【日本酒の作り方】基本の流れから生酒、古酒の製造法までチェック!
冷酒から冷や、熱燗まで様々な飲み方ができる日本酒。古くから日本で愛されてきたうえに、昨今ではまた日本酒ブームが巻き起こるなど日本人にとって身近なお酒です。
しかし、そんな日本酒の作り方を知っている方は少ないのではないでしょうか?なんとなくは知っていても細かい所や工程はわからない、なんて方がほとんどでしょう。
そこで今回は、日本酒の作り方について少し詳しくスポットを当てていきましょう。基本の日本酒から生酒、古酒やスパークリングにも触れていきます!
▲日本酒好きになって15年、好きが高じて全国の酒蔵訪問旅行を趣味にしているフリーライター。美味しい、珍しい日本酒の紹介・楽しい飲み方を提案していければと思います。
日本酒はどう作られている?
最初に作り方の工程ではなく、材料や日本酒独特の発酵方法について見ていきましょう。材料の違いによって変わる、味わいの傾向をつかむことができますよ。
まずは材料・お米の種類について確認
よく知られているように、日本酒の原料は「米とお水、米麹」が基本になります。これに特定名称の違いによって「醸造アルコール」の添加の有無があります。
基本的に長期熟成を必要としない。また蒸留もしないお酒なので、原料の味わいがダイレクトに伝わる点が大きな特徴といえるでしょう。そこで、原料の味わいが異なる要因となる、酒造好適米の違いも確認しておきましょう。
上記が代表的な酒米といえます。他にも様々な酒造好適米があるので、普段飲んでいる日本酒に使われている酒米にも注目してみましょう。
日本酒の作り方は並行複発酵
発酵の方法についてもいくつか種類があります。日本酒は「並行発酵」と呼ばれる、米のでんぷん質を糖分に変える発酵と、この作られた糖分をアルコール化する発酵が同時に行われます。
「同時」の意味が分かりにくい場合は、同じ樽の中で発酵が行われていると考えればわかりやすいでしょうか。ちなみにワインは原料となるブドウの中にすでに糖分が含まれていることから「単発酵」。ビールは糖化とアルコール化を分けて行われることから「単行複発酵」と呼ばれます。
それぞれこの段階ではあまり味わいに違いは出ませんが、手間のかかり方が違っていることが分かりますね。
お酒造りの流れとは
ではいよいよお酒造りの流れを見ていきましょう。細かな点よりも全体的な流れを軽く紹介していきます。
・精米
まずは酒造好適米の玄米を精米するところから酒造りは始まります。また最初にどこまで精米するかによって、出来上がった日本酒の味わいの傾向が決まってくるので非常に大切な工程になります。
・洗米後に浸漬
磨いた酒米をきれいにしていきます。食卓に上がるご飯を炊く前と同じ工程ですね。米を洗った後、一定時間水につけて酒米に水分を浸透させます。
・蒸米
続いては大きな蒸篭や蒸すための機械に入れて酒米を蒸していきます。この蒸す工程によって酒米内のでんぷん質を変容させます。蒸し終わった酒米は後の工程である麹造り、酒母造り、もろみづくり用にそれぞれの適した温度まで冷ましていきます。
・麹造り
蒸した酒米を日本酒の大本となる麹に変化させる工程。米に麹菌を付着させ麹菌を増やしていきます。ここで使われる麹菌の種類によっても、蔵元の個性が出てくる工程ともいえるでしょう。後の酒造りの成功を左右する大切な工程でもあります。
・酒母造り
アルコール発酵を促す酵母を大量に作り出す工程です。上記で作られた麹と水、酵母と乳酸菌、そして蒸米を加えて2週間から1か月ほどで出来上がります。ちなみに酒母のことを酛(もと)とも呼び、酒母造りをすべて手作業で行ったものが「生酛造り」と呼ばれます。
・もろみ造り
酒母・蒸米・麹米・仕込み水をタンク内で混ぜあわせ、発酵させることでもろみを作ります。このもろみ造りの工程が日本酒の仕込み工程になりますね。酒母や蒸米は3回に分けてタンク内に投入されることが一般的であり、この作り方を「3段仕込み」と呼びます。
・上槽(または搾り)
発酵期間を終えた後、もろみを搾って酒と酒粕に分ける工程。どのタイミングで発酵を終わらせるのか?という、こちらも日本酒の味わいを決めるために、非常に慎重な判断を必要とする工程になります。
・濾過後に火入れ
上槽の後に残ったもろみ成分を漉すための濾過の工程が入ります。そのあとは殺菌や日本酒の持ちをよくするための火入れを行うことに。火入れといっても低温殺菌方法なので、日本酒の風味を上手く残すことができますよ。
・貯蔵による熟成と加水
火入れの後は日本酒の味を落ち着かせるために、半年~1年ほど貯蔵タンクで熟成されます。搾ったばかりの日本酒もフレッシュでおいしいですが、貯蔵することで角の取れた優しい味わいに。
また、熟成を終えた日本酒はそのままでは味わいが濃く、アルコール濃度が高いことから水を加えて味わいを調整されます。この工程を「加水」、または「割水」と呼ぶことも。水を加える工程は水増しなどではないので、この点を誤解しないように気を付けてくださいね。
・2度目の火入れ後に瓶詰
最後にもう一度火入れを行い、日本酒を安定させてから瓶詰をされて出荷になります。日本酒を作る工程、中々見ることもありませんが大変そうなことがよくわかりますね。
造工程を足す、減らして味わいに変化が
上記まで基本的な日本酒の作り方に関して紹介してきました。しかし日本酒には他にも様々な種類があります。ここからは、それら他の種類の日本酒はどう作られているのか見ていきましょう。
火入れを行わない「生酒」
日本酒を作る工程で唯一、複数回行われる「火入れ」。この火入れをしていない日本酒のことを生酒と呼びます。加熱をしていないから「生」というわけですね。
お米や麹の味わいをダイレクトに感じられる、フレッシュでフルーティな味わいが特徴。火入れ=加熱処理をされていないお酒なので保存には注意しておきましょう。
絞りによって異なる「にごり酒」
上槽、搾りの工程でもろみの漉し加減で変わるのがにごり酒です。しっかりともろみを残しているものが「にごり酒」、うっすらと白濁したくらいに残したものを「薄にごり」と呼びます。
まろやかな甘さが特徴。また、もろみが残っているので瓶詰の後も発酵が進むことから、甘酸っぱいものやびっくりするくらいすっぱいものなど、味わいの種類が多いことも特徴です。
時間をかけて作られる「古酒」
火入れの後に貯蔵タンクで半年から1年ほど熟成される日本酒。しかし、1年で熟成を終えずにそのまま低温熟成を進める「古酒」もあります。熟成させた年月によって味わい、香り、酒色を変える面白い日本酒だといえるでしょう。
熟成期間によって異なる味わいを楽しんでみてくださいね。ちなみに時間をかけるほど甘味が強く、独特な香味が出てきます。
炭酸ガスを別途注入「スパークリング」
上記でもろみが残っているにごり酒は、まだ発酵していると紹介しました。この発酵によって炭酸が生まれることはよく知られていますよね。しかし昨今では、透明な日本酒でもシュワシュワとした炭酸が楽しめるものもあります。
これは日本酒が完成した後、瓶詰の前の工程で炭酸ガスを別途注入されているものもあるんですよ。一言でスパークリング日本酒といっても、さまざまな作り方があるという点も面白いお酒だと感じますね。
自家製の日本酒って作れるの?
ここまでで誰もが一度は思ってしまうのが、材料が身近な分だけに自家製の日本酒も作れるのでは?といった疑問ではないでしょうか。実際のところ自家製の日本酒は作れるのか?この点について最後に見ていきましょう。
自家製日本酒は酒税法で禁止されている
お酒好きからすれば、ついつい思い描いてしまいがちな自家製日本酒ですが、残念なことに国内では個人でお酒を造ることは酒税法で禁じられています。
というよりも、お酒を造るにはそのお酒にかかわる免許が必要になっています。この免許を取るための条件には、個人ではどうしようもないような条件もある点がネックだといえます。
年間6万リットルの清酒を作る…なんてどれだけ飲めばいいんだって気持ちになりますよね。残念な気持ちはよくわかりますが、国内での自家製日本酒はあきらめたほうがよいでしょう。
ここでミソなのが、国外だったらよいのか?といった点。実は実際に海外向け商品として日本酒の酒造キットなるものが販売されているんです!もちろん正規に購入したとしても、国内での製造は無理ですが国外なら製造可能に!
日本酒を作ってみたい上に、国外に家、部屋を持っている!なんて方は(少ないと思いますが)試してみてはいかがでしょうか。
自作したいなら日本酒で梅酒を漬けてみよう
それでもどうしても日本酒を作ってみたい!というのなら、すでに出来上がっている日本酒で梅酒を漬けてみてはいかがでしょうか?
個人でのお酒造りは国内では禁じられていますが、果実酒においてはその限りではありません。そして日本酒そのものではないとしても、日本酒の風味を生かした梅酒も美味しいものです。作り方は基本の梅酒とほとんど一緒なので、梅酒を漬けたことがある方なら案外簡単に漬けることができるでしょう。
ただ、一般的なホワイトリカーと日本酒では気を付けるべきポイントが異なってきます。以下のポイントを守って日本酒で梅酒を漬けてみましょう。
まとめ
断片的にしか知られていない日本酒の作り方に関してみてきました。様々な工程がありましたが、この工程は知っている!なんて場所も多かったのではないでしょうか。
丁寧に作られてきたお酒だからこそ、日本酒はあんなにも優しい味わいをしているのかもしれませんね。自宅で作ることは難しいですが、蔵元によっては蔵や工場内の見学ツアーをしているところもあります。
興味がある方は、一度ツアーに参加してみるのもおすすめですよ。現場の空気や杜氏さんがしてくれる説明、見学後のお土産選びなど楽しいことがいっぱいです!
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