イヤホンのエージングの方法は? やり方や効果について

竹澤承太郎
公開: 2018-11-05

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イヤホンのエージングとは

イヤホンのエージングとは、スピーカーで行うことと同様にイヤホンに内蔵された振動板を馴染ませる作業のことをいいます。イヤホンは新品の状態で出荷された時には、カタログ値の性能を全体として出せるように設計されています。しかし、個別の1Hz単位で全ての音を再生するテストを行ってから出荷しているわけではなく、実際に振動板から音を出してみることでエッジとのバランス調整を行う必要があるわけです。

人の聴力は、可聴域だけでなく本来は聴き取れない超高音域まで存在するので、倍音の影響を音楽鑑賞時に聴き取っていると言われています。ハイレゾ音源による音楽が高評価を得ていることからも分かるように、明確に聴き取れる音だけではなく音楽再生時に心地よいと感じられるためには細かいバランス調整が必要です。

イヤホンの振動板とエッジはスピーカーと比較して小さいので、エージングとはいえスピーカーほどの長時間かけた調整は必要ありません。エージング期間も1週間~2週間程度で十分に成果が出やすい点もイヤホンのエージングは敷居が低いと考えられる要因です。

イヤホンのエージングとは、実際に全ての再生周波数を1Hz単位で鳴らしてみることにより、全体のバランス調整を行うことになります。エージング専用CDや全周波数帯を再生するピンクノイズを用いたイヤホンのエージングは、耳に直接装着して使うからこそ細かい音までこだわりたい人にとって重要な慣らし運転となるわけです。

イヤホンのエージングの効果

イヤホンのエージングによる効果は、高音域での音割れが起きにくくなるというメリットが得られることです。イヤホンには小さな振動板が内蔵されていて、音源から出力された音声信号を振動板により振動させることで実際に音を出します。

メーカー出荷状態では、カタログ値に相当するスペックにより再生周波数帯域の音を全て出せることになっています。しかし、1Hz単位での音調整を行っていないために、実際に振動板から音を出してみると最初は堅い印象を与える音質になりがちです。

周波数モニターには表れない人間の耳にとって聴きやすい音に変わる効果を得るためにエージングを行うので、購入間もない時期のイヤホンに対して実際に振動板を動かしてエージングをかけます。

イヤホンに対してエージングを行った効果で、同じ曲を再生しても音がマイルドで、こなれた印象となり、ハーモニーが美しく感じられます。高音域で起きがちな音割れがなくなり、低音域を多少ブーストアップさせるようイコライザーを調整しても、中高音域に影響を与えずに美しい音を再生できる効果が期待できます。

ロック調の曲ならば低音域のブースト感が出て、クラシックオーケストラならばバイオリンやフルートといった高音楽器の音色に違いを見いだせます。スピーカー再生した時とイヤホン再生した時の差が縮まる効果が得られると考えれば、普段聴いている音楽をいつも通りに再生出来る環境が整うわけです。イヤホンの振動板から出る音のバランスを良くするといった効果をエージングでは期待出来ます。

イヤホンのエージングのやり方・方法

イヤホンのエージングを行う方法は、エージング用音源を用意して必要な時間を計算し、音量を決めて音を流し続けるやり方です。エージングを行う際には、何を目的としているかによりやり方が変わるので、普段聴いている曲を聴きやすくしたいなら、普段聞いている曲を一定音量で流し続ける方法も有効です。

なぜなら、メーカー出荷状態のイヤホンは、カタログ値にあるスペック通りの再生周波数帯域と最大音圧を出せるように設計されていますが、必ずしも全ての周波数帯の再生をバランス良く行えることを試したわけではありません。実際に使いながら細かい音のニュアンスを出せるようになるわけです。

イヤホンのエージングを効果的に行うやり方として、ピンクノイズを使った方法があります。1Hz単位の基礎周波数別に収録されたピンクノイズを使えば、低音域ほど音圧レベルを高く、高音域ほど音圧レベルを低く再生出来る環境にすることで、高音域における音割れを防げるわけです。

イヤホンで音を出す時には、必ずしも全周波数帯を鳴らすことは少ないために、特定の音域のみに音が集中しがちです。振動板をある程度、長時間実際に振動させて目当ての周波数に対する音を実際に鳴らすことにより、エージング効果が得られます。エージングを行う際は、普段聴いている音量と同程度、またはやや大きめの音量で、出力レベルが高くなりすぎないように注意しながら、一定音量で流し続ける方法が有効です。

イヤホンのエージングをする時間

イヤホンのエージングは、スピーカーとは異なり1ヶ月以上かけて行うものではありません。1週間~2週間程度の時間があれば十分にイヤホンのエージングは完了すると考えられています。全周波数帯に対してエージングを行えるピンクノイズを使用すれば、10時間〜30時間程度のエージングで十分です。

イヤホン内にある振動板の動きが滑らかになり、1Hz単位の全ての周波数に対して細かく反応出来るようになれば良いので、振動板の口径が小さいイヤホンならば長時間のエージングを行わなくても成果が表れやすくなります。問題となるのは、振動板を適切に全周波数に対して振動を発生させることが出来るかどうかという点です。

イヤホンのカタログスペックを確認すると、エージングに必要な時間についてはインピーダンスの数値が影響します。インピーダンスが小さな20Ω~30Ω程度ならば、ピンクノイズを使用することにより10時間程度のエージングでも効果が出やすくなるでしょう。

しかし、80Ω~130Ωといった高インピーダンスのイヤホンに対しては、エージング時間を長くしなければなりません。なぜなら、高インピーダンスのイヤホンほど音量を上げなければ振動板が動く量が少なく、イヤホン用アンプを必要とするからです。アンプを挟んでのエージングは、特定周波数だけ特に強く増幅されると振動板破損リスクがあるために音量をあまり上げられません。やや小さめの音量で長時間のエージングが必要となるため、数十時間以上行う必要があるわけです。

イヤホンのエージングに使えるアプリ

イヤホンのエージングを行うためには、音源に接続してある程度長時間再生を行う必要があります。イヤホンは普段から持ち歩いて使用するケースが多いほど身近な存在ですから、同時に断線や故障により交換頻度が高くなることも確かです。

何度もイヤホンのエージングを行うことが面倒な人にとっては、エージング専用アプリの存在は便利に感じられます。なぜなら、エージング専用アプリでは、ピンクノイズを再生する際にビットレート・再生時間・ビット深度を細かく指定した上で連続再生を行うことが出来るからです。

一度エージング専用アプリをセットして放置するだけで、イヤホンのエージングが完了してしまう利便性の高さがあります。

イヤホン用のエージングアプリでは、エージング目的に合わせて設定メニューから微調整が可能です。再生音量だけでなく、再生する音源の種類選択からバランス調整までを行えるので、ピンクノイズ・ホワイトノイズ・エージング専用音声といった複数のサンプリング音声から自由に設定出来ます。エッジとエンクロージャーに加えて振動板自体を馴染ませることにより、必要なエージングを必要な量だけかけられるわけです。

ジャズやクラシックなどの高音域を際立たせるために行うエージングならばピンクノイズを使用し、全周波数帯を一斉に鳴らすようなエージングならばホワイトノイズを使用するといった使い分けをすると良いです。エージング目的に合わせた音源調整を別々に用意する必要がなく、エージングアプリなら自由自在に行えます。

イヤホンのエージングに使える音源

イヤホンのエージングを行う際の音源は、普段聴いている音楽・エージング専用CD・ピンクノイズデータといった様々なタイプがあります。エージングの目的が必ずしも同じではなく、普段使用するイヤホンで聴く音楽により異なるからです。

普段聴いている音楽をより違和感なく心地良いものにするためなら、イヤホンを買い替えたタイミングで普段聴いている音楽でエージングすればいいわけです。一方、エージング専用CDやピンクノイズデータを音源として使うと、普段聞いている音楽だけでなくイヤホン内部の振動板自体の動きに対して効果的だとされています。工場出荷状態では実際に音を鳴らした時間数が少ないために、必ずしも全ての周波数に対してバランスがとれているとは限らないからです。

エージング専用CDは、日常的な音楽聴取では再生回数が少ない周波数帯の音まで均一に振動板から発することが出来るので、準備運動を行うようなものです。ピンクノイズデータを使用したエージングでは、オクターブ単位で高音域ほど音圧レベルを下げるように作られているので、振動板が高音域で音割れしないようにするための音源として使用出来ます。

一般的な音楽鑑賞では、重低音を効かせた音楽が多くなっているので、高音域の微妙な表現を再生する機会は少なくなりがちです。イヤホンのエージングに適した専用音源を利用することは、全周波数帯に対して1Hz単位の細かい音を出す準備をする目的があります。

イヤホンをエージングする時の音量は?

イヤホンのエージングを行う際には、適切な音量で行う必要がありますが、なぜエージングを行うのか当初の目的を考えれば必要な音量が分かります。人により音漏れするほどに大音量で聴いている人は参考になりませんが、複数の人が普段聴いている音量と同じか少し大きめの音量が望ましいです。

なぜなら、イヤホンのエージングでは高音域の音割れをなくすことが第一目標となるので、普段聴いている音量でイヤホンの再生環境が良くなる必要があるからです。自分1人だけで音量を決めにくい場合には、普段音楽をイヤホンで聴いている人と普段は滅多に聴かない人に試してもらい、平均値を取ると良いでしょう。実際にイヤホンのエージングを行う際の基準音量となります。

イヤホンのエージングを行う際に使用するピンクノイズは、低音域が高エネルギーであって高音域になるほどエネルギー量を下げてあります。イヤホン内の口径が小さな振動板の動きを慣らすために行うエージングですから、元々反応が過剰に出やすく音割れの原因となる高音域部分を調整する役割です。

普段聴いている音楽によりイヤホンのエージングを行う場合には、音量を少し大きめに行う必要があります。全単位周波数1Hz単位のエージングを行うためには不十分となりやすいので、ピンクノイズを使った方法が適しているわけです。

大音量によるエージングは、残念ながらイヤホン内のコイルに余計な負荷と熱を帯びさせてしまい、劣化を早める原因となりかねません。普段の音量がエージングに適しているわけです。

イヤホンのエージングに使うピンクノイズとは?

イヤホンのエージングで使われるピンクノイズとは、単位周波数あたりのエネルギー量が一定のホワイトノイズに対して-3dB/oct の低域通過フィルタを通して用意したものです。横軸を周波数・縦軸をエネルギー量としてグラフ化すると、ピンクノイズは右下がりのグラフで表されます。イヤホンのエージングに使われるピンクノイズは、低音域は高エネルギーでありながら、高音域になるに従いエネルギー量を下げたノイズとなるわけです。

なぜなら、イヤホンのエージングで必要なことは内部の振動板を慣らし運転させることであって、低音域から高音域までを一定の音量で再生してしまうと、高音域部分の音により振動板が破損しかねないからです。

また、イヤホンを使い始めた時点では、全周波数帯域に対してイヤホン内の振動板が同じ動きをしてくれるとは限りません。スピーカーとは異なり振動板の直径が小さいため、鳴らせることが出来ることと実際に細かく鳴らし分け出来ることは別物だからです。

高音域のみ音割れが発生する状況に対して、ピンクノイズを使ったエージングを行えば、低音域と高音域のバランスが取れるために音割れしたら困る高音域の音を出しやすくすることが出来ます。

イヤホン内で意図しない微小なバランスを調整する役割を持つことは、ピンクノイズが高音域にかけて右下がりのグラフで表される特性が効果的だと分かります。ピンクノイズをオクターブバンドパスフィルターにかけると、全てのオクターブにおいてフラットな特性になることが知られています。


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