
落語、おすすめ10選 定番ネタからおさえよう
落語のおもしろい点は、同じ噺(ネタ・演目)が演者によってガラッと違う雰囲気になることです。筆者が個人的におすすめなのは、立川談志・古今亭志ん朝・桂米朝。みなさん名人とよばれ、人気を博していました。
この記事では、落語に興味がある初心者の方に向けて、落語入門に合う定番の噺(はなし)をご紹介します。名人たちのCDのほか、おすすめの本もピックアップしました。ぜひ参考にしてください。
目次
おすすめの落語の噺①:時そば
一つ目は「時そば」。噺の筋立てとしては釣銭詐欺の成功例を目にした男が真似をして失敗するという「間抜け落ち」にあたるネタです。
銭を払いながら唐突に「今、何時(なんどき)だい?」と尋ねて数え間違いさせようとしたら、かえって多く支払う羽目になるというシーンはどこかで耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
こちらの「まんがで読破シリーズ」はシンプルに噺の筋立てがまとめられているので、予習には最適です。もちろん予習なしで落語を聞いても楽しめます。紙書籍はコンパクトですし、電子書籍版を買えば瞬時にダウンロードして読めるのでおすすめです。
おすすめの落語の噺②:寿限無
こちらもよく知られる噺、伝説となった立川談志の集大成「寿限無」を紹介します。短い噺なので是非聞いてみてください。
- 日本コロムビア
-
立川談志ひとり会 落語CD全集 第23集「談志の五大落語家論」「寿限無」
-
21年に及ぶ高座から厳選!
-
永久保存版となる全50集のうち、23集だけをばら売りにしたものです。立川談志さんが寿限無を演じたらどうなるか?定番の噺がこんなに奥深い。
子どもの除災招福や長生きを願ってめでたい名前を付けたら、やたらと長くなってしまい呼ぶのに一苦労…という間抜け落ちネタですが、見どころは噺家の早口です。
寿限無、寿限無、
五劫の擦り切れ、
海砂利水魚の、
水行末・雲来末・風来末、
食う寝るところに住むところ、
やぶらこうじのぶらこうじ、
パイポ・パイポ・パイポのシューリンガン、
シューリンガンのグーリンダイ、
グーリンダイのポンポコピーのポンポコナの、
長久命の長助
こんな長い名前を噛まずに何度も呼んで笑いをとるのは、漫才でいうところの繰り返しによって笑いを誘う「天丼」技法に似ています。
落語入門として立川談志さんの高座から聞き始めると、耳が肥えるかもしれません。
おすすめの落語の噺③:死神
三つ目は「死神」です。これも寿限無の早口言葉と同様に、寿命のろうそくのイメージが広く知られている噺です。
死神と約束して死期を迎えた人間とそうでない人間を見分けられるようにしてもらった男が、約束を破ったせいで短くなった自分の寿命のろうそくの火を長いろうそくに移し替えるが…という噺。肝心の落ちには、噺家によるアレンジが多数存在します。
本来の噺では移し替えに失敗して男はそのまま死んでしまうのですが、成功したり成功した後で風が吹いて火が消えてしまうといったようにさまざまなバリエーションがあります。その中でも立川談志さんによる最も意地が悪い落ちがこちらです。
談志100席シリーズの一部である死神と鰻屋が収録されている一枚です。落語は生き物でライブ性があるもの。噺家によって導入部分の枕は違いますし、落ちや途中展開が変わる事もあります。
そのため完成された高座が存在せず、名人ほど全集が何度も作られる事になります。コンプリートを目指すならシリーズで統一して集めてもいいですし、気になる噺が収録されているCDから選んでもよいでしょう。落語の楽しみ方は自由です。
おすすめの落語の噺④:饅頭こわい
四つ目は「饅頭こわい」。こちらも一般教養の一部になる程有名な噺です。
嫌がらせをしてくる相手に自分の好物を偽って「いっぱい食わせる」ネタですが、本題よりもむしろ雑談シーンの方が重要で噺家のカラーが出ます。桂米朝さんの動画は本当に枕が長いのですが面白い。是非ご覧ください。
- ユニバーサルミュージック
-
桂米朝 昭和の名演 百噺 其の二十四 饅頭こわい/卯の日詣り/まめだ
- 税込み1,320円(Amazon)
-
人間国宝の名演!とくとご覧あれ
-
アナログLPに録音されていたものをCD化!芸が円熟を迎えた1970年代の高座を中心にまとめた桂米朝上方落語大全集から個別販売。上方落語の復興を目指した高座がここに。
桂米朝さんは立川談志さんよりも古い世代の落語家で、京都や大阪といった近畿を中心に活躍された上方落語の名手です。人間国宝に認定されたその話術は、聞き継がれる価値があります。
噺の枕には当時の世相が反映されていて、昭和世代の人には懐かしく感じる事もあるでしょう。
おすすめの落語の噺⑤:目黒のさんま
さんまは目黒に限るという落ちで広く知られる噺ですが、その知名度に反して実のところ成立の経緯が定かでないという特徴があります。
どうやら長期間にわたり噺家によりアレンジが加えられてきた結果、来歴が分からなくなったようです。
そのせいか、目黒で庶民的に料理したさんまを城で食べようとしたら手を掛け過ぎたり、冷めてしまってまずくなるという分かりやすいパートと、魚河岸のさんまよりも海から遠い目黒のさんまを好む世間知らずの殿様への風刺という二重構造があります。
これまで紹介してきた噺に比べると、やや笑いの質が複雑化しているといえるかもしれません。
五代目 古今亭志ん生さんの「替り目」・十代目 金原亭馬生さんの「目黒のさんま」・六代目 三遊亭圓生さんの「一人酒盛」・四代目 柳亭痴楽さんの「痴楽つづり方狂室〜恋愛編〜」が収録されています。
おすすめの落語の噺⑥:猫の皿
六つ目は「猫の皿」。高価な皿が猫の餌やりに使われているのを見た男は、何とかして持ち主に皿の価値を隠ぺいしたまま手に入れようとして一計を講じるが、逆手に取られて…という噺。これは現代にも通じる普遍性のあるネタです。
引き続き、立川談志さんの談志百席シリーズの一枚です。落語は特定の噺にファンが付くというより、落語家にファンが付くケースがほとんどです。
特に立川談志さんには熱心なファンが多く、「談志を聞きに行く」とまで言われるほどでした。そんな名人の全集です。BOX買いするのではなく少しずつ買いそろえるのも楽しいでしょう。
おすすめの落語の噺⑦:芝浜
七つ目は「芝浜」。大金の入った財布を拾った夫が堕落するのを防ぐため、あえて嘘をつく賢い妻とさっぱりした性格で愚直な夫の人情噺です。
落語は笑わせるだけではありません、こちらのように感動させる噺も沢山あります。
噺の落ちを聞くと、二人はこの先も幸せに暮らしただろうなと思わせてくれる名作。会社勤めが始まって給料が振り込みになってから、妻が家計を預かるようになったという言説がありますが、古典落語を見る限り日本人は昔から賢い女性が家計を守っていたようです。
立川談志さんと古今亭志ん朝さんは、落語界最後の大看板と呼ばれた二人。同じ噺を聞き比べてください。印象がガラッと変わります。誰もが認める名人芸、是非ご覧ください。
おすすめの落語の噺⑧:火炎太鼓
八つ目も引き続き人情ものの「火炎太鼓」です。短いので是非聞いてみてください。
芝浜と同様に、誠実だけど呑気でどこか抜けてる夫と賢い妻が登場します。この組み合わせは落語の定番で、関係性が逆転した噺は聞いたことがありません。
到底売れそうにない古ぼけた太鼓を仕入れてきたら、実は火炎太鼓という掘り出し物だった。お殿様の目に留まって高く売れたけど…という筋立てですが、落ちが9割の噺といえるかもしれません。
本稿ではおすすめの落語を紹介していますが、「落語の名作 あらすじ100」があれば大丈夫。落語の入門用として最適の一冊でしょう。
おすすめの落語の噺⑨:頭山
九つ目は、映像作家山村浩二さんの集大成「頭山」。これまでとは全く作風の違う噺です。
上方落語では「さくらんぼ」の題目で呼ばれ、その内容は非常にシュール。さくらんぼを種ごと食べたら、頭のてっぺんから木が生えてきて…という、これまで紹介してきた落語とは一線を画した展開の噺です。
噺の落ちもあってないようなもので、特殊な光景を話術で描いて見せる、芸が試されるネタ。CMやミュージッククリップで人気の山村監督による頭山は、絵本を動画にしたような作品です。
クオリティの高い映像作品なので、書架を飾るコレクターズアイテムとしても価値があるでしょう。
おすすめの落語の噺⑩:たらちね
最後におすすめする噺は「たらちね」。江戸落語から当時の文化が見える名作です。
大家の紹介でやたらと言葉づかいが丁寧な嫁をもらった男が、意思疎通ができずドタバタするという筋立て。関西の上方と江戸の言葉遣いの違いが勘違いギャグとなっています。
噺家にもよりますが、ひたすらすれ違い続ける会話に笑いが止まりません。
落語を通しで聞いたことがなくても、「ざぶとん持ってって!」で知られる笑点の大喜利は知っているという人は多いものです。
その中でも薄紫の羽織を着ているのが六代目の三遊亭円楽さんで、大喜利では腹黒キャラとして人気を博しています。そして、その師匠が上記CDに収録されている5代目の三遊亭円楽さん。すでに鬼籍に入られていますが、噺は残ります。こういった落語界の繋がりや、歴史を意識して聞くのもおすすめです。
生の落語を聞くには?
生の落語を聞くのなら、演芸場に寄席を見に行きましょう。
東京であれば下記の演芸場があります。
ほかにも地域寄席やホール落語で見られるので、必ずしも都内に足を運ぶ必要はありません。
寄席の演目は笑い噺から人情噺、怪談までさまざま。演芸場には独特のゆっくりとした時間と空気が流れています。是非一度足を運んでみてください。
人気サイトの売れ筋ランキングはこちら