を開けた人たちと直接会うことで収集してきた。

映画「ホムンクルス」より ©︎2021 山本英夫・小学館/エイベックス・ピクチャーズ

トレパネーションの現場からのレポートをお送りする。

トレパネーションとはなんだろうか?

トレパネーションとは、脳を覆う硬膜には傷をつけることなく頭蓋骨のみ穴を開ける行為である。そんな危険な行為を行って、大丈夫なのかと思うかもしれないが、現代の医療現場では脳腫瘍、硬膜外血腫、頭蓋骨折などの治療のために日常的に行われている。(※1)

一方、人類学では、トレパネーションは「頭蓋穿孔(とうがいせんこう)と呼ばれ、人類最古の外科手術として約8千年前から行われており、世界各地から「穿孔頭蓋骨(穴の開いた頭蓋骨)」が発見されている。(※2)

頭蓋骨に穴を開ける行為は人類最古の外科手術

なぜ古代人は死のリスクを冒しても頭に穴を開けようとしたのだろうか?

意識の覚醒を目指していたのではないかと信じた人たちがのちに現代のトレパネーションを復活する。

その最初の実践者となったのは、60年代のアムステルダムで当時、医学生だったバート・フーゲスだ。彼は、頭に穴を開けると意識が覚醒すると主張し、実際にセルフトレパネーションを行った。その事件には、多くの人たちが衝撃を受け、ジョン・レノンも頭に穴を開けることを真剣に考えたという。(※3)

私は、1965年にバートが自分で頭に穴を開ける現場に立ち合い、そのすべてを撮影した写真家コリ・ヤニのもとを訪ねている。

頭の穴に触れると「拍動」と呼ばれる脳の鼓動がわかる

頭に穴を開けると意識が覚醒するのか?

バートが穴を開けたことに影響され、1970年にはイギリス在住の女性美術家アマンダ・フィールディングもセルフトレパネーションに挑んだ。彼らの行為は、大いにマスコミを賑わせたがいつしか忘れられ、都市伝説的に語り継がれるのみであった。

1990年代半ば、インターネットの普及とともに、当時のトレパネーションの実践者たちが実在することが判明し、再び世間の関心を集めることとなった。

ネット時代のトレパネーション・ムーブメントを支えたのは、1973年にアメリカ人として初めてセルフトレパネーションを行なったピーター・ハルヴォーソンであった。彼は、意識の覚醒のためにトレパネーションを希望する人たちをサポートする団体ITAG(アイタッグ)を結成し、個人の自由で希望の医療が受けられる南米諸国に彼らを斡旋し、トレパネーションの実践者を増やした。

私は、フィラデルフィアにピーターを訪ね、ITAGのサポートで頭に穴を開けた人たちと会うことができた。

ピーターの幼馴染みジャスティンは宝石店オーナーとして大成功していた。近所に住むペットシッターのクリスティンは、穴を開けることで夫を失った悲しみから脱することができたと語った。また、ニューヨーク在住のジョナサンは「大人のままで子供の感受性を取り戻したのさ」と自分のトレパネーション体験を説明した。

さらに額に直径3センチの穴を持つロバート・ランドは、穴がきっかけで若い彼女ができて幸せに暮らしていた。

世界最大級の直径3センチの穴を持つロバート・ランドさん

穴を開けた人たちは皆、そのことが人生の転機となって、ハッピーになったと強調する。

とはいえ、意識の覚醒は自己申告で科学的に立証できるものではない。彼らの話だけでは、オカルト的な怪しい話だと思われるかもしれない。

しかし、ピーターはITAGの本当の目的は、トレパネーションの効果を科学的に立証することだと強調する。そして、ITAGは、サポートした人たちのトレパネーション前後の脳の精密検査データをロシアの研究所に提供しているという。

私は、さらにロシアのサンクトペテルブルクにあるトレパネーション研究所に飛んだ。ユーリ・モスカレンコ博士は、オステオパシーと呼ばれる整体の効果を科学的に立証した人物として知られ、トレパネーションはアンチ・エイジングに効果があるかと調べていた。

オステオパシーとは、頭蓋骨の縫合部を指で刺激して、病気を発見したり、治療したりするものだが、さらに頭蓋骨に穴を開けることで、痴呆症の予防などに効果があるのではないかというのだ。

ロシアのトレパネーション研究所にて

・ ・ ・

頭に穴を開けるなんて野蛮な行為だと思われるかもしれないが、現在、発展目覚ましい脳コンピュータインターフェイスにおいても、脳に電極を接続するためには頭蓋骨に穴を開けることから始めなければならない。

トレパネーションの精神的効果はいまだ謎のままだが、だからこそ、想像を絶する未来につながる可能性を秘めたものとして注目されている。

映画「ホムンクルス」

2021年8月27日 Blu-ray & DVD 発売


※トレパネーションは極めて危険な行為です。 絶対に真似をしないでください。
※1
河本啓司『アトラス頭蓋骨学』(メディカ出版)
※2
吉岡郁夫『身体の文化人類学』(雄山閣出版)
※3
ケロッピー前田字幕監修ドキュメンタリー『ア・ホール・イン・ザ・ヘッド』(アップリンク)
CREDIT
Videographer / Writer / Cast :ケロッピー前田
Support :のだゆうた

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