『今日の早川さん』『里山奇談』著者の里山ヒッチハイク・ガイド的一品【Moovooモノ語り】

COCO
公開: 2020-11-04

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連載

Moovooモノ語り

その道の専門家や著名人が愛用品へのこだわりと、それにまつわる物語を綴る連載、「Moovooモノ語り」。第18回目となる今回は、「今日の早川さん」や「里山奇談」の作者であり、漫画家/作家のCOCOさん。野山へと出かけて生き物を探す人たち、通称「生き物屋」にとって何よりも大切な手ぬぐいについて語ります。

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漫画家/作家
COCO
愛知県生まれ。漫画、文筆、写真家。主な著書に、本好き女子を描いて人気の『今日の早川さん』(1〜3巻)、クトゥルー漫画『異形たちによると世界は…』、写真とイラストを担当した『ずかん ハチ』ほか。

生き物屋の魂、百まで

「生き物屋」という言葉をご存じでしょうか。
単に生き物が好きと言うに留まらず、自分の足で野山へと出かけて自然の中で生き物を探す人達をこう呼びます。

虫が好きなら「虫屋」、さらに狭いカテゴリに拘って、蛾が好きなら「蛾屋」、カミキリムシが好きなら「天牛屋」など、同好の界隈では一種の名刺代わりとしても機能する呼称となっています。
私の場合は主に昆虫目当てですが、他にも爬虫・両生類、魚、鳥、と季節に応じて出逢えるものを求め、ほぼ毎週のように野山へと出かけています。


生き物屋の目的はもちろんお目当ての生き物に会いに行くことですが、観察だけで十分という人、採集して標本にする人、食材として、あるいは飼育するために持ち帰る人、とその行動は様々。
私は撮影が大きな目的ですが、目標としては子供の頃に感動したイメージの再現があります。

今ほど欲もなく純粋だった幼い頃、あのとき見た虫はもっと大きく美しく見えた。もっと生き生きとして、命そのものの輝きを放っているようだった。
そんな当時の驚きや慄きを忘れないよう、知識や経験の蓄積に溺れることなく素直な感動を表現したい、とそんな風に常々考えて撮影しています。

森の写真

フィールドワークのお供たち

そんなフィールドワークのお供の中で、カメラ機材を別にして最も大事なものといえば何でしょうか。

救急キットは大事ですね。いつ何時うっかり怪我をするか判りません。
ポイズンリムーバー? 野山にはスズメバチやマムシのような毒を持つ生物がたくさんいます。
もし刺されたり噛まれたりしたら、初動はとても大事です。虫除けに日焼け止めもないとひどい目に遭います。
真夏は水分と塩分摂取を疎かにすると、あっという間に命にかかわる状況に陥ります。


しかしこれらの必需品を除いて、嗜好をも満足させてくれるアイテムといったらなんでしょうか。
そう、手ぬぐいをおいて他にはないわけです。

フィールドワークのための道具

究極の答えは「手拭い」

ダグラス・アダムス著『銀河ヒッチハイク・ガイド』において、星間旅行に最も重要なものはタオルと書かれていますが、タオルを和名変換すれば手ぬぐいになるのです(断言)。
「持ち歩いてこれほどとてつもなく役に立つものはほかにないというほどお役立ちなもの」とあの本に書かれていることは真実なのです(私事ではありますが、拙著『今日の早川さん』4巻特別版では、この真理を世に広めようとオリジナル手ぬぐいをおまけとしてつけました)。

手ぬぐいの用途、それはまず手を拭くこと。
濡れたり怪我をしたり、はたまたバッタの吐く汁やアマガエル表皮の毒、ナマズやドジョウのぬるぬる粘液など、手を拭う機会は実に多いわけですが、この万能な布きれはそれ以外にも多様な使い途を備えています。
バンダナ代りに頭に巻いたり、水に濡らして首に巻けば、猛暑の中でも気化熱でわずかな涼を得られますし、道に迷いそうなときは何枚も持っていれば枝に巻いて目印に、数枚結んで繋げれば崖下の珍しい植物まで手が届くかもしれません。

また拾い集めたどんぐりを包むふろしき代わりにしたり、鮮やかな染め色のものは救難手旗にもなるし、暗い山深くで目立てば猪と誤って猟師に撃たれるような事故を防げ、濡らして振り回せばけっこうな武器にもなるので、深山に巣食う怪異に遭遇したときは(拙著『里山奇談』を参照されたし)撃退の可能性が増しますし、可愛らしかったり美しい柄のものならば、身に着けていれば出会った地元の老人が気をよくして採れたての野菜や果物を分けてくれることもあります。

手ぬぐいの写真

コレクター魂も揺さぶる色柄と個性

かように用途は無限大の手ぬぐいですが、実は持って出るのを忘れても別に痛くもかゆくもないという奥ゆかしさ、気遣いの要らなさが魅力です。

しかしなんといっても一番の魅力は、その色柄の多さから集めるのが純粋に楽しいことにあります。
これがタオルではそうもいきません。何よりかさばりますし。

手ぬぐいの色柄といえば、染物屋さんの作る伝統的なものから、百円ショップで手に入るようなチープでキッチュなもの、一期一会的な美術館や博物館のイベントアイテム、地方でのみ手に入る町興し関連のご当地キャラとタイアップしたもの、生き物好きなアマチュア創作家の手になるレアで個性的なアイテム、と集め始めたらきりがないわけです。

そして集めれば集めるほど、それは確実にフィールドワークを彩り、実り豊かなものにしてくれるのです。

森の写真
PICK UP!
  • お拾いもの|うみねこ通販
  • 二色染め手ぬぐい みどりの蛾 (山吹)

  • 税込1,980円
  • 職人さんが一枚ずつ丁寧に染める手ぬぐい

  • 職人さんが一枚ずつ丁寧に染めた、涼しげな手捺染の手ぬぐい。オオミズアオをはじめ、さまざまな蛾が美しくプリントされています。

PICK UP!
  • 早川書房
  • 今日の早川さん4〔限定版〕

  • 税込2,090円
  • 宇宙からの(?)謎の手ぬぐいもついてくる!

  • 本好きの女性たちが繰り広げる本好きあるある4コママンガ。
    4巻限定版には、オリジナルの手ぬぐいもついてきます。

PICK UP!
  • 株式会社KADOKAWA
  • 里山奇談 あわいの歳時記

  • 税込1,540円
  • "生き物屋"たちが里山で集めた現代版の奇譚集

  • COCOさんはじめ、生き物屋たちが里山で収集した不思議なお話たち。
    現代日本でも一歩里山に入るとそこは異世界。
    じわりとした怖さ、不思議さが満載です。


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