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映画「モルエラニの霧の中」は名誉や金じゃなく「残したかった」から生まれた

2020年2月17日渋谷にある映画美学校で、映画「モルエラニの霧の中」の完成試写会が開かれた。

トム・クルーズの大ヒット映画「ミッション・インポッシブルシリーズ」に最近ハマったという、決して映画通とは言えない私でも、3時間と長尺のこの映画に、どっぷりハマって見ることができた。

本映画の監督を務める坪川氏とは以前から親交があり、撮っていることを知った2017年から本映画の完成を楽しみにしていた。しかし、試写会を訪れた方々の多くは、もっと前から心待ちにしているといった様子。それは、試写会の会場入りする時の明るい表情と会場前で交わす坪川監督との言葉のやりとりから、ひしひしと伝わってきた。彼らは、この映画の制作に関わったボランティアの方々であったり、出資してきた方々だったのかもしれない。

2018年に亡くなった大杉漣さんの新作がみられることで、朝の情報番組などにも取り上げられ、にわかに話題になった映画「モルエラニの霧の中」。

企画、監督、脚本、音楽、編集、ほぼ全てを手がけたのは、トリノ国際映画祭グランプリなど数々の賞を受賞した坪川拓史監督。

大杉漣、大塚寧々、水橋研二のほか、菜葉菜、菅田俊、草野康太、久保田紗友、小松政夫、坂本長利、香川京子らが出演。

ステキな景色とステキな余白。見どころは7分半のエンドロール

本作品は7つの物語から構成されている。どの物語も、室蘭で出会った人から実際に聞いたエピソードを元に作った物語。その物語を。坪川監督ならではの映像美と、考える余白を残したストーリー構成で描かれている。

そして、監督がストーリーや名優たちの演技に見劣りしないもう一つの見所について語ってくれた。

坪川:一番の見所は7分半のエンドロールです(笑)。映画の撮影資金もいろんな方に出資していただいていますし、撮影スタッフとしても地元の人に加わってもらったり、出演者も務めていただいてる方もいます。何千人という方々に協力していただきました。

これまで単館系の味わい深い映画作品がメインだったとはいえ、坪川監督は国内はもちろん海外を舞台に、華やかな世界で活躍してきた映画監督。ヒット作「ハーメルン」公開後、東京を離れ、移住してまで撮りたがったのが本作品だ。

坪川監督自ら、企画を室蘭の観光協会と話し合い、協力を要請。その声に賛同した地元の人らと協力し、資金調達、撮影を行って行った。何がそこまで坪川監督を掻き立てたのだろうか?

坪川:僕は室蘭生まれです。東京で21年暮らしていて、震災をきっかけに2011年に里帰りしました。すると自分の知ってる室蘭とは、だいぶ様変わりしていました。
人口も減って、寂しい感じに見えました。ただ、素敵な場所もありました。そんな素敵な場所も、どんどん消えて行ったり、なくなって行ったりしてしまいそうでした。そして、街で会う素敵な人たちも引っ越していきます。せめて、そんな素敵な景色と、素敵な物語を映像で残したいなと思ったのが2014年でした。

2014年から映画の撮影がスタート。しかし、大きなスポンサーがあって潤沢な資金がある映画撮影とは違い、クラウドファンディングや地元の人からの応援がないと撮影ができない。そのため、撮っては待ち、撮っては待ち、を繰り返した。

撮影に4年半、編集に1年半、6年あまりかけて今年公開される予定。

※しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で、劇場公開の延期が決定。改めて公開されるのは、2021年2月なんだとか…

坪川:本当に出演者及び事務所の方々には、無理を聞いていただきました。撮影当初14歳だった久保田紗友さんや、竹野留里さんは20歳になり成人式を迎えました。2018年に亡くなってしまった大杉漣さんには、完成した作品をみていただけなくて、本当に見ていただきたかったなぁという思いがあります。

               ・ ・ ・

「時間がかかったからこそ」今では見られない景色や人の、新たな場面が「モルエラニの霧の中」には存在する。だからこそ、ミッションインポッシブルが大好きな映画通とは言えない私でも楽しめた。なぜここで、この手法での撮影なのか、なぜ白黒なのか、これは地元の人なのか、役者さんなのか、とも考えつつ、時には笑い、時には涙した。

坪川監督にとっての室蘭の美しさは、自分にとっては何なのか。

失いそうになってから大事さに気づくより、今考えることにした。

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