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食べたくなる「奇跡のセッケン」とは? 障害者の職人が能力発揮

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みずみずしさに思わずみとれる「キウイ」や「オレンジ」。そんなフルーツがぎっしり詰まった「フルーツキャンディーバー」には、かぶりつきたくなる。しかし、いくら美味しそうでも実際にはできない。全てセッケンだからだ。

こうした魅力的な商品は、障害者の手作業の積み重ねで作られる。その完成度の高さから「奇跡のセッケン」「魔法のセッケン」と評されることもある。

舞台は特例子会社

セッケン工場の所在地は、神奈川県小田原市穴部。室町時代の武将・北条早雲像がある小田原駅までは都心から電車で2時間ほど。さらに伊豆箱根鉄道大雄山線で4駅乗り継ぐ穴部駅が最寄りだ。

同駅から徒歩1分ほど歩くと、緑色の屋根を頂く2階建ての建物が見えてくる。その1階がセッケン工場になっている。

同工場を運営するのは、2010年10月に設立された株式会社「リンクライン」。情報サービスを営むコムテック(東京)の特例子会社として設立された。

特例子会社では、障害者の能力や就労条件に応じた環境整備など特別な配慮を実施する。働きやすい状況下で雇用した障害者は、親会社の雇用数としてカウントできる。

最大で月産2万個

民間企業に義務づけられている障害者の法定雇用率は、2021年3月に2.3%に引き上げられる方針となっている。現行の0.1ポイント増で、将来的には更に上昇していくとみる福祉関係者は多い。

本社内で障害者ができる事業を仕分けして任せるという対応を取る会社もあるが、特例子会社の活用も選択肢の一つになる。

コロナ禍以前のリンクラインは、最大で月産2万個のセッケンを作っていた。競争力のある商品を生み、うまく事業展開をしている特例子会社として注目を集めた。多くの企業からの視察を受け入れてきた。

人気はキャンディーバー

ただし、商品の販売において「障害者ストーリー」を全面に出すことはない。善意に頼って買ってもらうのではなく、あくまで魅力的な商品だから購入してもらう方が、事業として発展すると考えるからだ。

2010年に設立した当初、雇った障害者は16人だった。販売中の「フルーツキャンディーバー」の現物を目にすると信じられないが、当初製造することができたのは、四角いセッケンだけだった。少しずつ技術を向上させて、バラやハート形などの「アートソープ」を手がけるようになった。

さらにOEM(相手先ブランドによる生産)の受注を伸ばしつつ、2016年に自社ブランド「li'ili'i」(リィリィ)を立ち上げた。「フルーツキャンディーバー」(税込み1,100円)は、このリィリィの人気商品だ。

新ブランド立ち上げ

しかし、新型コロナウイルスは、伸びていたリンクラインの販売も直撃した。手を洗う時に使うセッケンであり、コロナが追い風になっても不思議ではないが、ネット販売が少ないのが響いた。売上のほとんどを占める雑貨店やギフトショップのリアル店舗が閉店し、そこでの需要が蒸発した。

打開策の一つが、新ブランド「taka D.A.」(テイクディーエー)の立ち上げだ。リィリィは、見た目の可愛らしさから若い女性に好まれる傾向がある。より大人な層を取り込みたいと打ち出した。

第一弾の商品群としたのが「COCKTAIL SAVON」(カクテルサボン)。モヒート、ソルティードッグなど10種類を用意し、本物のカクテルのような本格的な香りを再現した。1個1,320円(税込み)で4月から販売を始めた。

YouTubeチャンネルを開設

「taka D.A.」を主導した神原薫会長は、YouTubeに「KAMKAM Channel」を開設。リンクラインや新商品の説明に加え、ギターを弾く様子などもアップしている。

そこには、次のような意図を込めた。

「障害者を雇う企業の会長だからといって、障害者と共に生きているからといって、何ら特別な、特殊な人間ではない」

神原会長は、もともと親会社「コムテック」で人事労務の仕事に就いていた。リンクラインの仕事をすることになり、障害者に本格的に向き合うことになった。その分、何ら構えずに彼ら彼女たちと接することができたと振り返る。

会長「彼らは共に働く仲間」

リンクラインは設立から10年で何を残してきたのかを、神原さんに聞いた。

「障害者の可能性ですかね」と最初に答えた後に、次のように続けた。

「普通の健常者と言われる方々にはない、働く意欲、独創性、やりがいだったりという生きることへの真剣さを教わりました。それはひょっとしたら健常者以上かもしれない」

「(障害者の)法定雇用率を取っ払ってもいいぐらい、普通に働ける形になればいいなと思っている。それぐらい彼らは会社にとって共に働く仲間だし、会社を伸ばしてくれる可能性をじゅうぶんに持っている」

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「奇跡のセッケン」は障害者が持つ無限の能力と、障害者と健常者が共につくる社会の豊かさを、一つの商品の形で示してくれているのかも?

CREDIT
Videographer/Writer :高野 真吾
SNS :にしまり

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