M.2 SSD、購入時のポイントを徹底解説 体感速度や発熱、大きさも
一昔前はハードディスクが主流だったパソコンの記録デバイスに、新たな主役が現れています。超高速な読み書き性能をほこるM.2 SSDです。しかし新しい規格だけに注意点も。購入時にチェックすべきポイントとして体感速度や発熱、規格やサイズを徹底解説します。
M.2 SSDとは?
かつて主流だったHDD(ハードディスクドライブ)は、プラッタという高速回転する円盤にデータを書き込むため、読み書きのたびにカリカリと作動音がしたものでした。振動に弱く、うっかりHDDに衝撃を与えてデータが読めなくなる悲劇も。
その後、フラッシュメモリに書き込むSSD(ソリッドステートドライブ)が登場。
読み書き速度が非常に早くなり、作動音もなく、衝撃にも強くなりました。
今、家電店に並ぶパソコンは、SSD搭載のモデルが大半です。
今回解説するM.2 SSDは、このSSDの進化形です。
一般的なSSD(SATA SSD)は箱型なのに対し、M.2 SSDは基盤がむきだし。
見た目からして、かなり違います。
なぜM.2 SSDは速いのでしょうか?
一般的なSSDは、ケーブルを使ってパソコンのマザーボードにつなぎます。SATA接続と呼ばれ、規格の最大伝送速度は600MB/秒。
一方、M.2 SSDは、マザーボードのM.2スロットに直接差し込みます。
PCIe3.0×NVMe接続と呼ばれる方式で、最大4000MB/秒の速度で読み書きが可能な規格です。一般的なSSDの実に約7倍。この圧倒的な速度が、M.2 SSDが注目されている大きな理由です。
実際に筆者の自宅にある「M.2 SSD」「SATA SSD」「HDD」の読み書き速度を、定番ソフトCrystal Disk Markで比較してみました。モデルや環境ごとに速度は違いますので、一例としてご紹介します。
私の環境ではM.2 SSDの読み込みが1875MB/秒、書き込み1675MB/秒でした。
リーズナブルなモデルなので速度が比較的抑えられていますが、それでもSATA SSDの3倍超の読み書き速度です。
HDDと比べると15倍超と、まさにケタ違い。
パソコン動作は快適になるの?
とはいえ実際にパソコンを使っていて、体感できる違いがあるのでしょうか。
できる限り同じ条件下で「M.2 SSD」「SATA SSD」「HDD」を使い、定番ソフトの起動や大容量インストールを試してみました。違いが分かるよう、動画にまとめましたのでご覧ください。
まずは動画制作で定番のAfter Effectsの起動速度です。高機能ソフトなので起動にも結構時間がかかります。
その結果は……。
M.2 SSDのほうが、SATA SSDよりも2割ほど起動時間が短い結果となりました。5回ほどテストを繰り返しましたが、毎回同様の結果でした。
ネット上では「M.2 SSDの超高速性能を生かせる機会は、実用面では少ない」という指摘もありますが、筆者の環境では一定程度の効果が出ているようです。
次に3.79GBある定番ソフト「ファイナルファンタジーXVベンチマーク」をインストールするのにかかる時間を比較してみます。
こちらもM.2 SSDが、SATA SSDよりも2割ほど短時間で終わりました。スペック上の性能差ほどの違いは出ていませんが、やはり一定の高速化が見られます。
最後にそのまま「ファイナルファンタジーXVベンチマーク」を実行してみました。何か差が出るかなと思いましたが、ゲームの快適さはCPUやグラフィック性能が左右するため、スコアに違いは出ませんでした。
どういう人におすすめ?
「M.2 SSD」「SATA SSD」「HDD」には、それぞれ長所と短所があります。
HDDは容量の大きさと安さが大きな魅力です。
SSDだと割高になってしまう容量2TBのモデルでも、HDDなら1万円以下で購入可能。6TBや8TBでも1万円台前半で手に入ります。大容量のゲームをインストールしたいなど、多くのデータを保存する人におすすめです。
ただ、検証したように読み書き性能は低いので、起動ディスク(システムドライブ)にHDDを使うと、パソコンの立ち上げが遅くなってしまいます。起動ディスクは高速なSSDにして、データ保存には大容量のHDDを使うと快適です。
SATA SSDも価格が下がっていて、容量500GBが7000~8000円台で買えます。ただ1TB程度までの商品が大半。多くのデータ保存容量を必要としない人や、ほかに大容量HDDを持っている人に適しています。読み書き性能が高いので、パソコンの動作がぐっと快適になります。
最後にM.2 SSDですが、1万円台前半で買える1TBのモデルも登場。SATA SSDとの価格差が小さくなってきています。
パソコンのマザーボードにM.2スロットが要るのがネックですが、最近は標準搭載しているマザーボードが多くなっています。動画編集などパソコンへの負荷の高い作業が多く少しでも作業を高速化したい人、快適さを追求したい人におすすめです。
容量 | 価格 | 速度 | おすすめ用途 | |
---|---|---|---|---|
M.2 SSD | 〇 | △ | ◎ | 高負荷な作業の速度追求 |
SATA SSD | 〇 | 〇 | 〇 | 速度重視の起動ドライブ |
HDD | ◎ | ◎ | × | 大容量のデータ保存用 |
M.2 SSDの取り付け方
M.2 SSDの取り付け方を解説します。
マザーボードのM.2スロットに端子を差し込んでください。自作パソコンでメモリーを差し込むほどの力は要りませんが、端子を奥までしっかり差し込んでください。筆者の実体験でも、M.2 SSDを取り付けたのにパソコンで認識しないことがあり、確認したら端子が奥まで入っていませんでした。
差し込んだら、M.2 SSDの逆側をネジでマザーボードに固定してください。
ただM.2 SSDの場合、これで終わりではありません。
高速性能をほこるM.2 SSDは発熱が激しく、冷却用のヒートシンクが販売されています。はじめからヒートシンクが付属しているマザーボードもあります。
M.2 SSDが熱くなりすぎると故障を招くほか、サーマルスロットリング(過熱回避)機能が発動して読み書き性能が低下すると言われています。
写真は一例ですが、ヒートシンクは細長い形状で、裏側に放熱素材がついています。マザーボードに取り付けたM.2 SSDの上にかぶせて、両端をねじで固定します。
ヒートシンクなしだと影響は?
ヒートシンクがないと、M.2 SSDの温度はどのくらい上がるのでしょうか。
そして読み書き性能に影響が出るのかを調べてみました。
Crystal Disk Markで読み書き性能のテストを10回繰り返して負荷をかけ、性能や温度変化を見てみます。
まずは温度の変化。
ヒートシンクがないと、テスト3回目には60度まで上昇。その後も同水準の温度が続きました。
一方、ヒートシンクありだとテストを10回繰り返しても、60度まで到達していません。
ヒートシンクの冷却効果は確かに発揮されています。
次に性能の変化を見てみます。
理由を詳しく分析できていませんが、書き込み性能は差が出ない一方、読み取り性能は「ヒートシンクあり」のほうが全体的に高く出ています。
テストを繰り返した筆者の感触としては、ヒートシンクの効果は確かにあり。
つけることをおすすめします。
M.2 SSDを買う際の注意点
ここまで「M.2 SSDは超高速!」と話を進めてきましたが、いくつか種類があり、速さに違いがあるのでご注意ください。
最大4000MB/秒の高速転送が可能なPCIe3.0×NVMe接続ですが、規格の枠内でどこまでの最大速度を実現するかは商品ごとに差があります。
たとえば今回検証に使ったこちらの商品は、読み込み速度が最大2000MB/秒、書き込み速度は最大1700MB/秒です。
よりハイエンドなモデルだと、規格の最大値4000MB/秒に迫るものもあります。
一方でM.2 SSDなのに超高速ではない商品もあります。
それがPCIe3.0×NVMe接続ではなく、SATA3.0で接続するタイプです。SATA3.0は最大600MB/秒までの転送にしか対応していません。例えばこうしたモデルです。
PCIe3.0×NVMe接続か、SATA3.0接続かは商品情報に書かれていますので、購入の際はチェックしてください。
サイズも複数種類
M.2 SSDには、複数のサイズがあり「2242」「2260」「2280」などと呼ばれています。
マザーボードによって対応するサイズに違いがあり、公式サイトのスペック表などに書かれています。
ただ、もっとも一般的な2280には大半のマザーボードが対応していますので、サイズ選びに悩むことは少ないでしょう。
「2280」の「22」部分が幅を表し、「80」の部分が長さを表します。
2280なら幅22mm、長さ80mmの大きさです。
おすすめの商品は?
M.2 SSDの特徴や扱い方をご紹介してきました。従来のSSDやHDDとは異なる、独特な部分もありましたね。
最後に価格や性能から、おすすめのM.2 SSDをご紹介します。
信頼のWestern Digitalが発売した新モデルで、容量は250GB、500GB、1TBの3種類があります。Amazonでは在庫切れも発生している人気商品です。
読み込み性能は最大2400MB/秒、書き込みは最大1950MB/秒(1TBモデルの場合)。製品保証も安心の5年間あり、信頼性の面でもおすすめです。
1万円台前半の価格ながら容量1TB。読込速度2100MB/秒、書込速度1600MB/秒と必要十分な性能が。人気商品となっています。
M.2 SSDはほかにも各社から、さまざまなモデルが発売されています。ぜひ比較検討してみてください。
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